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ニュースを読む : 【ニュースを読む】~「高年齢者の雇用・就業の実態に関する調査」を読む③~
投稿日時: 09月09日 (1321 ヒット)

 【ニュースを読む】
~ 「高年齢者の雇用・就業の実態に関する調査」 を読む ③~

独立行政法人 労働政策研究・研修機構は、7月5日「高年齢者の雇用・就業の実態に関する調査」を発表した。高齢者の就業や生活の実態、就業や生活に関する意識を調査するもので、55歳~69歳の男女5000人にアンケートを実施。有効回収率72%。

資料 高年齢者の雇用・就業の実態の関する調査
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【解説・論点】
 前回、前々回で述べてきた「高齢期になってもできるだけ働きたい高齢者が増える」「社会として労働力確保の必要性」という二つの課題を考え合わせると、効率的・効果的に高齢者の労働力を活用するという視点が不可欠になってきます。

 介護スタッフ不足は、訪問介護事業者の場合、「利用希望者がいても、ホームヘルパーがいないので対応できない」「事業を拡大できない」という問題で収まりますが、介護付有料老人ホームの場合、スタッフが不足すると定員を満たせなくなります。訪問サービスと違い、入居者の有無に関わらず建物設備の借入金返済などの固定費は必要ですから、入居者受け入れができないと、支出だけが増え倒産の危機となります。  介護サービス事業は、労務集約的な事業ですが、特に施設サービス、住宅サービスにおいては、介護スタッフの確保は、経営の生命線だといっても過言ではないのです。

 私は、介護付有料老人ホームや特養ホームでは、これら高齢労働者の活用が不可欠だと考えています。
 高齢者住宅事業の中で、高齢者の働き方として検討すべき論点は2つあります。 

 一つは、介護補助・介護スタッフの支援です。
 介護サービスには専門知識・技術だけでなく、排泄介助や入浴介助には、一定の体力が必要ですから、高齢者の仕事としてはそぐわないという意見もあります。確かに、訪問介護サービスの場合は、排泄介助・入浴介助などの直接介助が中心となりますから、ホームヘルパー・介護福祉士などの資格・専門知識が必要となりますし、一定の体力も必要となります。
 しかし、介護付有料老人ホームや特養ホームなどで必要な業務は、これらの直接介助だけではありません。直接介護するだけでなく、食事の準備や洗濯物の整理、入浴準備など、様々な仕事があります。直接入居者に触れるわけではありませんから、事故が発生する可能性は高くありませんし、指導する人がいればこれらの仕事に特別な技能や資格は必要ありません。
 更に、高齢者住宅事業では、24時間必要なサービス量が変化するという特殊な事業です。3時間、4時間というパートスタッフを効率的に活用することによって、入居者だけでなく、直接介助を行う介護スタッフも、スムーズに業務を行うことが可能となります。特養ホームや介護付有料老人ホームでは見守り介助も重要ですから、「はなし相手になってもらう」「何かあればすぐに呼んでもらう」というだけでも、全体の介護システムの安全性・効率性は格段に向上します。
 
 二つ目は、有償ボランティアです。
 述べたように「高齢者も働かなければならない」と言っても、一定の金融資産を持つ人は少なくありませんし、また65歳からは年金を受け取ることができます。高齢者の働き方は、若年層のような「生活資金確保の主となる仕事」ではなく、1ヶ月数万円程度でも「生活資金・年金の足しになる仕事」という側面が強くなります。

 

経済上の理由

健康上の理由

生きがい

頼まれた

時間に余裕

その他

60歳~64歳

72.3%

13.3%

21.9%

9.4%

12.7%

5.1%

65歳~69歳

56.1%

19.7%

25.0%

18.1%

18.1%

5.2%


 そのため、法的に定められた雇用関係(パート契約)を結んで、最低賃金以上の給与を支払うというのではなく、ボランティア時間をポイントで換算し、地域通貨(地域マネー)で支払うという方法も考えられます。また、老人ホームで出される、栄養価が計算された食事を提供すれば、一人暮らしで食事の準備が大変な高齢者にとっては助かります。
 地域通貨は、一つの事業所だけでできることではありませんが、介護スタッフ確保は、各事業者の課題だけでなく、その市町村全体の課題です。全体でこのような仕組みを構築し、地域の商店街などで使ってもらえれば、そのメリット・経済効果は広がります。
 これは「高齢者の労働力を活用する」という面だけでなく、働く高齢者の「生きがい」となりますし、地域社会とのつながり続けるということは、介護予防にも繋がります。このような予備軍をふやすことによって、地域の介護福祉ネットワークも広がっていきます。

 このスタッフ不足というリスク、人件費の高騰リスクだけは、すべての事業者で回避できない問題です。この「地域の高齢者の労働力」をどのように活かすのかは、これからの高齢者住宅事業の一つの鍵となります。
 同時に、私たちは未曾有の高齢社会の中で、「高齢者の働き方」はどうあるべきか、社会全体としてどのような仕組みを構築するべきかを、社会全体で真剣に考える時期にきているのです。


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