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ニュースを読む : 【ニュースを読む】~「介護療養病床 2012年度移行も存続」を読む~
投稿日時: 09月13日 (2955 ヒット)

 【ニュースを読む】
~ 「介護療養病床 2012年度移行も存続」 を読む ~

 長妻厚生労働相は、10月8日の衆議院厚労委員会で、2011年度に廃止されることが決まっている介護療養病床について、廃止を凍結する方針を示した。廃止期限の延期を含め、改めて判断する方針。  来年の通常国会において関連法案を提出する予定。

【解説・論点】
 介護保険制度の発足によって、医療依存度が高く、かつ介護ニーズの高い高齢者のために設置されたのが介護療養病床です。しかし、医療保険が適用される医療療養病床との違いが明確でないこと、またその想定とは違い、医療依存度の高くない高齢者が長期入院し、社会的入院の温床となっていると言う指摘が、当初からなされていました。そのため、2006年の医療制度改革で、介護保険適用の療養病床(当時は13万床)は、2011年までの5年をかけ廃止することが決められ、老人保健施設等への移行を進めてきたのです。

 しかし、今回、厚生労働大臣は、現在でも8万床以上の介護療養病床が残っているということを原因に、この方針を撤回し、療養病床の存続を決めたというものです。
 長妻大臣は、『行政の意図とは異なり、転換先が未定のところが6割あるため、入所者が混乱する』という趣旨の発言をしていますが、5年の猶予期間を設けて粛々と進められてきた削減計画の流れを止めたのは、民主党です。昨年の衆議院選挙のマニフェストの中で、『当面、療養病床削減計画を凍結、必要な病床数を確保する』とし、見直しを進めるとしたために、各医療機関が検討・進めていた削減計画の風向きが一気に変わったのです。

 この構図は、沖縄の基地問題と全く同じです。  これまで、粛々と長い時間をかけて議論され進んできたものが、将来像や高齢者医療、介護施設のあり方が、全く議論されない中で、表面的な『バラマキ施策』『人気取り施策』によって、転換されたということです。そして、『抜本的に考え直す』としたものの、民主党独自の介護療養病床の方向性について検討が進まないままに、『時間切れ』となって、そのままになってしまったというのが現実です。

 述べたように、この介護療養病床の削減が叫ばれた原因は、高い介護報酬が設定されているにもかかわらず、当初想定された医療依存度の高い高齢者が少なく、介護報酬の非効率な運営、つまり無駄遣いになっていると指摘されたからです。

 厚労省が9/8に発表した『医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査』によると、その状況はさらに悪くなっています。療養病床では、どの程度医師や看護師の医療ケアが必要になるのかを3つの『医療区分』に分けていますが、この資料を見ると、本来、入院治療を必要としない『医療区分1』の高齢者が、全体の72.6%を占めていることが報告されています。2005年、2006年と50%台だったことを考えると、ますます、社会的入院の温床となり、介護報酬の非効率に運営となっているかがわかります。

介護療養病床の入所者医療区分

 

医療区分1

医療区分2

医療区分3

2005年

57.9%

35.8%

6.2%

2006年

55.8%

37.5%

6.7%

2010年

72.6%

19.9%

7.5%


 この介護療養病床の削減は、医療と介護の役割の分化、介護施設の役割の明確化、介護報酬の効率的運用のために検討されたものです。転換後の『介護療養型老人保健施設』と現在の『介護療養病床』と比較すると、その介護報酬の差は要介護3で『130単位』、要介護4で『155単位』、要介護5で『170単位』の差となります。130単位、現在8万床としても、介護報酬の支出差は年間380億円となります。このような整合性・長期的視点のない政策が続く中で、非効率で高額な介護報酬が使われ続けることになるのです。

 更に問題は、厚労省の方針に従って、これまでの5年の間に計画的に介護療養病床を削減・転換してきた医療法人は、どうするのかということです。老人保健施設に転換すれば収入も大きく削減されますし、将来的な制度を見込んで建て替え、改築を行ったところもあります。彼らから見れば、厚労省の方針に反して、医療の必要ない高齢者を入院させ、介護療養病床として残っていた方が、良かったということになります。  

 これは、『正直者がバカをみる』施策転換だと言っても過言ではありません。  今後、この療養病床だけでなく、介護施設、ひいては高齢者医療・介護制度の抜本的な転換・改正が必要になると考えていますが、このような場当たり的な転換ばかりでは、医療や介護制度の整理などできるはずがありません。
   この介護療養病床は、現状の入院患者を見るとその重要性は低く、将来的に確実になくなるものです。今から、また、検討するとして、猶予期間と数百億の無駄なお金をかけて削減するというようなことにするのでしょうか。
 
 あまりにも、近視眼的で、戦略のかけらもない、その場限りの転換だと言わざるを得ません。


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