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ニュースを読む : 【ニュースを読む】~「特養ホームは個室か相部屋かの論点②」を読む~
投稿日時: 09月27日 (1158 ヒット)

 【ニュースを読む】
~ 「特養ホームは個室か相部屋か の論点②」 を読む ~

 現在、特養ホームの居室は、厚労省の指導に従ってユニット型個室が推進されてきたが、一部の地方自治体からは、従来の相部屋も認めるべきだとの提言がなされ、議論が活発化している。
 『個室か相部屋か』の議論の中で検討すべき論点はどこにあるのか、今年の3月に独立行政法人福祉医療機構が行った『ユニット型特別養護老人ホームの実態調査について』を元に、数回に渡って現在の特養ホームの制度の課題とあり方について考える。

資料 ユニット型特別養護老人ホームの実態調査について PDF
※ リンク先のニュースは、時間の経過等によって削除されることがあります。


【解説・論点】
 前回の【ニュースを読む】で、全体的に厚労省が示した基準よりもホテルコストが高くなっているという課題を述べましたが、この問題は入所者選定と直接的に関わってきます。
 他の福祉施設は、各市町村の福祉事務所・児童相談所などを経由して入所が決められるのに対し、特別養護老人ホームでは、各特別養護老人ホームと入所者・家族との直接契約によって入所することになっています。つまり、次に誰を入所させるのかは、各特養ホームが自由に決めてよいのです。
 特別養護老人ホームは福祉施設ですから、低所得者に対する負担限度額が行政によって決められています。それを一覧にしたものが下記の表です。

低所得者に対する負担限度額

  基準費用額 第一段階 第二段階 第三段階
居住費(ユニット型個室) 1970円 820円 820円 1640円
居住費(相部屋) 320円 0 320円 320円
食 費 1380円 300円 390円 650円

第一段階…生活保護受給者、老人福祉年金受給者で世帯全員が市民税非課税
第二段階…世帯全員が市民税非課税で、
        かつ、本人の課税年金収入+合計所得金額が80万円以下
第三段階…世帯全員が市民税非課税で、かつ、第二段階に該当

 例えば、ホテルコストが1970円の特養ホームが、上記表の第三段階の高齢者(非課税世帯)を入所させた場合、本人負担は1640円ですから、基準費用額との差額330円(1970円-1640円)は介護保険が支出されます。減額のない非課税世帯でない高齢者(これを第四段階と言います)と比較すると、第三段階の高齢者はホテルコストと食費を合わせて、約3万円程度、利用費が安くなります。  

 ここからが問題です。  例えば、厚労省が指定した基準額以上の一日2500円のホテルコストを設定している特別養護老人ホームが、上記表の第三段階の高齢者(非課税世帯)を入所させた場合、本人負担の上限額は制度で決められていますから、同じく1640円です。基準費用額との差額330円(1970円-1640円)は介護保険が支出されます。しかし、基準額を超えた部分円530円(2500円-1970円)は、適用できませんから施設の負担となります。
 一人一日530円ですから、これが50人で1年間になると1000万円近くの収入減となります。更に、前回述べた、ホテルコスト4500円の特養ホームだと、その差は一人一日2530円、50人で年間4600万円を超えるのです。
 
 特養ホーム、社会福祉施設は営利事業ではありませんから、この高額なホテルコストの算定は利益を挙げるためではなく、建設費から算定して、この金額でないと運営が成り立たないということが前提です。
逆に2500円、4500円にしなくても経営が成り立つというのであれば、その金額設定自体に問題があることになります。  そう考えると、基準額以上のホテルコストを設定している特別養護老人ホームは、第二段階、第三段階の低所得の高齢者は、運営上入所させられないということになるのです。
 
 実態調査の資料を見ると、特養ホームの中には、86%が第四段階以上、ショートステイでは100%という施設があることがわかります。

 

ユニット型特養ホーム

ショートステイ

第四段階以上の割合

24.8%

49.0%

(中 央 値)

24.0%

54.8%

(最 大 値)

86.0%

100.0%

(最 小 値)

1.0%

1.0%


 一定のお金を持っている人だけを選んで入所させている特養ホーム・ショートステイがあり、それは高額の補助金・高額の社会保障費を使って運営されており、運営する社会福祉法人は非課税です。特出した一部の施設・法人の問題なのかもしれませんが、この特養ホームは事前に行政の認可を受け、行政の指導を受けて開設・運営されているということも事実です。
 厚生労働省は、基本的にはユニット型個室を堅持し、居室面積の最低基準を13.2㎡から10.65㎡に引き下げる方針を発表していますが、そもそもこの基準は最低基準ですから『その最低基準に沿って作らなければならない』ということではなく、『それ以上の居室面積にしなさい』ということです。どのような建物を作って、どのような価格設定にするのかは、事業者が決めるのですから、同じことです。実際に考えるとこの『10.65㎡』は、かなり狭く圧迫感を感じますから、実際にはこの基準で作られることはないでしょう。結局、全く意味がないのです。
 『コンクリートから人へ』『社会保障の充実』が叫ばれていますが、この現状を見ると、ユニット型個室の特養ホームの制度・運営には、あまりにも無駄や抜け道が多く、問題があると言わざるを得ません。


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