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ニュースを読む : 【ニュースを読む】~「特養ホームは個室か相部屋かの論点③」を読む~
投稿日時: 10月01日 (1820 ヒット)

 【ニュースを読む】
~ 「特養ホームは個室か相部屋か の論点②」 を読む ~

 現在、特養ホームの居室は、厚労省の指導に従ってユニット型個室が推進されてきたが、一部の地方自治体からは、従来の相部屋も認めるべきだとの提言がなされ、議論が活発化している。
 『個室か相部屋か』の議論の中で検討すべき論点はどこにあるのか、今年の3月に独立行政法人福祉医療機構が行った『ユニット型特別養護老人ホームの実態調査について』を元に、数回に渡って現在の特養ホームの制度の課題とあり方について考える。

資料 ユニット型特別養護老人ホームの実態調査について PDF
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【解説・論点】
 もうひとつの論点は、ユニット型個室特養ホームの増加が社会保障費全体に与える影響です。
 福祉施設である特養ホームには、税金から数億円の建設補助が行われ、高い介護報酬が設定されています。加えて、特別な低所得者対策、法人非課税、低利融資など、その入所者には二重三重の手厚い保護がなされています。特に、ユニット型個室特養ホームは、運営に非常にお金がかかることが知られています。

 その原因の一つは介護システムの効率性にあります。
 本来、社会福祉・社会的弱者対応というものは、合理性や効率性という言葉は似合いません。介護虐待な介護拒否の問題など、そもそも答えどこかにあるのかわからないケースもたくさんあり、それはAさんとBさんで違います。どれだけ担当者が努力してもどうにもならないこともたくさんあります。

 ただ、特養ホームの介護サービス・介護システムの構築という側面に立てば、財政・人材をどのように効率的に運用するのかは、運営上必要不可欠な視点です。それは、限られた介護スタッフで最大の介護サービスを提供し、運営費・社会保障財政を有効に活用することにつながります。
 この介護システムの効率性の検討は、特別養護老人ホームではほとんど議論されていませんが、介護付有料老人ホームなどの民間の高齢者住宅事業では、事業の成否を左右する重要なポイントです。同じ10人の介護スタッフでも、建物や設備の違いによって、入居者の動き、スタッフの働きは全く違ってきますから、提供できるサービス内容、介護事故の可能性は大きく違っています。
 この検討を業務シミュレーションと言いますが、【建物・設備・介護システム】を一体的に検討することによって、どうすれば、個別ケアを遵守しつつ、最も効率的な介護サービスの提供が可能になるかということは見えてきています。同じ個室であっても、効率性は全く違うのです。

 その視点で見ると、現在のユニット型個室特養ホームの居室配置、介護システムは非常に非効率なのです。
 確かにユニットケアは、要介護高齢者の生活に合致した素晴らしいものですが、その理想を追い求めすぎたために、指定基準を大きく超えるスタッフが必要になるというのが現実です。結果、それが高い介護報酬や基準額を大きく超えるホテルコストに繋がっているのです。


 これはデータにも現れています。  現在の特養ホームの基準配置は、ユニット型個室も従来型の相部屋も要介護高齢者3人に対して介護看護スタッフ1人の【3:1配置】ですが、調査結果を見るとユニット型個室では、【2:1配置】より手厚い配置をとっているところが全体の6割以上、更に手厚い【1.8:1配置】以上のところが4割を超えています。
 ただ、これでも十分という訳ではなく、実際の業務シミュレーションをすると【1.6:1配置】程度は必要になると考えています。結果、スタッフは走り回り、介護事故や転倒が増えることになります。平均・中央値ともに、【1.9:1】ですから、実際は1.5人未満の二倍の配置をとっているところも相当数に上るでしょう。それは、手厚い介護サービスを提供するための配置ではなく、介護事故や介護スタッフの負担軽減のためには、その配置が避けられないということです。

 

件 数

割 合

入所者対比1.8人未満

34件

41.0%

1.8人~2.0人未満

15件

18.1%

2.0人~2.2人未満

19件

22.9%

2.2人~2.5人未満

9件

10.8%

2.5人~3.0人以下

6件

7.2%

平均配置割合

 

【1.8:1】

中 央 値

 

【1.8:1】


  建設費用は、一回限りのものですが、運営は30年、40年と続いていきます。社会福祉と社会保険の歪が解消に向かっても、「自費か・保険か・税金か」という運営の原資が変わるだけで、運営費そのものは高いままです。
 将来の展望がないままに、ユニット型個室の特養ホームをつくり続けると、それは地方自治体の社会保障費を長期間にわたって圧迫し続けることになるのです。


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