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ニュースを読む : 【ニュースを読む】~「神奈川県平成21年度高齢者虐待の状況」②を読む~
投稿日時: 10月08日 (1954 ヒット)

 【ニュースを読む】
~「神奈川県 平成21年度高齢者虐待の状況②」を読む~

 9月24日、神奈川県は、『高齢者虐待防止法』に基づき、平成21年度の高齢者虐待状況を取りまとめ、発表した。  家族などのからの虐待報告件数は、平成20年の583件に対して、平成21年は577件と6件減少しているものの、経済的虐待が88件から162件へと2倍以上増えているのが特徴だ。

資料 平成21年度における県内の高齢者虐待の状況について
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【解説・論点】
 この経済的虐待の問題は、在宅だけではなく、特養ホーム運営やそのあり方に関わってくる問題でもあります。

 10年以上前になりますが、特別養護老人ホームで働いていた当時、入居者の年金口座や金銭管理は主に施設で行っていましたので、この『高齢者のお金』に関わる問題はたくさん扱ってきました。
 例えば、一つは入居者の息子(弟)が会社の経営が逼迫しており身元保証人である娘(姉)に内緒で本人の定期預金を解約してほしいと言ってきたケースです。入所者本人が重度の認知症で判断できなかったため、身元保証人に確認しないと老人ホームでは対応できない、家族間で話し合って欲しいと断ることができました。しかし、後で議論する中で、本人からそれを直接希望された場合、身元保証人に連絡する必要はないのか、また根本的にその対応で良かったのかという課題は残りました。
 入居者の保険証を貸し出せと言ってきたケース(恐らく闇金からお金を借りるため)もありました。その利用意図がわからないとして断りましたが、『息子が言っているのに何故出せない』『お前に何の権限があるのか』と問われれば難しいところです。実際、この場合、『出るところへ出て話をしてもかまわない』『訴えていただいてかまわない』という話にまでなりました。

 これは、施設の金銭管理のサポートはどこまでかという課題にもつながっていきます。
 自分では金銭管理のできない気前の良い入居者、孫や息子が来ると、お小遣いを渡してしまいます。その結果、特養ホームの利用料の支払さえ難しくなりました。身元保証人である息子に話をすれば、しばらくは改善するのですが、すぐ元に戻ってしまいます。そのため、年金が入ったときに先に利用料支払を確定させ、どの程度であれば家族にお金を渡せるのかを本人・家族に話をし、その残額の中で対応してもらうという仕組みにしたのですが、結果、孫の訪問がなくなり、『自分のお金を自由に使えないのか』と入所者の機嫌を損ねることになってしましました。
 このような金銭トラブルを防ぐため、それまでの措置の時代とは違い、介護保険制度以降は基本的には家族が年金口座などの金銭管理をするようになっていますが、結果、利用料の滞納が急増しています。特養ホーム利用料を数ヶ月滞納し、連絡もないため電話をすると、『嫌なら外へ追い出せ』『そんなことできるはずないわな・・』と開き直られたという話も聞きます。

   特別養護老人ホームは、すでに措置施設ではなく、独立した運営を求められています。
 現在、医療費未払いが病院経営悪化の一因に挙げられていますが、恐らく特養ホームでも、同じ問題に直面することになります。そうなると、入所希望者はたくさんいるのですから、支払能力ある人を優先的に入所させる、保証人の支払い能力も勘案して入所者を決めるということになってくるでしょう。
 特養ホームは、介護施設ではなく福祉施設です。福祉的立場に立てば、介護サービスを提供するだけでなく、入居者個人だけでなく、家族を含めた対応が必要になってきます。しかし、その一方で行政からの措置施設ではなく、入所者との個別契約になったため、その責任・負担は事業者が単独で負うことになります。
 これまで想定していなかった家族による経済的虐待が急増する中で、高齢者の年金、特養ホーム入所者の年金を、誰がどのように管理するのは、福祉施設の役割や存在意義にも直結する非常に難しい問題なのです。


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