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ニュースを読む : 【ニュースを読む】~「2010年 国際福祉機器展」を読む①~
投稿日時: 10月12日 (1667 ヒット)

 【ニュースを読む】
~ 「2010年 国際福祉機器展」 を読む ①~

 第37回 国際福祉機器展2010年が、9月29日~10月1日まで、東京ビッグサイトにおいて行われた。昨年より2ヶ国多い国・地域から、492の企業・団体が出展している。

資料 国際福祉機器展2010 ホームページ
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【解説・論点】
 毎年、この時期に行われている国際福祉機器展ですが、昭和49年の第一回以降、今回で37回目を迎えます。
介護保険制度の発足によって注目が集まり、2006年には632社の参加となりましたが、この数年は、競争の激化で淘汰が進み、2010年は492年の参加に留まっています。
 一部では、『マンネリ化してきた』『目新しいものがない』という意見もありますが、昨年から今年にかけては、IT機能やロボット技術を活用したパワーアシストスーツ、見守り機器、癒しロボット、高齢者向けゲーム機など、次世代自立支援機器にも注目が集まるようになってきました。
 高齢者住宅・施設にある従来からのナースコールも、インターネット化、IPホンなどへの活用が進んでいます。
 ここでは、高齢者住宅の福祉機器のあり方、方向性について、数回に渡って意見を述べたいと思います。
 
 ポイントの一つは、介護事故や安全性に対する考え方の見直しです。
 私は、現在、業務上の介護事故を削減・管理するためのリスクマネジメントプログラムを検討・推進していますが、その基礎となるポイントの一つは建物・設備のあり方です。
 発生している事故の要因は以下の3つに大きく分かれます。
入居者の問題   ・・・ 身体機能低下、認知機能低下、予期せぬ行動
 スタッフミス   ・・・ ケアプランミス、介護のミス、介護の隙
 建物・設備・備品 ・・・ 非効率な居室配置、見守りが行き届かない配置、使いにくい設備など

 これらの事故に対して、『どこに責任があるのか』という視点に立てば『目を離したから』『チェックが不十分だった』という介護スタッフのミスということになります。
 しかし、発生している事故・重大事故の内容を精査すると、単独ではなくいくつかの要因が複合的に重なっています。入居者の身体機能は日々変化しますし、多くの高齢者は自分でできることは自分でやろうとして動きます。座ろうとして、椅子の手すりが当たり椅子が動いてしまったという事故もたくさんあります。
 裁判になれば、『安全配慮義務違反』が問われることになりますが、先に一言声をかけてもらえれば、椅子の手すりが可動式であれば、事故を防ぐことができたかもしれません。24時間スタッフが横についているわけではありませんから、このような介護のミスや介護の隙は必ず生まれるものです。
 例えば、車椅子からベッドに移るときにバランスを崩して転倒したというケース。頻発している事故の一つですが、移乗が自立としている高齢者でも、身体機能が低下していくのですから、どこかの時点でこの事故が発生することになります。本来このすき間を埋めるのはケアプランであり、事前に身体機能の低下を予知して、改善の手立てを検討することになりますが、実際にはそう簡単ではありません。『たまたま骨折したか、たまたま怪我がなかったか・・』だけの分析では、介護事故はなくなりません。


 この問題を建物・設備の視点からどのように捉えるのかです。
 確かに、現在の福祉用具・介護関連設備は、日進月歩で進化しており、同時に安全性が高まっています。しかし、その半面、謳われている安全性は、介護ミスや介護の隙がなく、介護スタッフ・高齢者がその指示通りに使ってもらうということが前提になっています。
 逆の問題も発生しています。
 例えば、居室などの入り口ドアは、引き戸でドアノブが掴みやすいように、縦型の手すり型となっているものが多く、行政はこのドア手すりを推奨しています。しかし、一部の入居者は手すりと間違えてしまい、これに寄りかかり、ドアがスライドして転倒するという事故も増えています。『使いやすいはずだ』『設備はこうあるべきだ』という思い込みが事故を発生させているケースも少なくないのです。
 私は、現在の『安全設計』では、介護事故をこれ以上減らすことはできないと考えています。

 いま、京都のゆう建築設計と共同で、『安全性の高い建物・設備設計』について、入浴関連設備・食事関連設備・排泄関連設備、居室内設備などに分類し、様々なメーカーにご参加いただき、勉強会を行っています。
 そこでは、実際に発生した事故やトラブルを検証し、『その設計・設備は介護ミス・介護の隙に耐えられるか』という視点で議論を行っています。
 それは、言い換えれば『どこまでできるか、何ができないか』、ひいては『どのような高齢者に対応できるか、どのような高齢者には対応できないか』ということを明確にする作業でもあります。当然、建物・設備だけで100%回避することはできませんが、建物・設備の限界を知ることによって、介護スタッフは事故を起こさないために何に気をつけて介護すれば良いのかが、見えてくるはずです。  

 これからの建物・設備の安全対策は、『何ができるのか』という視点を変え、『何ができないのか』『何故事故が発生するのか』を明確にすることからスタートすべきだと考えています。


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