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ニュースを読む : 【ニュースを読む】~「2010年 国際福祉機器展」を読む②~
投稿日時: 10月19日 (1431 ヒット)

 【ニュースを読む】
~ 「2010年 国際福祉機器展」 を読む ②~

 第37回 国際福祉機器展2010年が、9月29日~10月1日まで、東京ビッグサイトにおいて行われた。昨年より2ヶ国多い国・地域から、492の企業・団体が出展している。

資料 国際福祉機器展2010 ホームページ
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【解説・論点】
 二つ目のポイントは、可変性・汎用性です。
 高齢者の最大の特性は、加齢や疾病によって短期間の内に身体状況が大きく変化することにあります。
 高齢者住宅の建物・設備設計においては、この要介護度変化にどこまで対応できるのかという『可変性』、及び、様々なタイプの障がい、身体機能の高齢者にどこまで対応できるのかという『汎用性』の検討は不可欠です。
 ただ、可変性・汎用性の考え方は、この福祉用具・介護機器の中でも、若年層の障がい者や要介護高齢者の自宅と、高齢者住宅とでは基本的に違います。

若年層の障がい者

 事故などで身体に障がい等がある場合、一般的に障がい状態は固定し変動しない
⇒ その障がい状態に合わせた建物・設備・備品が必要
⇒ 『汎用性』『可変性』は重視しない

要介護高齢者   の自宅

 加齢によって要介護状態は変化するが、利用する対象者は基本的に一人だけ   
⇒ 対象者の要介護度変化に合わせた建物・設備・備品が必要
⇒ 『可変性』は必要だが、『汎用性』は必要ない

高齢者住宅

 加齢によって要介護状態は変化し、かつ様々な身体状態を持つ多数の高齢者が利用する。             
⇒ 様々な高齢者が利用するということを前提とした建物・設備・備品が必要      
⇒ 『可変性』『汎用性』の両方の視点が必要

 若年層の障がいで、その原因が筋ジストロフィーなど進行性のある疾病でない場合、一般的に状態は固定し、大きく変動することはありません。そのため、その障がいの状態に合わせた建物・設備設計が必要となります。この場合、可変性・汎用性の検討は必要ありません。
 要介護高齢者の自宅で、介護機器の導入を検討する場合、加齢によって身体機能は低下・変化しますが、利用する高齢者は一人だけです。右麻痺の高齢者の場合、その右麻痺の状態を基礎として全体的に身体機能が低下していくと想定することになるでしょう。つまり、可変性の検討は必要ですが、汎用性は必要ありません。
 これに対して、高齢者住宅の場合、右麻痺、左麻痺、下肢麻痺、寝たきりなど様々な身体状況の高齢者が利用しやすいように汎用性を検討しなければなりません。また、可変性にも二つの意味がでてきます。それは個人の入居者の状態が変化するということだけでなく、全体の要介護度割合が変化するということです。自立度の高い軽度要介護高齢者が多くても、数年後には中度・重度用介護高齢者が増えてきます。
 高齢者住宅は、寝たきりの重度要介護高齢者のみを対象としていない限り、『汎用性』『個人の可変性』『全体の可変性』の3点を同時に満たす建物・設備のあり方を検討しなければならないのです。
 例えば、居室内の同じ場所に手すりが設置されているものがありますが、これは右麻痺の人には使い勝手が良くても、左麻痺の人には邪魔で危険なだけです。汎用性に乏しい設計の代表例です。入浴設備も、想定よりも一般個浴の対象者が多く、一千万円近い費用を出して購入したリフト浴・特殊浴槽がほとんど使われていないというケースもあります。これは『全体の可変性』の検討不足です。
 建物・設備・備品はハードですから、様々な身体機能の高齢者、入居者の状態変化、要介護度割合の変化に対応するということは簡単なことではありません。しかし、この可変性・汎用性は、『どこまで個別の入居者に対応できるのか』を検討することでもありますから、その適応力の強化は、介護事故の削減、安全性の向上にも不可欠です。その課題をクリアーしないと、高齢者住宅に適した設計・設備だとは言わないのです。
 当然、この可変性・汎用性は、建物・設備だけで対応するには限界がありますから、介護サービスと一体的に検討する必要があります。右麻痺の人にはどのように入浴してもらうのか、左麻痺の人にはどのようなケアを行うのか、その手順はどこが違うのか、介護手法、シャワーキャリーの配置など、一つ一つ検討しなければなりません。
 それは、前回述べた『できないことを明確にする』『発生しうる事故リスクを明確にする』ということでもあります。『ここに手すりがあるのでも麻痺の人でも安心です』といった表面的な安全対策、可変汎用対策ではなく、介護サービスと一体的になった、きめ細かな検討が求められているのです。  


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