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ニュースを読む : 【ニュースを読む】~「2010年 国際福祉機器展」を読む③~
投稿日時: 10月26日 (1630 ヒット)

 【ニュースを読む】
~ 「2010年 国際福祉機器展」 を読む ③~

 第37回 国際福祉機器展2010年が、9月29日~10月1日まで、東京ビッグサイトにおいて行われた。昨年より2ヶ国多い国・地域から、492の企業・団体が出展している。

資料 国際福祉機器展2010 ホームページ
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【解説・論点】
 もう一つの方向性は、詳細な実務検討です。
 その意味は二つあります。

 一つは、介護システム・介護マニュアルを含めた実務検討です。
 前回、可変性・汎用性・安全性の向上のためには、介護システム・介護実務との一体的な検討が不可欠だと述べましたが、現在の建物・設備設計は、その介護場面単独で設定されており、実際の介護実務と一体的な検討が十分に行われているとは言えません。
 例えば、食事の場面を想定しましょう。
 食事時の誤嚥・窒息は、入浴時の溺水と同じく、介護事故の中で最も死亡率の高いものの一つです。また、高齢者は嚥下機能が低下していますから、この誤嚥・窒息は、食事介助を行っている高齢者以上に、自分で食べられる、食事が自立している高齢者に多く発生します。
 しかし、多くの介護施設の食事介助は、一人の介護スタッフが介助を要する高齢者を介助するという視点が中心となり、食事自立の高齢者に対する見守り介護は、『誰かが見ているだろう』と言う程度で、十分に検討されている訳ではありません。これは設備・備品設計も同じで、食事介助用のテーブルなどが作られていますが、その機能検討は食事の介助が必要な高齢者をどのように介助するのかに留まっています。
 このような視点では、個別の食事介助はしやすくなりますが、全体を見る、他の高齢者を見守るという視点が乏しくなります。食事中の窒息・死亡事故の大半は、そこに介護スタッフが多くいたにも関わらず、誰も気づかなかった、気づくのが遅れたというのが原因です。
 特別養護老人ホーム、介護付有料老人ホームの食事介助は、「ゾーンプレス」が基礎となるべきなのですが、介助が必要な人だけを見るという「マンツーマン」(二人の高齢者を一人で見る場合もありますが)になっているために、ここに『介助の隙』が生じているのです。
 この問題は、食事テーブルの機能だけでなく、食堂の広さや、食堂単位の高齢者数、食事時間内の介護スタッフ数も一体的に検討しなければなりません。高齢者住宅の設備・備品設計は、それぞれの介助場面単独ではなく、介護の流れ・実務のあり方を想定し、その機能・役割を検討しなければならないのです。

 もう一つは、他の設備・備品との連携です。
 現在の設備・備品の課題の一つは、それぞれが単独で設計されており、他の備品・設備との連携が十分に検討されていないということです。
 例えば、入浴設備・浴室設計は、脱衣室と一体的に考えなければ、事故をふせぐことはできません。浴室・入浴設備はパッケージ化されていますが、脱衣室の広さや入居者の動き、介助の動きをイメージして一体的に検討されていなければ、ストレッチャーの向きを途中で変えなければならなかったり、ぶつかり事故や転倒事故などが増えることになります。
 一般個浴の事故は、浴槽タイプ、浴室機能だけでなくシャワーキャリーなど関連備品の機能にも大きく左右されます。これらが別々の視点で作られ一体的に検討されていないために、それぞれの機能が発揮されないだけでなく、逆に危険因子となっているケースもあります。
現在の入浴は、これまでのような『集団入浴』ではなく、一人のスタッフが一人の高齢者を送迎から着脱、洗身、入浴まで行うという『個別入浴』が基礎となっています。車椅子から着脱ベンチ、手すり位置、浴室への移動、浴槽への移動・・と、それぞれ関連する設備・備品が一体的に検討されなければ、事故を減らすことはできませんし、快適な入浴をサポートすることはできません。

• 発生しうる生活上の事故を想定・予見し、これを可能な限り削減した【建物・設備・備品】
• 介護上の事故を削減するために、介護マニュアルと一体的に検討された【建物・設備・備品】
• 事故が発生することを前提に、怪我等の拡大を防ぐことを目指した【建物・設備・備品】
多様な身体・認知機能の高齢者が利用することを考えた【建物・設備・備品】
• 身体機能・認知機能の低下・変動を想定した【建物・設備・備品】
• 上記の品質が維持できているのかを定期的にチェックする 安全管理システムの構築

介護事故による裁判・訴訟が急増し、業務リスクマネジメントに対する意識が高まるで、これからの設備・備品には、高い安全性が求められるようになると考えています。それはこれまでのような『安全機能をつける』というものではなく、どこまで安全性について深く考えているのかです。
勉強会の中では、上記の6つの視点を挙げています。
特に、これから介護施設・高齢者住宅運営の中心課題となるであろう介護事故の削減については、これまで十分に検討されている訳ではありません。私は、各設備・備品メーカーは、『介護スタッフの意見を聞いてつくる』というのではなく、実際の事故を詳細に検討し、専門メーカーとして食事のあり方、排泄のあり方を提案する、という踏み込んだ対応が必要になると考えています。
事業性を考えると多様化した高齢者住宅のターゲット・機能・内容が集約されていくように、建物・設備・備品の方向性もいくつかの方向に集約されていきます。それをどのように早く見つけることができるのかが、設備・備品メーカーの事業の成否を決めると言っても過言ではありません。


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