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ニュースを読む : 【ニュースを読む】~特養ホームの待機者は42万人ではない~
投稿日時: 12月14日 (3153 ヒット)

 【ニュースを読む】
~ 特養ホームの待機者は42万人ではない ~

 厚生労働省が、特別養護老人ホームの入所申込者及び待機者(優先入所申込者)の状況を適切に把握している特養ホーム15施設に対して、施設から見た待機者数について調査をおこなったところ、42万人は申込者の総数であり、内、特養ホームの対象となる待機者の割合は22.5%であることがわかった。

資料 第34回 社会保障審議会介護保険部会資料
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【解説・論点】
厚労省の資料によると、現在の特養ホームの入所申込者は全国で42万人を超えています。今後、団塊の世代の高齢化によって、60万人、80万人と右肩上がりで増えていくことは間違いありません。
 しかし、この42万人というこれまで厚労省が示してきた数字には疑問符が付き始めています。
 2010年の10月7日に厚労省が社会保障審議会の介護保険部会に示した資料によると、待機者を適切に把握している全国の特養ホーム15施設を対象に調査したところ、15施設の入所申込者の合計5231人に対して、実際の待機者は1176人だという結果がでてきたからです。申込者の中で、厚労省が示している『介護の必要度』『家族の状況』『居宅サービスの利用状況』などによって、特養ホームで優先的に対応すべき待機者を把握するとその数は22.5%になるということです。

 実は、ここには数字のごまかしがあります。この申込者と待機者というのは同じではないからです。
 私が特養ホームで働いていたとき、介護保険制度がスタートし、それまでの措置制度から直接契約に移行になったのですが、申し込みが殺到し、最初の数ヶ月で、申し込み総数が700人を超えたことがありました。当然そのままにすれば右肩上がりで増えていくことになりますが、当然、途中でお亡くなりになる方もありますし、他の特養ホームに入所されたという方もでてきます。それを伝えてこられる家族やケアマネの方もおられますが、ほとんどはそのままです。半年に一度、ケアマネを通じて状況確認していましたが、その都度、数は大きく変わります。
 つまり、厚労省がこれまで42万人と示してきたのは、待機者ではなく各施設で申込された高齢者を足しただけの数字であり、その内容を精査し、特養ホームの対象者となるのは10万人を切るということになります。42万人の中にはすでに他施設に入所されている方、亡くなられている方も多数含まれている可能性が高いのです。

 データを取っていたのは厚労省ですから、この42万人という、これまで厚労省が発表しつづけてきた人数に、信憑性がないこと、対象となる実数はかなり低いことはわかっていたはずです。
 厚労省はこの数字を発表するにあたって、サンプル数が少ないとして400~500施設を対象に大規模な調査を行うとしていますが、『42万人分不足している』という数字を根拠に『特養ホームの緊急整備』として10万床以上の整備計画を行った後で、これを発表するということに、大きな作為を感じざるを得ません。
 厳しい見方をすれば、厚労省は、一般の市場価格の1/3程度の要介護高齢者住宅を、福祉予算を使って建設したいために、実際の必要数も調べないままで『42万人も殺到しているのだから、不足しているのです・・』と喧伝していたことになります。この福祉施策で住宅施策を代替させることは、非効率であるだけでなく、公平性、継続性のない施策で、これからの社会保障運営に大きな影を落とすであろうこともわかっていたはずです。これが『コンクリートから人』への正体だとすれば、国民を騙していることになります。

 また、今回、厚労省が適切に申込者・待機者を把握しているとして調査に協力した15施設でも、入所申込者に占める待機者の割合は、0.8%から76.1%と大きな開きがあり、各施設の考え方、選定方法が全く違うということがわかります。各施設によって優先すべき対象イメージが違う中で大規模な調査を行っても、どれだけの意味があるのかわかりません。

 特養ホームを増やすと地域の福祉の向上につながると考える人は多いのですが、財源や人材が限られている中で、一人当たり巨額な財政負担、社会保障費負担が必要な特養ホームを作ると、その皺寄せは地域の高齢者にかかり、地域の社会保障財政を逼迫し続けます。特養ホームの入所者だけが、何重もの手厚い保護を受け、入所できない高齢者・家族は悲惨な生活を続けるということになります。  厚労省の施策に翻弄されるのではなく、各自治体で、特養ホームの目的、役割を明確にして、その必要数を管理するという方向にいかなければ、とんでもないことになるのです。


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