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コラム3 こんな老人ホーム・高齢者住宅を作ってはいけない
混乱に拍車をかける『サービス付高齢者住宅』 ②~確実に増える無届施設~
 この制度の混乱は、入居者保護の劣化に直結します。
 高齢者住宅の制度が何故必要なのか、なぜ入居者・家族にわかりやすい制度にしなければならないのかと言えば、それは入居者保護に直結するからです。制度が複雑になるということは、わかりにくいというだけでなく、その中で歪が生まれ入居者保護の混乱が更に拡大するということです。
 一つは、無届施設の増加です。無届施設は、有料老人ホームとしての届け出義務が課せられているにも関わらず、届け出をしていない高齢者住宅のことを言います。現在の制度では、高専賃として登録されていれば介護や食事の生活支援サービスを提供していても有料老人ホームの届け出をする必要がありませんし、監査も指導の制度もありません。しかし、新しい『サービス付高齢者住宅』に登録すると、重要事項説明書の策定や情報開示など事業者の義務規定が厳しくなり、建物管理やサービスに関する監査指導・立ち入り調査が行われるとしています。
 今でも積極的に情報開示や入居時説明を行っている優良な高専賃事業者は登録するでしょう。しかし、高専賃は玉石混淆だと言われているように「監査がないから高専賃にした」「行政に監督されるのは嫌だ」という事業者も少なくありません。そのような事業者にこそ監査指導体制を強化しなければならないのですが、登録をするか否かは自由ですから、生活支援サービスを行っている現在の高専賃がすべて新しいサービス付高齢者住宅の登録を行うとはとても思えません。


 現在の生活支援サービスを提供している有料老人ホーム、高専賃は、大きく6つに分かれることになります。
 前回の移行図で示したように、生活支援サービスを行っているにも関わらずサービス付高齢者住宅として登録しない現在の高専賃の事業者は、有料老人ホームとしての届け出が義務付けられます(上記⑤のケース)。しかし、実際には、現在の無届施設のように『高齢者だけを対象としていない』『生活支援サービスは個別契約で事業者が行っていない』等の詭弁を弄して、その届け出は進まないでしょう(上記⑥のケース)。
 これは、2006年の有料老人ホーム定義変更で形骸化された届け出制度の二の舞になるということです。
 現在の有料老人ホームは、開設時から届け出・事前協議を行い「有料老人ホーム設置運営指導指針」(指導指針)の基準に基づいて整備されたものと、基準のない類似施設(宅老所など)として運営していたものが、2006年の有料老人ホームの定義変更によって強制的に届け出するように指導され、形の上だけで有料老人ホームになったという二つのタイプにわかれます。同じ有料老人ホームと言っても、後者は指導指針に基づいていないために劣悪な環境のものも多く含まれていますし、現在でも届け出をしていない無届施設はまだ多く存在しており、都道府県ではその対応に苦慮しています。
 大阪の堺市で、訪問介護事業者が、賃貸マンションに入居している寝たきりや認知症高齢者11人にドアの鍵を渡さなかったり、非常階段にロープを張り巡らせたりするなどのニュースが報道されましたが、これも有料老人ホームでも高専賃でもない無届施設です。このようなことが続くと、『たまゆら』のような悲惨な事故が、繰り返されることになります。
 無届施設は、劣悪な環境に低所得者を押し込めて社会保障費を搾取する貧困ビジネス化しているところも多く、貧困ビジネスの半数は暴力団が関与していると言われています。社会保障の財政悪化、入居者保護の側面からも届け出強化が必要なのですが、この新しい制度改定によって、更に誰も管理しない「元高専賃」の無届施設、貧困ビジネスが増えることは間違いありません。