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コラム3 こんな老人ホーム・高齢者住宅を作ってはいけない
なぜ特別養護老人ホームをつくってはいけないか。
 団塊世代の後期高齢化は目前に迫っています。自宅で生活できない高齢者が安心して生活できる住宅の整備は、高齢者・家族だけでなく、日本の緊急課題です。
 ただ、高齢者住宅は、超高齢社会の『諸刃の剣』となる事業でもあります。安定した産業として成長すれば、社会保障費の効率運用、介護看護スタッフの労働環境改善、地域経済の活性化につながりますが、逆に、劣悪で不安定な高齢者住宅・老人ホームが増えれば、入居者・家族の生活を崩壊させるだけでなく、社会保障費が無駄に使われることになり、その皺寄せは、地方自治体の財政、介護福祉ネットワークにまで及びます。
 前章では、現在の制度の課題を述べましたが、不安定で、矛盾の多い制度のもとで計画される老人ホーム・高齢者住宅は、同様に長期安定経営の難しい不安定な商品設計の原因となります。不安定な制度に早急に見直すと共に、官民共に『とりあえず高齢者住宅を増やす』という稚拙な考えを捨て、どのような老人ホーム、高齢者住宅をつくってはいけないのか、どのような高齢者住宅を増やさなければならないのかという視点に移行しなければなりません。
 まず、作ってはいけない老人ホーム、その筆頭に挙がるのは福祉施設である特別養護老人ホームです。
 2000年にスタートした介護保険制度は、『高齢者介護』と『老人福祉』を分離させるためのものだったのですが、現在の老人福祉は、市場原理の働く介護保険に巻き込まれてしまっているために、その役割、理念が大きく後退しています。
 社会保険と社会福祉の役割が明確にできていないという問題は、介護保険と老人福祉の役割が混乱しているということであり、それは老人福祉施設と高齢者住宅の役割が整理できていないことにつながっています。
 特養ホームの本来の役割は、要介護高齢者のための介護施設ではなく、介護保険だけでは最低限の生活を維持することのできない高齢者のための福祉施設です。現在のように老人福祉と介護保険の役割を曖昧にしたままで、特養ホームを要介護高齢者対象とした高齢者住宅の代替施設として流用しつづけることは、財政的にも人材的にも100%不可能です。その役割や目的の違いを明確にしないままで、『特養ホームに入りたい人が多いから』と作り続ければ、介護保険財政、地方自治体の財政を圧迫させ、不公平で非効率な社会保障財政の運用を助長することになります。
 また、現在の特養ホームの役割の混乱が、優良な高齢者住宅の育成・発展を阻害し、引いては要介護高齢者の安定的な住居の確保を難しくしているということは間違いありません。現在の高齢者対策、高齢者住宅施策を立て直すには、老人福祉施設である特養ホームのあり方を、根本的に見直す必要があります。  何故、特別養護老人ホームを作ってはいけないのか、何が問題なのかについて、整理します。