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コラム3 こんな老人ホーム・高齢者住宅を作ってはいけない
在宅サービス併設型 高齢者住宅 ② ~制度変更リスク~
 最大の問題は、この在宅サービス併設型の高齢者住宅は、介護保険財政悪化に直結するということです。
 この『2時間ルール』『20分ルール』など、ケアマネジメントに逆行するこれらの指針は、高齢者住宅での区分支給限度額方式の算定を抑制するためのものです。しかし、現実的には施策が中途半端なために、介護保険支出も抑制できず、事務作業だけが煩雑になるという全く意味のないものとなっています。
 今のような複雑で意味のないシステムや報酬算定のあり方が、今後も続けられるとは、とても思えません。
 2006年の『外部サービス利用型特定施設』創設に加え、介護保険法の改正で2012年度からスタートする『定期巡回・随時対応型訪問介護看護』も、高齢者住宅の介護システム、介護保険適用方法に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。介護保険制度改定や介護保険の指導の中で、高齢者住宅に対する区分支給限度額方式の算定は、より厳しくなっていくことは間違いありません。
 国交省は、『施設ではなく住宅を』と、介護と住宅の分離が必要だと考えているのかもしれませんが、それはあまりにも高齢者住宅という事業を知らない人の意見です。
 本来、要介護高齢者対応の高齢者住宅の介護システムは、特養ホームや介護付有料老人ホームのように、その老人ホームや高齢者住宅事業者の責任で、ケアプランに基づいて一体的に介護看護サービスが提供されるというのが、単純でわかりやすいものです。どれだけ介護サービスを受けても、介護報酬が一定であれば、介護サービスを受ける入居者・家族は安心ですし、介護スタッフも辻褄あわせの介護報酬算定の事務作業ではなく、入居者への実際の介助や介助記録に注力できます。
 現在の歪んだ制度設計や、それに基づいて設計される高齢者住宅は、どのような高齢者住宅を入居者・家族は望んでいるか、どうすれば介護報保険財政を効率的に運用できるのかという、事業・制度として必要な命題のどちらも満たしていないのです。
 今後、高齢者住宅関連制度や介護報酬が改定されると、在宅サービス併設型の高齢者住宅は、制度の歪によって生み出された、非効率で商品として魅力のない『時代遅れのモデル』となるでしょう。述べたように、時代遅れになったからと言って、建物設計は変えられませんし、大きくサービス内容や価格を改定することもできません。
 サービス付高齢者住宅のモデルでも、軽度~中度要介護高齢者を対象とした、単純な『在宅サービス併設型 高齢者住宅』が紹介され数多く開設されていますが、このシステムでは、これからの長い競争を勝ち抜くことは難しいと考えています。

 制度変更リスクについて、『そのような改正がなされれば業界は大混乱する』と話をする人がいますが、業界として介護報酬のアップや経営を安定させるための方策を求めることと、それぞれの経営者が将来的なリスクへの対応を検討することは別の話です。徹底的に財政が不足することは事実ですし、消費税が大幅にアップされても、社会保障費の大幅削減は避けられません。特に、非効率な財政運用、不公平な財政運用は、真っ先に削減されることになります。今のままの制度、介護報酬が10年、20年続くことは100%ありません。
 高齢者住宅事業の特徴は、入居希望者が増加すること、長期安定経営が必要であること、そして制度の変更が大きなリスクとなるということです。高齢者住宅を開設することは誰にでもできますが、経営が安定するのか否かは、どこまで深く発生しうるリスクを理解し、そのリスクを削減するために適切な対策を取っているかにかかっています。そのためには『需要が増える』というメリットではなく、『高齢者住宅の経営環境は厳しくなる可能性が高い』というリスクに目を向けなければなりません。
 介護報酬算定方法が変更になり、商品性・競争力が低下し経営が悪化しても、行政が責任をとってくれるわけではありません。右手を挙げて「介護報酬の充実」を叫んでも、左手では、制度変更リスクがどれだけ経営に影響を与えるのか、冷静にソロバンをはじいておかなければなりません。また、制度の方向性を見据え、様々なリスクに強い商品を設計しなければなりません。併設型のビジネスモデルで事業計画を進めるとしても、重度要介護高齢者が増えたときに対応できるのか、区分支給限度額方式が抑制されても収益は確保できるのか、これから競合相手が参入してきても、強い商品性を維持できるのかといった検討は開設事業者の責任なのです。