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コラム3 こんな老人ホーム・高齢者住宅を作ってはいけない
高齢者住宅という商品はどこに集約されていくか ③ ~価 格~
 3つ目は、価格の方向性です。
 国交省は成長戦略の中で、全高齢者に対する高齢者住宅を現在の0.4%から3~5%に増やすとしています。高齢者住宅の整備が不可欠であるという認識は共通しており、高齢者住宅の供給は右肩上がりで増えていくことになりますから、一般のサービス同様に事業者間の競争が激しくなっていきます。
 対象者が限定され、商品・サービスの方向性が定まり競争が進むと、価格は安定してきます。
 現在の高齢者住宅の価格には、相場というものがありません。同程度のサービス内容、居室の広さ、建物の仕様、立地条件であっても、その価格には大きな開きがあります。その建物設備仕様・サービス内容で何故そんなに高額なのかと思うものもあれば、その価格で本当に説明通りのサービスが提供できるのか、スタッフが確保できないだろうと心配するものもあります。実績値の乏しい新しい事業であり、事業リスクの捉え方や求める利益率に大きなばらつきがあり、価格とサービスのバランスが安定していないのです。
 要介護高齢者住宅の価格算定の基礎・原価となるのは、土地購入費用・建物建設費用・管理費・人件費・食材費などですが、この中で最も大きな割合を占めるのは人件費です。介護看護サービスにかかる人件費総額をどれだけ抑えることができるのかが、要介護高齢者住宅の商品設計のポイントです。ただし、介護看護スタッフの確保は、入居者募集以上に難しくなりますから、パートスタッフの割合を増やしたり、一人あたりの介護スタッフの給与を抑えるといった短絡的な手法では、長期安定的に経営することはできません。また、特定施設の指定基準程度の配置では、重度要介護高齢者の増加に対応できません。
 今後、競争が激しくなると、入居希望者・家族の高齢者住宅を見る目は厳しくなっていきますから、価格とサービスのバランスは安定してきます。一様に今よりも安くなるということではなく、営利事業として継続的な経営が可能であるレベルに、価格とサービスのバランスがとれてくる、つりあってくるということです。
 もうひとつ、価格設定でポイントとなるのが、入居一時金の方向性です。
 高齢者住宅の入居一時金は、居室や共用部を終身利用できる権利を一時金で購入するという、他に類例のない特殊な価格設定方法です。国民生活センターの調べによると、入居者の選択も含め、全体で約85%の有料老人ホームが入居一時金を設定しています。また、新しいサービス付高齢者住宅の制度の中でも、入居一時金を設定する事業者を想定しています。
 この入居一時金に対して様々な問題が指摘されていますが、それは十分な説明がなされていないことに起因するものが多く、本来、価格は事業者が入居希望者との契約に基づいて決めることですから、過度な規制は好ましくありません。
 ただ、この利用権料(家賃相当)を一時金として購入させるという価格設定方法は、介護保険制度が始まるまでの自立高齢者を対象とした高額な有料老人ホームに適したものです。要介護高齢者を対象とした高齢者住宅の場合、収支に占める介護看護等の生活支援サービスの割合が大きくなりますから、価格設定上のメリットは小さくなりますし、逆に償却期間が短くなっている半面、入居期間の想定が難しいため、長期入居リスクによって、収支が不安定になります。
 入居者や家族から見ても、実際の入居期間が償却期間より短くなると、入居者にとって利用料(家賃)が割高なものとなりますから、重度要介護高齢者やその家族にとってはデメリットが大きくなります。倒産すれば全く返金されないというリスクを考えても、高額の入居一時金の支払いを敬遠する傾向が高くなるでしょう。
 更に、不透明な初期償却や入居一時金の保全、返還に対するトラブルが増加していることから、制度上の規制は厳しくなっていきます。そのため、要介護高齢者住宅の入居一時金は、その金額・役割ともに小さくなっていくと考えています。