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コラム3 こんな老人ホーム・高齢者住宅を作ってはいけない
介護システム考 ①  【10名×6ユニット】
 要介護高齢者住宅の商品性はどこに集約されていくのか、その中心となるのが介護システムです。
 これからの高齢者住宅の介護システムは、重度要介護高齢者が多くなっても対応できること、介護看護スタッフが働きやすい労働条件・労働環境を整えるという二つの命題を前提としなければなりません。この介護システムは次に述べる価格設定にも大きく関わってきます。商品性を高め価格を抑えるためには、限られた人数で最大限の介護サービスが提供できる方法を、建物・設備を含めて一体的に検討しなければなりません。
 それが業務シミュレーションの視点です。
 それは、介護システムだけでなく要介護高齢者住宅の建物・設備設計の方向性が集約されていくということでもあります。
 一例として、60人定員の要介護高齢者住宅を想定し、現在のユニット型個室特養ホームの基準に合わせた【10名×6ユニット】と、本来のユニットケアの基準を緩めた【15名×4ユニット】を比較し、要介護度割合の変化を5つのケースに分けて、必要な介護・看護スタッフ数がどの程度違ってくるのかを検討しています。
 業務シミュレーションとは何か、どのような視点で要介護高齢者住宅の商品設計・介護システム設計を行うのかという一つの事例です。
 
 
   
 
 まず、現在のユニット型個室特養ホームの建物設備基準です。1ユニット当たりの定員10名以内、同一のユニット内に食堂や浴室を設置することが義務付けられています。60名定員ですから、ワンフロアーあたり2ユニット(10名×2ユニット)として、居室階は3階に分けています。それぞれの要介護度の高齢者が各ユニットに平均して入居していると想定しています。
 食堂は分離していますから、見守り・声かけなども含め各ユニット10名単位で介護サービスを完結しなければなりません。ケース1の場合、食事全介助となる要介護4・5の高齢者は1ユニットあたり2名ですから、一人のスタッフで介助することは可能です。ただ、一人では食事の準備や食後の片付け、移乗移動などの介助ができませんし、見守りが十分にできないために、誤嚥や窒息などの業務リスクに対応することができません。そのため各ユニット(10名)に対して2名の介護スタッフの配置が必要になります。施設全体60名で、食事時(朝・昼・夕)の配置スタッフ数は12名です。
 入浴は、一人の入居者が週2回入浴(特養ホーム最低基準)するとして、各ユニット(10名)で、一週間あたり延20回の入浴介助が必要になります。月曜日~土曜日までを入浴日とすると、一日3名~4名の高齢者の入浴を午前と午後に分けて行うことになります。各ユニット、一人の介護スタッフは浴室に入り個別対応を行いますから、それ以外の入居者(9名)の排泄介助や見守り介助を担当する介護スタッフがもう一人必要になります。各ユニット2人、全体で介護スタッフ12名となります。
 
 
   
 
 このように、それぞれの時間帯に必要スタッフ数を算定して、交代勤務、休日などを計算すると、入居者60名に対して、常勤換算で38名から42名の介護看護スタッフが必要となります。常時そのユニット内の介護スタッフ内をゼロにすることはできませんから、軽度~中度要介護高齢者が多くても、重度要介護高齢者が多くても、必要スタッフ数が、あまり変わらないことがわかっています。