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特養ホーム ホテルコスト見直しの課題  ①      2013/12/10

 現在特別養護老人ホームや老人保健施設に入所している要介護高齢者は、介護保険の一割負担以外に、ホテルコストと呼ばれる居住費や食費が必要となる。標準負担額は特養ホームの相部屋であれば月5.2万円、個室であれば10.2万円となっているが、生活保護世帯や住民税非課税などの低所得者には、負担の軽減が行われている。  しかし、高齢者は、低収入高資産と言われるように、前年度の収入が低くても、預貯金や自宅などの資産を持つ人が少なくない。そのため、低所得であっても預貯金などの資産が多い人は、減額せずに負担を求めるのが狙いで、国は平成15年にも実施したいとしている。

 現在、特養ホームなどの介護保険施設の運営について、様々な議論が行われています。
 その一つが、ホテルコストと言われる居住費や食費の低所得者対策の見直しです。この見直しについては、『負担できる人は負担を・・』とマスコミや新聞各紙でも、好意的に報道されていますが、その根底に横たわる根深い課題についてほとんど理解されていません。ここでは、特養ホームのホテルコストを巡る課題について、数回にわたって整理します

 まず、介護保険施設のホテルコストとは何か、現在のユニット型個室特養ホームを例にその概要について解説します。
 自宅で介護サービスを受ける場合、受けた介護サービスの一割負担を支払いますが、特養ホームでは、介護保険の一割負担以外に居室などの利用料や食費がかかってきます。その二つを合わせたものをホテルコストと呼んでいます。この食費や利用料などのホテルコストは、すべての入所者にかかってくるものですが、民間のマンションと同じように、一定額としてしまうと低所得者が入所できなくなります。そのため、低所得の高齢者に対しては減額制度が行われています。家族のいないひとり暮らしの高齢者で年金収入だけだと仮定すると、第三段階は大よそ80万円~155万円以下の人、第四段階はそれ以上の収入がある人です。



 表のように居住費の基準額は1970円ですが、第二段階の高齢者が入所する場合、居住費の負担限度額は820円ですから、一日あたり、1050円(1970円-820円)が、食費については990円(1380円-390円)が減額されています。
 基準費用額が適用される第四段階の高齢者の場合、居住費1970円、食費1380円で一日あたり3350円、一ヶ月のホテルコストは約10万円となりますが、第二段階の高齢者は、居住費820円、食費390円で一日あたり1210円、一ヶ月あたり約3万6千円。その差額の6万4千円は、介護保険から支出されています。
 確かに、老人福祉施設という性格を考えると、低所得者に配慮することは重要です。

 しかし、その一方で二つの課題がでてきます。
 一つは、自宅や高齢者住宅で生活する高齢者とのバランスです。
 自宅で生活する高齢者は、それは前年度の収入に関わらず居住費や食費を支払っています。民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に入居すると、同様に家賃や食費が必要となりますが、低所得者に対する減額制度はありません。自宅でも低所得者だからスーパーで安くしてもらったり、住宅ローンの返済額を少なくしてもらえるわけではありません。特養ホームに入れば、居住費や食費が減額されるというのは、その入所者にとってはありがたいことですが、自宅や民間の高齢者住宅で生活する高齢者にとっては、不公平だということになります。
 もう一つは、その減額の対象となるのか前年度の収入だけで良いのか・・ということです。
 特別養護老人ホーム入所者に行われている低所得者対策は、生活保護法に基づく施策とは基本的に違います。生活保護の場合、その高齢者の前年度の収入だけでなく、預貯金などの資産、同居扶養者(子供等)の収入、資産なども調査対象となり、収入だけでなく資産がある場合、支給されません。
 これに対して、特養ホームの場合、減額算定の対象となるのは前年度の収入だけですから、その対象者は大きく広がります。特に、高齢者は一般的に高資産、低収入の人が多いといわれています。そのため、数千万円の預金や不動産を持っていても、前年度の収入が年金だけであれば、ホテルコストは減額されています。

 そのため、今回の改定で、現行の減額制度は維持しつつ、預貯金などの高額な金融資産のある高齢者に対しては、減額せずに支払ってもらおう・・ということなのです。
 当初は所有不動産についても対象とする予定で、不動産を担保にしてお金を貸し付ける『リバースモゲージ』なども活用する予定だったのですが、正確に資産を把握したり、市町村での事務負担も大きくなることから、対象となるのは預貯金・有価証券のみとなる予定です。国の案では、預貯金・有価証券が夫婦で2000万円以上、単身者で1000万円以上ある場合は、前年度の収入に関わらず、食費・居住費は全額自己負担(第四段階と同じ)となります。
 預貯金金額などは、自己申告に頼ることになるため、公平な仕組みとするための方策などを検討することが必要ですが、自宅で生活する高齢者とのバランスや社会保障財政の財政悪化を考え合わせると、『負担できる人は負担すべき・・』という意見は、その通りだと思います。
 私もそう思っています。現状の混乱した制度の中で、少しでも不公平感を和らげるためには、そうせざるを得ない・・と言った方が良いかもしれません。

 しかし、問題は、その結果どうなるのか ・・・・です。
 これは高齢者にも応分の負担が必要だ・・という単純な話ではなく、これまでの老人福祉施策の大きな弊害が隠されているのです。

課題②に続く