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特養ホーム ホテルコスト見直し の課題  ②      2013/12/12


前回から続く

 運営に必要な運営コストという視点から、介護付有料老人ホームとユニット型個室特養ホームを比較してみましょう。
 運営に必要なコストを大まかに分類すると、『土地・建物・設備関連費用』 + 『生活支援サービス関連費用(介護看護等)』 + 『食事サービス費用』 となります。介護付有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの類型に関わらず、その建物設備・サービス内容が同じであれば、当然、その運営に必要なコストは同じです。
 場所やグレードにもよりますが、重度要介護高齢者を支えるために必要なコストは、『土地・建物・設備関連費用』は13~15万円程度、『生活支援サービス関連費用(介護看護・事務管理含む)』が25万円~30万円程度、『食事サービス費用』 は5~7万円程度で、トータルすると40万円~50万円といったところでしょうか。



 しかし、運営コストは同じでも、そこに投入される社会保障費は全く違います。特養ホームには、建設にかかる補助が、一人当たり300万円~450万円が拠出されています。介護報酬も一ヶ月一人当たり3万円以上高くなっていますし、その他様々な加算が行われています。単純に計算しても、その違いは、一人あたり年間150万円以上の差になります。また、社会福祉法人には借入に際して固定金利の低利融資が行われていますし、事業税や固定資産税などすべて非課税です。
 更に、特養ホームは、特別な広告をしなくても、入所希望者が押し寄せ、待機者が門前列をなすため、開設すれば常時100%に近い稼働が約束されますが、有料老人ホームの場合は、広報広告に大きな費用が必要となりますし、すぐに満室になるわけではなく、入居者募集のリスクを考えると初年度の入居率は50%程度、次年度以降も80%程度の入居率で事業計画を策定することになります。
 このように、特養ホームの入所者に対しては、二重三重の手厚い社会保障施策が行われていることがわかります。そのため、特養ホームの入所者が支払う月額費用は、基準額最高で13万円程度(第四段階の高齢者)ですが、その隣に作った全く同じ基準の介護付有料老人ホームの入居者の月額費用は30万円を超えるものとなります。
 『不公平感をなくすために食費・居住費の低所得者対策を改める』ということは、必要かもしれませんが、低所得者でない基準額を支払う高齢者でも毎月支払う費用は二倍以上違うのですから、特養ホームと介護付有料老人ホームの利用料の負担が同じになるというわけではありません。
 『有料老人ホームは月額30万円もかかるから高い』と言われますが、それは有料老人ホームの事業者が暴利をむさぼっているわけではなく、莫大な社会保障費が投入されている特養ホームと比較すること自体が間違っているのです。

 ただ、社会福祉法人や特養ホームには、たくさんの社会保障費が投入されているから、『不公平だ』と言うのは早計です。
 それは、本来の役割が違うからです。
 日本の社会保障制度というのは、大きく二段階に分かれています。



 ひとつは、社会保険制度(労働保険含む)で、医療保険や介護保険、失業保険、年金保険などです。『保険』と言う通り、病気になったり怪我をしたり、失業したり、歳を取って介護が必要になったり、障害や老齢で働けなくなったときのために、みんなでお金を出し合って積み立てておくという『共助』の制度です。民間の生命保険や損害保険と違い社会保険は、法律で加入が義務付けられています。『皆保険皆年金』と言われるように、この社会保険が日本の社会保障制度根幹です。
 しかし、この社会保険制度だけでは対応できないような問題があります。
 例えば、親が養育を放棄した子供や、生まれながらにして重度の障害を持つ人、病弱で働くことのできない人など・・です。それらの人が憲法で保障された最低限の生活を維持することができるようにある制度が、児童福祉、障害者福祉、生活保護などの『社会福祉』です。つまり、社会保障制度の中でも、セーフティネットの役割を担うものが、社会福祉だと言えるでしょう。
 例えば、重度の身体障害者が生活する『身体障害者療護施設』でも、その障害者本人や家族の収入などに合わせて生活費の負担がありますが、収入のない人は非常に低価格で利用することができます。特養ホームは、入所者に対する介護サービスに対して介護保険を利用する介護保険施設の一つですが、その基礎は老人福祉施設です。それは、身体障害者や知的障害者の福祉施設、児童養護施設などと同じ部類に属するものなので、高額の社会保障費が投入され、その利用料が安くなっているのです。

 これが、制度の原理・原則から見た現在の介護保険と老人福祉の役割の違いです。
 しかし、『社会保険と社会福祉の違いわかったけれど、何か腑に落ちない?』と首をかしげる人は多いでしょう。それは、高齢者施策の根幹である、この社会保険と社会福祉の役割、つまり介護保険と老人福祉の役割が、大きく混乱しているからです。


課題③に続く