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サービス付き高齢者向け住宅の貧困ビジネス化を防げ  2014/10/01

 関西以外の方はご覧になっていないだろうが、先日、NHKの「関西熱視線」(関西版のクローズアアップ現代)に出演こともあり、サ付住宅の貧後ビジネス化に関する相談や情報が、これでもか・・というぐらい、たくさん集まってくる。
 ① 毎日デイサービスに行かされる
 ② デイサービスに行きたいと言っても、ブラン化されない。
 ③ 併設の訪問介護サービスしか、使わせてもらえない。
 ③ ホームヘルパー受けてないのに受けたことになってる。
 ④ 必要のない医療を受けさせられる。
 ⑤ 区分支給限度額の全額(またはそれに近いサービスが組み込まれている)
 悪いところはなくても、入居者は内科、歯科、眼科の訪問診療は必須という事業所もあるらしい。

 述べたように、この問題の本質は、サ付住宅のビジネスモデルにある。



 介護付有料老人ホームと違って、サ付住宅は安いというイメージが強いが、そこにはからくりがある。家賃や管理費、食事・安否確認、相談援助などの利用料を安く設定することによって、入居者を集め、その差額を併設した訪問介護や通所介護の利用推進、また系列や提携した医療機関からの訪問診療の紹介料などで利益を出すというビジネスモデルだ。これを一般的な用語で「囲い込み」という。
 高齢者住宅事業の中心となるのは、人件費、建設費などの固定費であり、運営コストをカットすることは容易ではない。一事業所あたりの定員も限られるため薄利多売商品とは正反対のビジネスモデルである。有料老人ホームからサ付住宅と制度上の名称が変わるだけで、月額費用がかわるはずがないことは、少し考えればわかる。
 近くのワンルームマンションの家賃がいくらだろうか。特養ホームと同じ建物基準、サービス内容で介護付有料老人ホームを作れば、その月額費用は確実に30万円を大きく超える。民間企業で、バリアフリーの居室、食堂やスタッフルームなど広い共用部、一日3食の食事サービス、24時間の安否確認や相談サービスを提供し、介護保険の一割を含め20万円以下に抑えることなどできるはずがない。
 入居者の利便性や安心を高めるために、訪問介護や通所介護を併設することや、医療ニーズの高い高齢者のために医療機関と適正な提携を行うことは悪いことではない。しかし、それを入居者や家族の意向を無視して、半ば強制的に利用させるというのは、明らかな違法である。学生マンションの一階にコンビニエンスストアが入っていれば便利ではあるが、そのマンションに入居した学生は、そのコンビニの商品しか買ってはいけない、毎月一定額必ず買わなければならいということになれば本末転倒だ。また、今回の場合、その原資は介護保険や健康保険などの社会保障費である。個人契約ではなく、社会保障費の搾取、詐欺という問題になってくるのだ。
 正直、安いサ付住宅の大半で、このビジネスモデルを採用している。中小企業や違法な無届施設だけでなく、「あの大手でも、そんなことをしてるのか」という驚くことも多い。入居者の負担は安いかもしれないが、それは貧困ビジネスと全くシステムとしてなんら変わらないのである。

 原因は、制度の不備、安直な事業者の急増などたくさんあるが、問題の本質は、ケアマネジメントの独立性が担保されていないことにある。
 介護保険制度の根幹は、「ケアマネジメントの独立」「入居者の介護サービス自己選択」である。
 要介護度は、要介護高齢者に必要なサービス量を段階的に判断するものであり、同じ要介護度であっても、その高齢者の生活環境、身体状況、直面する課題、本人の希望等によって、「どうすればその高齢者が最も安全・安心・快適に生活できるか」「そのためにどのような介護看護サービスが必要になるのか」は、一人ひとり異なる。個々の入居者の要介護状態や生活ニーズに合わせて、長期的目標を立て各種介護サービス等の調整を行うのがケアマネジメントである。
 以下の表に示したようにケアマネジメントは、介護看護サービスを機械的に当て込む作業ではない。入居者がもつ生活課題や不安に寄り添い、その人らしく生活できる方法を入居者本人や家族と一緒に考え、その目的が達成されるように計画・実践し、その結果についてモニタリングする過程すべてを指すものである。
 しかし、多くのサ付住宅で、このケアマネジメントが全く適正に行われていないのだ。


 ケアマネジメントの独立を拒み、不正が横行している原因は大きくわけて二つある。
 一つは、サ付住宅や有料老人ホームなどの高齢者住宅では入居者が弱い立場にありケアマネや事業者の意向を無視できないということだ。自宅で生活しているときは、介護保険も医療保険もそれほどのようしなかったのに、高齢者住宅に入居すると、サービス量が急増し、健康保険もたくさん使うようになったという人はとても多い。また、ケアプランの内容と実際に受けたサービスが違っていても、退去を求められると行くところがなく、困るので言いだせないという人も少なくない。「入居者との契約によって」「印鑑をもらっている」という事業者は多いが、十分な説明を行わず、情報量が偏っている中で、同等の公平な環境の中で行われない契約は、適切で有効なものだとは言えない。
 もう一つは、そこで働くケアマネも会社の意向を無視できないことから、会社が儲かるようにケアプランを立てさせられているということ。ケアマネジャーは専門職と言えども、その事業者に雇われている会社員であり、どこまで指揮命令に従わなければならないのかが難しいところだ。ただ、もちろん、その専門性やコンプライアンスを無視して、盲目的に従わなければならないわけではない。

 金額的に見て、どのくらいの不正が行われているのだろうか。
 今、サ付住宅と住宅型と無届施設も合わせて、30万~35万床くらいだろうか。
 要介護高齢者の区分支給限度額を全額利用させるだけでなく、不必要に受けさせられる医療保険の無駄も相当のものになっている。特に、生活保護の高齢者は一割負担もなく、入居者から文句がでないので、やりたい放題というところもある。少なく見積もって半数の15万床、低く見積もって10万円/月の社会保障費削減としても、一ヶ月150億円、年間にすると1800億円。特養ホームや介護付有料老人ホームの入居者や家族の意向を無視して適用されている医療費を含めればもっと高額なものとなるだろう。社会保障費が足りなくなるのも、無理はない。

 最近多いのが、ケアマネジャーさんやヘルパーさんからの相談だ。
 「こんなことしてて良いんでしょうか」「法律的に大丈夫なんでしょうか」というメール等で相談が寄せられるが、よくないということはわかっていても、詐欺に加担しているという意識はないようだ。
 しかし、ホームヘルパーが、実際に提供したサービスと違うものに「このサービスを提供しました」と印を押せば社会保障の不正受給、詐欺に加担していることになる。ケアマネジャーも適切にサービス提供されていないことを知りながら、給付管理票を作れば、同罪である。
 厳しく監査されれば、ヘルパーもケアマネも資格取り消しとなる。
 更に、会社だけでなく、不正を行った個人が社会保障費の返還を求められたり、詐欺罪で訴えられることもあるし、事業者から書面で指示されたわけではないため、経営者が居直り「ヘルパーやケアマネが勝手にやった不正行為で、事業者に損害を与えた」と、逆に訴えられる可能性もある。
 更に、ケアプランの指示通りにサービス提供していないときに、転倒などの事故が発生して入居者が亡くなれば、業務上過失致死となる。もちろん、契約義務違反で入居者や家族から数千万円の莫大な損害賠償請求されることになる。
 脅しているわけでも、大げさに言っているわけでもない。問題が発生した時に、このような明らかな不正を指示するような事業者が守ってくれるとはとても思えない。事業者や経営者の指示に従った、仕方なかったと言っても、ケアマネやホームヘルパーは有資格者、専門職者であり、その責任は非常に重いのだ。優良な事業所はたくさんある。そんな明らかな不正を行っている事業者、経営者のもとで働いてはいけないのだ。

 特に、一般の訪問介護の給付管理や実務は、相当いい加減なものとなりつつある。介護保険制度に従って、通常の訪問介護を行えば、ホームヘルパーひとりで、一時間に二人しか介護できない。スタッフコールが鳴っても、他の入居者が呼ばれても、他の仕事が詰まっていても、そこから動いてはいけない。本当にそうしようとすれば、介護付有料老人ホームの何倍ものスタッフが必要となり、利益をあげることなどできないのだ。

 この問題を解決するのはそう難しいことではない。それは、ケアマネジメントの独立性、つまりケアマネジャーがその独立性を担保できるシステムを構築することだ。
 一つは、もちろん優秀な独立型ケアマネを増やすために報酬を上げること。ケアマネジャーの報酬は低すぎるため、独立開業することは容易ではない。そのため、訪問介護や通所介護、高齢者住宅といった本体と一体的に運営されていることから、このような不正利用が横行することになる。経験年数の高いケアマネジャーの独立を支援できるような報酬体系にしなければならない。
 もう一つは訪問調査と同じように、最初のケアプラン(プラス できれば定期的に)は、併設ではなく独立ケアマネに策定させることだ。そうすれば、ケアプランに対するスーパーバイズの機能が働くはずだし、新人ケアマネのケアマネジメントのレベルも上がる。合わせて介護保険も医療保険も相当、効率的、効果的に削減ができるはずだ。ケアマネジャーそれぞれの資質や倫理に依存するのではなく、仕組みとしてできない方法を考えなければならない。介護保険以外に、独立ケアマネひとりあたり、プラスで10万円くらい出しても、その数百倍、数千倍の効果があることは明らかだ。

 現在、高齢者住宅な集合住宅に対する集中減算の検討が行われているが、これでのように30名未満といった意味不明な基準にすると、集合住宅としての効率性を損なうだけだ。また介護保険だけをターゲットにしても、複数の医療機関、診療科の訪問診療を入れて対応するという事業者が増え、いたちごっことなり、全く意味をなさない。もちろん、併設のサービスを使ってはダメだということでもない。
 入居者にとっても適切なサービスが提供され、かつ不透明な介護保険、医療保険を削減するためには、その根幹であるケアマネジメントを独立させることが、最も簡単で単純で効果的な手法だ。
また、外部の目が入ることで、閉鎖的な環境を打破することができる。年に一度程度、行政が書類上のチェックをするだけでは何の意味もない。定期的に外部のケアマネが入れば、身体拘束や虐待はなくなるだろう。行政も独立型ケアマネからの相談や報告を受ければ、その事業者の日常が見えてくる。