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制度外ホームで「拘束介護」約130人~朝日新聞デジタル~  2014/11/09

 体の弱ったお年寄りが暮らせる住まいが圧倒的に不足しており、制度も追いついていない。特別養護老人ホームへの入居待ちは、全国で50万人を超える。行き場のない高齢者が制度外のホームに流れている。その一つで、徘徊(はいかい)や事故を防ぐためだとして、約130人の入居者がベッドに体を固定されるなどの「拘束」状態にあった。こうしたホームは行政の目が行き届かず、高齢者の尊厳が侵される恐れがある。
 朝日新聞デジタルが、東京都北区にある制度外ホームで、入居者の内、約130人が身体拘束されていると報じている。医療法人が運営している有料老人ホームの届け出もサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の登録もしていない無届施設で、身体拘束が行われているというものだ。
 この人たちは、この劣悪な事業者の社会保障費の搾取の仕掛けとして、死ぬまでベッドに括りつけられ、劣悪な環境、生き地獄の中で生活することになる。これだけ惨い事例にもかかわらず、事業者に対する罰則もなく、表面的な指導が行われるだけで、そのまま続けられることになるだろう。
 もちろん社会的弱者をターゲットとした貧困ビジネスとも言うべき社会保障を搾取するこの手の悪辣な事業者にも憤りを覚えるが、同様に感じるのが、この手の記事を取材している新聞社やマスコミ関係者が、あまりにも不勉強なことだ。

 最近、新聞や週刊誌、テレビなどのマスコミから、サ高住など高齢者の住まいの問題についての取材を受けることが増えてきた。彼らが直接的、間接的に求めるのは、「ひどい事例、ケースを教えてくれ」という事件記者的なものが多いが、ほとんどの人が根本的な制度や政策について、全く勉強、理解していないことに驚く。 耳目を引くために事例やケースを上げるということは大切だが、制度や問題の本質がどこにあるのかを全く勉強せずに、表面的にこんな劣悪や事業者や事例をニュースにしても、何も意味もない。その背景にあるのは何か、なぜこんな非道なことがまかり通っているのか、どこに制度的欠陥があるのか・・ということを伝えなければ意味がない。
 このような明らかな虐待や不正行為を行っている施設に対しても、
「身体拘束がありました。スタッフは転倒すると危ないので仕方ないと言っています」
「有料老人ホームには該当しない。適切にやってます」
 と言った、事業者サイドのコメントを載せるだけで、記事からは何が言いたいのか、何が論点なのかさえ見えてこないし、事業者に対する憤りも感じられない。それは何も勉強していないから、何もわからないからだ。もし仮に、そのような人権侵害のような身体拘束や、劣悪なサービスが合法的でそれ以外に方法がないというのであれば、それこそ大問題ではないだろうか。それでも合法的か否か、制度がどうなっているのかわからないために、「ひどい話ですよねぇ」というだけで、それ以上に踏み込んでいけない。厳しいようだが、まったく勉強せずに、取材をするために、このような重大な人権侵害や社会保障の搾取を行っているような事業者に対しても、中学生が取材に行ったような表面的な記事になるのだ。
 先日も、ある新聞社の記者から、「施設から在宅への流れについて問題があると思っていますが、どう思われますか?」といった質問を受けたが、「あなたのいう施設とは何ですか、在宅とは何ですか」という基本的な用語でさえ答えられない。施設と在宅という言葉の定義がないのに、何が問題なのか、どう答えれば良いのだろうか。
「特養ホーム 50万人待ちなので特養ホームが大切だ」などと言うことは、中学生でも言えるが、財政的な問題や、福祉の公平性、現在の特養ホームや社会福祉法人を取り巻く諸問題などを考え合わせれば、そう単純ではないことがわかる。 制度外ホームって何でしょう。 拘束介護って何でしょう。
 社会保障の課題や高齢者の住まいの課題について、目を向けていただくのはありがたいが、「福祉の充実」「社会保障は重要だ」というのであれば、老人福祉とは何か、介護保険とは何か、社会保障制度、高齢者の住まいの制度はどうなっているか、もう少し勉強してから記事を書いてほしいと願わずにはいられない。