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2015年 介護報酬改定についての所感 (2) 2015/02/3


 前回、2015年の介護報酬改定は、茶番であると書いた。
 しかし、もちろん厚労省、財務省ともに、このままで良いと思っているわけではないだろう。何とかして、社会保障費の伸びを抑制していかなければ、早晩制度がもたなくなることは明らかだからだ。この問題は、介護保険制度を経営環境における「制度変更リスク」と経営的な視点で見るのか、「介護報酬はこうあるべき」と学者的に考えるのかによって、論点は変わってくる。
 前者に立って、今回の介護保険制度の改定から何が読み取れるのか、考えてみたい。

 よく聞かれるのが、「介護報酬はどの程度まで下げられるのか」「次も下がっていくかのか」ということ。
 テレビやマスコミなどでも、「2%下げる」という数字ばかり注目されがちだが、もちろんこれは、すべてのサービスが一律に2%下がるというものではなく、報道の仕方としても、その受け止め方としても、あまりにも感情的である。仮に、「2%アップ」となっても、下げられるところはあるはずで、各サービスの報酬が上がるか下がるか、それがどの程度か、それは何故かということを注視しなければならない。
 ただ、介護報酬の削減ということだけでは、介護保険支出の抑制効果には限界があり、また、実体以上に、「介護スタッフ不足」に対するアレルギーとリンクして報道されるため、この先、それほど大きくダウンすることはないだろうと思う。

 考えられる、方向性としては二つある。
 方向性の一つは、制度の歪みの修正。
 例えば、社会福祉法人と民間の介護サービス事業者との役割の明確化。前回述べたように、通所介護でも、社会福祉法人と民間法人とでは、経営環境もそれぞれの役割も全く違うが、これが同一の報酬で行われていることには矛盾が生じている。
 特養ホームのあり方についての修正も行われるだろう。これ以上、待機者の増加に合わせて特養ホームを作りつづけることは、その制度矛盾を拡大させ、社会保障財政の悪化にしかつながらない。民間の高齢者住宅と老人福祉施設との役割を明確にし、緊急避難施設やショートステイなどに振り分けることにより、在宅介護の促進及び、介護報酬の大幅な抑制をすることができる。
 もうひとつ、ケアマネジメントの独立性やチェック体制の強化なども課題となるだろう。無届施設や一部サ高住などで、行われている無駄な介護サービスや医療の押し付けをどこかで止めなければ、貧困ビジネスが拡大することになる。その他、高齢者住宅に対する区分支給限度額の見直しなども議論されることになるだろう。

 もう一つの方向性は、サービスの利用抑制。
 原点に戻ると、これからの介護保険制度の課題は、カネとヒト、つまり「介護保険支出の抑制」「介護労働者の効率的配分」である。それにもっとも効果的なのは、不必要な介護サービスを使ってもらわないようにすること、もう一つは、払える人には、自己負担をたくさん払ってもらうということだ。
 もちろん、今回の報酬改定の中に、その船首部は組み込まれている。
今回の改定の一つの目玉は、二割負担の導入。費用負担の効率化の観点から、一定以上の所得者の利用負担を2割に上げることが決まっている。これとリンクしているのが、特養ホームで行われる「1000万円以上、預貯金のある人は第四段階」という話で、前年度収入だけでなく、その人の金融資産も含めて、減額するか否かを決めようという流れだ。二割負担の対象となる人は、20%程度ということになっているが、加えて、「預貯金1000万円以上の人も二割負担」となると、その割合は一気に増えることになる。現在は、高額介護サービス費で上限が決まっているが、早晩、これも段階的に見直されることになるだろう。

 一割負担が二割負担になるということは、現在、2万円負担している人が、4万円(高額サービス費があるので、今は37200円)になるということ。それは利用者にとっては、消費税が8%から10%になるというレベルの話ではない。ケアプランの策定においても、「うちは25000円までしか払えません」「デイサービス、週二回を週一回にしてください」という利用者や家族が増えるだろう。それは要介護高齢者にとっても、家族にとっても、社会保障制度としても厳しいものであるが、今回の改定を見る限り、その方向性で進む可能性は高い。
 もちろん、事業者にとっても大きなリスクである。数%のダウンどころではない。家賃は食費を下げて、限度額まで使うことが当たり前、介護報酬で食っているようなサ高住は、相当のダメージを喰うことになるだろうし、恐らく、小規模のデイサービスも、つぶれるところが増えるだろう。
 もちろん、そうなるのかならないのは、まだ先の話でわからない。異論反論、たくさんあるだろう。ただ、経営者は、その時に、生き残っていけるか、「他のサービスを削っても、それでも2回行きたい」「自己負担が二倍になっても利用したい」と選んでもらえるだけのサービスが提供できるか、今から考えて置いた方が良い。