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「イリーゼ浦和大門」の入浴死亡事故について(1)     2017/1/7


 また、悲しい入浴死亡事故のニュースが飛び込んできた。
「長谷川介護サービス」が運営を行っている「イリーゼ浦和大門」で、要介護5の女性入居者が入浴中に亡くなったという。
「浴室内は付き添いの職員3名に対して、女性を含め7名が入浴」
「女性を介助していた職員が、別の入居者2人を介助するために離れた」
「目を離した数分の間に事故が起きた」
「さいたま市の介護保険課は、本来入所者1人に職員1人が付き添うのが好ましい。規則に違反したわけではないが、同ホームも職員数が少なかったという認識は示していた」と話している。


 入浴は高齢者にとって最も事故が発生しやすい生活行動の一つであり、マンツーマン介助が基本であり、「7人の入浴で3人」というのは少し異常だ。記事の通り、担当していて目を離した介護スタッフは業務上過失致死に問われる可能性もある。忙しいとはいえ、リスクマネジメントの意識の乏しい経営者の元で働く職員は本当に気の毒だな・・とニュースを読んでいた。
 しかし、記事の中にある「住宅型」との文字に驚いた。

 これって、どういうことなんだろう・・・・

 「介護付ではないけれど、訪問介護事業者か併設されています」
 「介護付ではありませんが、二四時間三六五日、ホームヘルパーが常駐します」
 と言われると、「住宅型でも介護付と同じようなサービスが受けられるんだな…」と思う人は多いが、その二つの介護サービスの範囲、提供方法は全く違う。
 一般型特定施設の指定を受けた介護付有老ホームの場合、介護看護スタッフは、ケアプランに示された介助内容に基づいて、介護看護サービスを提供する。一方の区分支給限度額方式の訪問介護では、ケアプランには内容だけでなく介護時間も厳格に指定されている。



 例えば、介護付有老ホームの場合、Aさんの入浴介助が終われば、次のBさんの入浴介助に向かうことができる。入浴介助は、その高い事故リスクを考えるとマンツーマンが基本だが、「3人で7人の介助」をしていても、介護報酬の不正請求だとまでは言えない。食事介助などは、一人の介護スタッフが複数の介助を行っているのが一般的だ。
 これに対し、住宅型の区分支給限度額方式の訪問介護の場合は、「Aさん 入浴介助 一〇時~一〇時三〇分」と介助内容だけでなく、介助時間が明確に指定されており、この時間を厳格に守る必要がある。入浴介助が終わっても、次のBさんの介助を行うことはできない。
 それは、介護報酬の算定方法が違うからだ。
 一般型特定施設の場合、「一日〇〇単位」と、日額で包括的に算定されている。「どの介護、どの時間がAさんのもの」という規定はない。特養ホームや老健施設、グループホームなども同じ。これに対して、区分支給限度額方式では、Aさん個人の利用限度額を使って、Aさんと個別に契約した時間、内容で介護サービスを提供するという方式だ。介護報酬も「三〇分の身体介護」とその報酬単価が明確に定められている。そのため、その介助内容だけでなく、「三〇分」という時間を厳格に順守する必要がある。
 つまり、住宅型の訪問介護の場合「マンツーマンが望ましい」のではなく、マンツーマンでしか介護報酬は請求できないのだ。

 この事業者のケアプランってどうなっているんだろう・・・・
 この事業者はどうやって介護報酬の請求をしているんだろう・・・・


 色々と考えて見たけれど、このニュースが正しいとすれば、これは介護事故というだけでなく、介護報酬の不正請求ではないのだろうか。
 このような低価格の住宅型有料老人ホームやサ高住では、このようなケアマネジメントや介護保険制度の基礎を無視した運営が日常的に行われているのだろうか。それとも、介護報酬の請求を全くせずに、すべて自費やボランティアで介護をしているのだろうか。
 埼玉新聞やテレビ埼玉などのマスコミが「住宅型」も「介護付」の違いを理解していないのは仕方ない。
 しかし、さいたま市の介護保険課が「規則違反ではないが・・」と言っている理由がわからない。定期巡回随時対応型でもこんな介護や報酬算定はできない。
 それとも、さいたま市も不正を黙認しているのだろうか。

 そもそも、高齢者住宅に対する介護報酬に、「介護付」「住宅型」に分けることに全く意味はないのだが、その根幹となるケアマネジメントや報酬算定まで、このようないい加減な運用が日常化しており、それが原因で死亡事故が発生するなど論外である。

 本当に、これでいいのだろうか介護保険。

「イリーゼ浦和大門」の入浴事故について(2)」