HOME > ニュースを読む 本質を知る 情報を活かす

「外国人技能実習制度」の介護労働参入について (上)     2017/1/15


 ある土曜の朝、NHKの情報番組で「介護スタッフが不足するのはどうしてか」「なぜ離職率が高いのか」というテーマで議論が行われていました。アナウンサーから「オムツの介護が大変だから」「特に夜勤帯の排便の失敗の対応に困っています」という介護労働者のコメントが紹介され、渦巻き状の排便のイラストを張り付けながら、「このように介護の仕事は大変ですが、介護報酬が低いのです」といった分析でした。
 「社会問題を深く読み解く」という趣旨の番組。
 悪意はないのでしょうが、「汚い仕事なのに、給与が安くて大変ね」「介護の仕事は立派な仕事なのにね」というおためごかしのネガティブキャンペーンをしているようなものだと、半ばあきれ、半ば怒りで見ていました。そして、それと同時に高齢者介護という仕事は、社会的にはまだこの程度の認識なのだと、あらためて大きな衝撃を受けました。
 同様の論調は、テレビだけでなく、大手新聞でも週刊誌などでも同じです。
 介護労働を語るとき、このような表面的で、主観的、感情的なイメージだけの議論となるのは、そこに「介護の専門性」という視点がすっぽり欠けているからです。

 この介護という仕事の専門性を軽視しているのは、マスコミだけではありません。
 昨年の11月、「外国人技能実習制度の適正化法」が自民、民進などの各政党の賛成多数で衆議院議員を通過しました。その本来の目的は開発途上国から産業育成の担い手となる人材を受け入れ、日本の進んだ技能・技術・知識を習得してもらおうというものです。これまでは建設業、製造業、農漁業などが対象だったのですが、今回の法律改定でこれに介護が加えられました。
 「介護は日本人がすべき」「外国人には無理だ」というわけではありません。
 ケアマネジメントや個別ケアを基礎とした、日本の先進的な介護を外国の方に学んでいただくのは良いことです。少子高齢化が進む中で、その一部を外国の方にお願いすることも検討すべきかもしれません。
 しかし、多くの人が指摘しているように、この制度は表面的には「実習・教育」であっても、実際の目的は「安い外国人労働力の確保」という、まさにご都合主義の制度です。
 実際、現在、行われている建設や製造などの分野においても、専門的な実習制度とは名ばかりで、一部では単純労働で外国人を酷使しているといった問題が指摘されています。
 それは想定されたことで、「労働力の確保」として受け入れるのであれば、最大三年(一部、改定で例外的に五年)しか働けない人に、時間や手間をかけて、専門的な教育を施すことなどとてもできず、機械的な「単純労働」をさせる以外にないからです。

 更に問題は、一部の介護経営者も、介護の専門性を理解していないということです。
 介護業界は、介護保険制度以降の新規参入事業者が多いのが特徴です。そのため、大手・中小を問わず、ケアマネジメントや介護の実務について理解しないまま、「高齢者がふえる」「介護はもうかりそうだ」と安易に参入した素人経営者が少なくありません。
 特に、高齢者住宅業界では、無理な低価格化が推し進められたため、その負担が介護労働者にかかり、過重労働やストレスによる、介護事故や介護殺人などのトラブルが増加しています。中には、介護スタッフやケアマネジャーに介護保険の不正請求の片棒を担がせるような劣悪な事業者もいます。新しい介護労働者が入らないため、その過重労働に耐えられず離職者が増えるという悪循環が続いています。

 高齢者介護は、もちろん楽な仕事ではありません。
 身体的にも精神的にも厳しい仕事です。
 その専門性を考えると、決して恵まれた待遇にあるとは言えません。
 ただ、実際に介護事故などが多発する事業所や、離職率の高い事業者の話を聞くと、それは介護の仕事が大変なのではく、その事業所、法人の体質が問題というケースがほとんどです。サービス管理や事故リスクへの対応が行われず、介護スタッフが悲壮な表情で走り回っている様子が手に取るようにわかります。管理者や施設長なども名ばかりで、給与も安く、営業マンか使い走りのような人も多くみられます。
 「人に役に立つ仕事がしたい」「優しい介護がしたい」と熱意をもって介護の仕事を始めても、サービス管理もリスク管理もできない素人経営者に、その意欲がすりつぶされているのです。

「外国人技能実習制度」の介護労働導入について(下) に続く