なぜ老人ホームや高齢者住宅について、知っておく必要があるのか。
 それは老後の生活を考えるうえで、重要な選択肢であるというだけでなく、経営悪化による倒産や、事故や虐待などのトラブルが増えているからです。
 今から、18年後の2035年には、85歳以上の高齢者が現在の二倍、1000万人を超えることがわかっています。また、その多くは独居高齢者です。認知症や寝たきりなど、自宅で生活できない重度要介護高齢者が本格的に激増するのは、まさにこれからです。
 一方で、2016年度の介護サービス事業者の倒産件数は初めて100件を超えました。廃業や登録取り消しの申請をしたサービス付き高齢者向け住宅は263件に上ります。事業計画の甘さ、介護スタッフ不足など、さまざまな要因が重なり、事業者の倒産や廃業がさらに増えることは確実視されています。

 今後、倒産・トラブルが激増する理由は大きく分けて二つあります。
 一つは、制度の混乱です。
 民間の高齢者住宅には、「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」の二つの制度がありますが、その違いは説明できても、なぜ二つの制度が必要なのかは、誰にも説明できません。
 これは、「介護付」「住宅型」も同じです。これは介護保険の利用方法の違いを示すものですが、なぜ2つの報酬体系に分かれているのか、役割も意味も明確ではありません。
 この二つの制度の歪で、指導監査体制は崩壊し、無駄な数千億円規模の無駄な社会保障費が垂れ流しになっています。

 もう一つの理由が、「素人事業者」の激増です。
 飲食店であれ、美容院であれ、不動産業であれ、どのような業界、産業でも、一定期間、同じ業界でその知識や技術を蓄え、経営ノウハウを学んでから独立、参入するというのが普通です。
 しかし、この業界には、介護に関する知識も経験も、経営ノウハウもなく、異業種、他業種から「需要が増える」「高齢者住宅は儲かる」と安易に参入してきた人たちがあまりにも多いのです。誰でも簡単に経営できると思っているのです。
 その無知に付け込むデベロッパーや悪徳経営コンサルタントも少なくありません。人口減少や空き家・空き地の増加による「遊休土地」の利用を謳い文句に、「介護は儲かります」「補助金が出ます」「需要はますます高まります」「まったく心配はいりません」と素人経営者を煽ります。
 そうけしかける彼らもまた、介護ビジネス、高齢者住宅の素人です。目的は「安定経営」「質の高いサービス提供」ではなく、「建設してもらうこと」ですから、開設後は「あとは野となれ山となれ」と、ほったらかしです。

 デベロッパーや建築のコンサルタントが作った事業計画、収支計画を何度か見たことがありますが、実際に運営していた人間から見ると、寒けを覚えるようなレベルのものです。
 ラーメン店の出店計画に例えると、
 「1人20分程度の食事時間だから、1時間に3人入店」
 「客数20席あるので、1時間に60人、10時間経営で600人」
 「だから、800円×600人で、1日の売り上げ予想48万円」
 「まぁ、100%稼働ではなくても、40万円は堅いだろう」
 といったレベルのものです。
 誰が見ても、「そんなうまくいくわけない」と思うでしょう。
 大げさに表現していると思うかもしれませんが、本当にこのレベルです。

 しかし、高齢者住宅事業では、「要介護高齢者は増える」「高齢者住宅が足りない」と過剰な期待の中で、「そんなうまくいくはずない」「リスクもあるんじゃないか」と誰も考えないのです。「ワタシは事業者ですか? 単なる家主のつもりですけど?」と平気で話す責任感のない経営者も少なくありません。「介護が必要になっても安心・快適」と謳いながら、「ケアプラン?ハテ、それ何でしたっけ?」という事業者も多いのです。

 このような話をすると、「民間の高齢者住宅、老人ホームは怖い」というイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、きちんと知っていていただきたいのは、質の高い有料老人ホームやサ高住もたくさんあるということです。
 高齢者住宅は、事業者が激増してきた「玉石混淆」の時代から、淘汰、二極化の時代へと入っているのです。ですから高齢者や家族は、サービスの質の高いプロの事業者か、もしくは口先だけの劣悪な素人事業者なのかを、しっかり見極める必要があるのです。

「良い老人ホーム、高齢者住宅を教えてほしい」
「サービスの質の高い老人ホーム、高齢者住宅を教えてほしい」
 という相談はおおいのですが、実は「良い老人ホーム」というのは、入居時の年齢、要介護状態、資産内容、サービス内容などによって一人ひとり違います。
 ですから、高齢者住宅選びの基本は「口先だけの素人事業者を選択肢から外す」ということがまず重要になるのです。

 本書は、単純な「高齢者住宅の選び方、探し方」ではなく、「プロの事業者」と「素人事業者」の見分け方に重点を置いています。
 全国展開をしているような大手介護企業でも「素人事業者」はありますし、単独の有料老人ホーム、サ高住でも質の高いプロの事業者はたくさんあります。
 本書を読んでいただいたあとには、「高齢者住宅」を正しく見極められるようにきっとなっているはずです


「老人ホーム 大倒産時代の備え方」
   ~高齢者住宅を正しく見極める~ 


序 章 いまなぜ、老人ホームや高齢者住宅について知っておくべきなのか
第一章 高齢者住宅選びに必要な基礎知識を整理する
第二章 「安心・快適」の美辞麗句に惑わされず「素人事業者」を見極めよう
第三章 高齢者住宅の品質・ノウハウを見抜くポイントはここだ
第四章 押さえておきたい高齢者住宅選びでの家族の心がまえ

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