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社会保障制度 抜本的改革の論点 Ⅰ ~必要性・緊急性~

 また、選挙になった。
「連立の枠組みが変わったとはいえ、さすがに解散総選挙多くないか…」
「宗教票目当てに、主張を全面的に変える政党・政治家ってやばくないか…」
 それぞれ、様々ご意見はおありだろう。

 高市総理と言えば、対中国戦略、スパイ防止法など、外交・安全保障問題が注目されがちだが、今回の選挙のテーマ、解散の目的はそれだけではない。
 少子高齢化、勤労世代と85歳以上の後後期高齢者のアンバランスが拡大する中で、喫緊の課題となっているのが、社会保障制度の改革だ。今回の選挙では、経済対策として、与野党ともに「食品への消費税率ゼロ(期限付き)」「社会保障費の引き下げ」などの手取りを増やす政策が、公約として掲げられているが、いずれも社会保障制度の抜本的な改革なしには、成し遂げられない。
 ここでは、選挙後の「抜本的な制度変更」とは何かを考えるに当たって、短期保険である医療介護制度を中心に、数回にわたって、現行制度の根本的な課題とその論点について、整理したい。

 社会保障と経済は社会の両輪であることが知られている。
 医療介護年金などの社会保障制度が充実すれば、怪我や病気、老後などの不安を抱えずに働くことができ、それによって経済が活性化、社会保険料の増加によって、社会保障制度の安定につながるというメカニズムだ。世界に冠する「国民皆年金皆保険」という優れた社会保障制度が、勤勉な日本人の性格とも相まって、高度経済成長を支えた一助になったことは間違いない。

 しかし、いま、その歯車は逆回転している。
 高齢者の増加によって医療介護の保険支払いが増加、それを支えるために税金や社会保険料が値上げされ、経済活動に資金が回らず、税収や保険料収入が低下、更に行財政、社会保険財政が悪化するという悪循環を生んでいる。この重い税・保険料負担は、特に子育て世代を直撃しており、それが婚姻率、出生率の低迷を招き、日本社会のメカニズムそのものに多大な悪影響を及ぼしている。

 この2026年はまだその入り口でしかない。
 この「経済と社会保障」のアンバランスは、勤労世代の「20歳~64歳人口」と、要介護発生率、医療費が一気に高くなる「84歳以上の後後期高齢者」の対比で見ることができる。2020年は、勤労世代11.3人で一人の後後期高齢者を支えていたのに対し、2040年には5.77人、2060年には4.03人と三分の一となり、少子化が続けば、2080年代からは3.4人で固定化する。(将来人口推計より)


 現状の医療介護制度をそのまま維持しようとすれば、単純計算だけで、勤労世代や企業が負担する保険料、各種税金(所得税・消費税・住民税)は今の1.5倍~2倍になるということだ。
 「日本はどれだけ借金しても大丈夫、バランスシートを見ろ」という人がいるが、その人に「いまの社会システム、社会保障システムは、これから100年先まで維持できるのか」と聞いてみればよい。「日本が財政破綻などするはずがない」「医療介護は社会保険だから潰れない」と豪語する人もいるが、この医療介護費の増加で真っ先に破綻するのは、市町村などの基礎自治体だ。
 すでにその破綻予備軍は、小規模市町村だけでなく、中核都市、政令指定都市にまで広がっている。長期的な視点から経済と社会保障のアンバランスの修正、つまり医療介護制度の抜本的改革を行わなければ、日本の社会システムは五年後には土台から破綻するところまできているのだ。

 税金を原資とするものであれ、保険システムを土台するものであれ、またどれほど高邁な理念を掲げたとしても、社会保障制度の土台は「支えられるもの」と「支えられるもの」のバランスによって、その負担・給付が制限されることは言うまでもない。
 年金制度は長期保険であるため、痛みの少ない長期的な変革が可能だが、医療介護保険は短期保険であり、毎年、その収支を合わせていかなければならない。
 少子高齢化によって、そのアンバランスが拡大することは平成に入ったころからすでに認識されていたが、「社会保障制度に手を付けると、高齢者票が減り選挙に負ける」「利権団体からの政治献金が減る」という政治家の目先の利得によって、その声はかき消され、先延ばしにされてきたのだ。

 人口アンバランスによって生じる社会保障の制度改革を後回しにしたまま、ばらまきの経済対策をカンフル剤のように行っても、それで一時的に税収が上がっても、その効果は長続きしない。
 すでに保険料の値上げは限界にきており、介護報酬・診療報酬を上下させたり、一部高額所得者の自己負担割合を上げたり、高額医療介護費の限度額を見直したりという、小手先の見直しでは対応できるレベルを超えている。抜本的な社会保障改革は、必要不可欠というだけでなく、極めて緊急性が高いことがわかるだろう。
 ただ、これは、「勤労世代の負担を抑えるために高齢者の医療介護費を削ればよい」と言う単純な話ではない。述べたように、「経済と社会保障」は社会システムの両輪であり、「医療介護費削減ありき」で、そのやり方を間違うと、子供・孫世代の介護離職やヤングケアラーの増加など、負のスパイラルを加速させることになるからだ。
 「抜本的改革が必要」と言った口先だけの話ではなく、現在の社会保障制度の根本的課題はどこにあるのかを整理し、その方向性をきちんと見極める必要があるのだ。
 まずは、「国保逃れ」で明るみにでた保険料や保険者そのものの課題から考えていこう。






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