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介護経営とは何か ~介護コンサルタントを選ぶ指針~

大手だけでなく、中小事業者でも、経営コンサルタント、介護コンサルタントを使う事業者・企業は増えています。民間の介護サービス事業者だけでなく、老健施設や特養ホームなど医療法人・社会福祉法人でも、コンサルティングを導入する動きが広がっています。

「優秀なコンサルタントとはどのようなものか・・・」
「どのような視点でコンサルタントを選ぶべきか・・・」
そう聞かれることは多いのですが、簡単に答えられる問いではありません。優秀なコンサルタントだからといって、すべての課題を解決できるわけではありませんし、実際、相談をいただいても、「わたしには力不足です」「他のコンサルタントに依頼されたほうが…」と、お断りせざるをえないケースもたくさんあります。
そもそも何かをもって優秀とするのかは、受け入れる経営者側がどのようなコンサルティングを望むのかという問題なので、「時間をかけて丁寧に課題を解決すべき」と提案しても、「すぐに実績を求める」というタイプの経営者には受け入れてもらえません。コンサルティングは、決まった形や中身がないため、経営者との相性、事業との相性に、大きく左右されるものなのです。
その上で、「信頼できるコンサルタント」とはどのようなものなのか…、その選択において、重視すべき視点・ノウハウとは何か…、その二つのポイントを考えます。

介護経営の目的は短期利益確保ではなく、長期安定経営

「介護サービス事業・介護ビジネスは儲かる」
「有料老人ホーム・サ高住などの高齢者住宅は利益率が高い」
そう思っている人は多く、そのように事業参入を唆すコンサルタントも多いのですが、それは間違いです。高齢者住宅、介護サービス事業は、公的な介護保険制度を土台とする営利事業という他に類例のない非常に特殊なものです。対象となる要介護高齢者が増えることは間違いありませんが、それを支える社会保障財政・介護人材の確保はどんどん難しくなっていきます。
「高齢者住宅は、どんな仕組み・ビジネスモデルの利益率が高いのか…」
「どのような高齢者をターゲットにすれば、医療介護報酬が一番とれるか…」
「重度要介護の囲い込み、医療依存度の高い高齢者、障害者も対象に…」
そんなことを聞いてくる経営者、それを売りにしているコンサルタントがたくさんいますが、制度の歪みや矛盾をついたビジネスモデルは極めて不安定だということを理解しなければなりません。現行制度で高収益が期待できても、「報酬を改定しよう」「規制を強化しよう」となった時点で事業は崩壊するからです。
ビジネスというのは王道しか残りません。特に、介護サービス経営は「高い短期利益」を上げることではなく、収支・サービスを含め長く事業を安定させることです。それが理解できていない介護コンサルタントのアドバイスは、短期的に利益が出たように見えても、長期的には経営を不安定にする可能性が高いのです。

介護経営の三要素 ~ケア・リスク・収支~

もう一つ、コンサルタント選びの重要な要素は、介護経営の成り立ち・要素を理解していることです。介護経営というのは、図のように「ケアマネジメント」「リスクマネジメント」「経営管理マネジメント」3つの要素で成り立っています。
ケアマネジメントは、個別ケア、科学的ケアの土台となるもので、介護サービスの品質の根幹です。ケアマネジメントはケアマネジャーの仕事だと思っている人が多いのですが、介護・看護だけでなく、生活相談、食事、家族連携まで業務の全てのスタッフ・サービスに関わってくるものです。ケアマネジメントの質が低いということは、サービスの質が低い、商品の質が低いということです。
リスクマネジメントは、安全な入所者・利用者の生活環境、スタッフの安全な労働環境整備の土台となるものです。転倒骨折などの介護事故や感染症、防災などの対策などが挙げられます。
そして、三つ目が「介護経営管理」です。スタッフ募集や人事労務管理、入所者利用者の確保、安定した収支の管理や介護保険制度など関連制度の理解などが挙げられます。

介護経営者の仕事、介護コンサルタントの仕事は「介護経営管理」だと思っている経営者・コンサルタントは多いのですが、そうではありません。図のようにこの介護経営管理は、ケアマネジメントやリスクマネジメントと一体的なものだからです。
例えば、ケアマネジメントと経営管理マネジメントの関係。
ケアマネジメントは個別ケアの手法ですが、同時に介護ビジネスの商品設計にも大きくかかわってきます。高齢者住宅の整備にあたって、どのような高齢者をターゲットとするのか、自立軽度要介護か重度要介護かだけでなく、身体介護か認知症介護か、また医療依存度の高い高齢者をどこまで受け入れるのか、そのためにはどのような介護システムが必要となるのか、医療看護師はどうするのか、建物設備設計のポイントもそれぞれに違ってきます。
リスクマネジメントと経営管理マネジメントも深い関係があります。
事業者として、介護事故に対する適切な対策ができなければ、事故やトラブルが増加し、家族から高額な損害賠償請求を受けたり、利用者からの感情的なクレームや苦情によって介護スタッフが疲弊し、大量離職によって事業の継続が困難になります。重大事故では介護スタッフ・ケアマネジャーが業務上過失致死傷に問われ、有罪になるケースも増えています。そんなリスクの高い職場で働きたいとは思わないでしょう。
いま、多くの事業所で、介護人材不足に陥っていますが、それは「介護報酬が低いから」という単純な話ではありません。介護サービスの土台となるケアマネジメントやリスクマネジメントを介護経営者が理解できていないため、商品設計も労働環境も不安定で劣悪だからです。「目先の利益だけで、商品・サービスの中身、介護労働環境には興味がない」という企業・法人に未来があるかどうか、考えればわかるはずです。

介護サービス事業を長期安定的に経営し続けるには、「一気に入居率がアップする対策・秘策をお伝えします」「介護経営者なら知っておきたい介護人材確保のポイント」「介護人材が飛びつく求人広告の作り方」といった、「入居者確保だけ」「人材確保だけ」といった個別課題ではなく、この3つの介護マネジメントを総合的に判断し、バランスよく対策を行っていかなければならないのです。
そしてそのためには、短期的な解決ではなく、中長期的な対策・指針が必要であり、その総合的な方針・対策を支援してくれるコンサルタントが必要になるのです。




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