「囲い込み」を行っている住宅型有料老人ホームやサ高住のケアマネジャー、訪問介護の管理者から相談を受けることがある。それは「私たちは罪にならないのでしょうか」という悲痛な訴えだ。ユニット型特養ホームが増えているが低所得者は入所できず、低価格の旧型特養ホームは待機者が多く数年待ち、骨折や脳梗塞で病院から退院を求められても自宅に戻れない人たちが、病院からの紹介で入居してくるという。
「行き場のない高齢者のために」と、一生懸命に仕事をしている姿が目に浮かぶ。経営者からは「不正ではない」「どこでもやっている」と指示をされ、当初は、行き場のない高齢者のためにはこのようなグレーゾーンの住宅・施設も必要だと考えていたという。
しかし、特養ホームなどで働く友人からは「不正じゃないのか」「本当に大丈夫なのか」と指摘され、「こんな介護はしたくありません」と辞めていく人も多いという。実際のサービスと書類上のサービスには違いがあり、「監査で見つかれば大変なことになる」とわかっている。
「辞めたい・逃げ出したい」と思うけれど、「いつもお世話になってます」「ありがとう」と、自分達を頼って優しく声をかけてくれる入居者・家族を無責任に放り出すことはできない。「経営者」「入居者・家族」「同僚・部下」との三方向からの板挟みとなり、ぽつりぽつりと話すその表情からは、涙と共に苦悩の色がにじみ出ている。
この「囲い込み不正」の根幹は、厚労省・国交省の制度設計ミスと、安易にこのような違法商品を増やしてきた素人事業者、自治体にある。その責任を現場のケアマネジャーや介護スタッフが背負う必要はない。多くの人がそう思うだろう。
しかし、実際に不正が発覚したり、事故が発生した時に、刑事・民事・行政上の重い法的責任を負うのは、現場の介護労働者だ。実際に、囲い込みを行っているサ高住や住宅型有料老人ホームで働いていたというケアマネジャー・訪問介護員の話は共通している。
「ケアマネの仕事は、自前のサービスをたくさん使わせることだと言われる」
「家族には、本人に必要なサービスかのように嘘をついている」
「30分の介護報酬を算定しているけれど、実際に介護しているのは一〇分未満」
「時間管理など誰もしておらず、訪問介護員も臨機応変に動いている」
それは驚くことではない。初めからそれを前提としたビジネスモデルだからだ。「どこでもやっている」とは言わないが、程度の差はあれ、書類を改竄、偽造している事業者は多いだろう。「囲い込み」は、個人ではなく組織的・システム的な不正だ。
しかし、そう経営者に問うと、ほぼ全員が異口同音に「不正の指示はしていない」と否定する。経営者としては、「できるだけ自分達のサービスを使ってほしい」と願うのは当然であり、不正までしろと言っているわけではない。ケアマネジャーや現場の問題だと言うのだ。
卑劣だと思うだろうが、法的にどちらの言い分が正しいかと言えば経営者だ。
介護付有料老人ホームは、ケアマネジメント・介護サービスを提供しているのは有料老人ホームであり、管理者(ホーム長)がケアマネジャーや介護スタッフを管理・監督する義務がある。指示命令系統は明確であり、介護報酬の不正請求(スタッフ不足減算など)を行った場合、罰を受けるのは当該有料老人ホームであり、指示した管理者・経営者である。
しかし、サ高住や住宅型有料老人ホームの場合、当該高齢者住宅事業者が中心となって「囲い込み」のビジネスモデルを組み立てていても、それぞれの事業・業務は分離している。契約上、介護報酬の不正請求やケアマネジメントの不正などを実際に行っているのは、居宅介護支援事業者、訪問介護事業者であり、そこで働くケアマネジャー、訪問介護員だ。
「認定調査において、要介護度を上げるためのデータ改竄を行っていた」
「アセスメント・モニタリングに基づき、適切なケアマネジメントを行っていない」
「サービス提供表(ケアプラン)に基づいて、訪問介護サービスを提供していない」
「時間通りに訪問介護サービスを提供していないのに、介護報酬を請求している」
「介護サービス実績表の偽造を行っている」
厳しい指導監査が入れば、次々とこれら重大な違反が上がってくるだろう。
何かあれば、会社が守ってくれると思うのは大間違いだ。ケアマネジャーや訪問介護員は法的な資格を持った専門職種であり、「知らなかった」「経営者に指示されたから」「不正だと思わなかった」では免責にならない。「どこでもやっている」「不正ではない」と言っているのは、介護保険の基礎も知らない素人経営者なのだ。有資格者は「それは不正です。適切なケアマネジメントではありません」と指摘しなければならない。
本人や家族が承諾しているから良いという話ではない。
会社がダイジョゥブだと言っているから、それに従っているだけという言い訳も通じない。
介護保険制度の九割は税金と公的な社会保険料で賄われている。
あなたがやっていることは、贈収賄の事件にでてくるような、公金横領と同じだ。
逆に、「介護サービスは、すべてケアマネジャーと管理者に任せていた」「不正を行ったのはケアマネジャーや管理者」「一部スタッフの不正が企業に損害を与えた」と高齢者住宅や経営者側から損害賠償を求められることさえあるのだ。
囲い込み型高齢者住宅で働いている人達に行うアドバイスは同じだ。
「介護専門性の伴なわない、経営的ケアマネジメントはすべて不正」
「個別に不正ではないかと感じることを箇条書きにし、経営者と話をすること」
「経営者が不正でないと言い張るのであれば、行政に確認をすること」
「行政の担当者が曖昧な説明で逃げるのであれば、文章で回答を求めること」
これらができないのであれば、一刻も早く逃げ出すしかない。
労働環境の不備だけでなく、働いている介護看護スタッフ、ケアマネジャーに不法行為を強
いる時点で、ブラック企業、反社会的企業だと言って良い。そのような事業所で、「少しくらいなら」「どこでもやっているから」と漫然と不正を続けていれば、どこかで必ず資格停止や取り消し、莫大な返還請求、刑事罰を受けることになる。
「行き場のない高齢者のために」という気持ちを逆手に取られて、安い給与でその専門性だけでなく、人生まで踏みにじられていることに気付かなければならない。

























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