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生活リズム・生活環境の変化を「要介護リスク」にしない


 「いつ、何が原因で、どのような要介護状態になるのか」は一人ひとり違います。
 ただ、「要介護になるリスク」を避ける工夫・行動をすれば、できるだけ長く、自立した生活を送ることができます。これを介護予防といいます。
 その一方で、「要介護にならないように努力をする」ことだけに重点を置くと、支援や介護が必要な状態になっても、それを認めず、転倒が増えたり、認知症が進行して、中度・重度要介護になるリスクが高まります。介護予防は、「要支援・要介護になるのを遅らせる」というだけでなく、「要支援・要介護」になったときに適切な対応を行い、重度要介護にならないようにするということも含まれています。
 ここでは、七〇歳から実践したい介護予防の基本について考えます。

要介護になる最大の要因は生活リズム・生活環境の変化

 高齢期には、どうしても「できること」よりも「できないこと」、「始める」ことよりも「終わる」ことが増えていきます。
 いくつかの例を挙げてみましょう。

【生活リズムの変化】
  〇 雇用延長で続けていた、仕事からリタイヤした。
  〇 趣味で続けていた茶道のお稽古を辞めてしまった。
【生活環境の変化】
  〇 長く住んでいた自宅から、便利な場所にあるマンションに引っ越した
  〇 車の運転が好きだったが、危ないからと運転免許を返納した
【精神的なショック】
  〇 長く飼っていたペットの犬が亡くなった
  〇 親しくしていた友人や親戚が亡くなった
  〇 自動車の運転に自信があったが、事故を起こしてしまった

 その変化が、身体的・精神的に様々影響を及ぼします。
 目標や目的がなくなり、自信を喪失し、孤独感、疎外感からテレビを見ても、新聞を見ても、些細なことで、イライラして感情が落ち込んでしまう。家族以外との会話の機会はなくなり、なにをするにも「めんどうだ…」と運動や外出も一気に減ってしまう。歩いて行っていた近くの買い物も車に頼るようになり、しだいに昼寝の時間が長く、夜は寝られなくという不規則な生活になり、意欲や食欲は減退、たばこやお酒の量ばかりが増えていく。

 無目的でダラダラとした生活は、認知症や老人性うつなどの誘因になるだけでなく、筋力や骨密度、血管年齢、嚥下機能など、身体全体の機能が低下することで、転倒骨折、誤嚥窒息などの生活上の事故、脳梗塞や心筋梗塞にもつながっていきます。
 これらの生活環境や生活リズムの変化は、些細なものであっても、それが積み重なることによって、本人が気づかないうちに、生活の意欲を失わせ、要介護の引き金になっていくのです。
 とはいえ、これらの変化は、高齢期になれば当たり前に起きることです。それを「要介護のリスク」にしないために気を付けるポイントは五つあります。

 例を挙げていきましょう。
 規則正しい生活を行うには、人に会う、人と話すスケジュールを作ることです。
 一週間のうち、月曜、金曜は近くの喫茶店に歩いて夫婦でモーニングを食べに行く。火曜日と木曜日には、体力づくりのため介護予防のデイサービスに行く。土曜日は友人や知人とランチをする、「週に一本は映画館に行って映画を見る」「月に一冊は本を買って読む」と言うのも良いでしょう。このように、一週間、一ヶ月の予定が増えてくると、自然に朝決まった時間に起きて、服を着替え、顔を洗い、朝食をとるという習慣ができます。

 まだ、七〇代の方であれば、新しいことを始めるのも良いでしょう。
 今の七〇代はパソコンやスマートフォンは使える方が多いですが、SNSはあまりやらないという人が多い。確かにXに投稿して炎上したり、悪徳商法の業者が近づいてきたりするのは避けたいと思うかもしれませんが、ブログやYouTubeで発信することは、外出機会の低下した高齢者にとって、外の世界とつながる有効な手段です。
 いま、はじめて置くと、車いすの生活になっても、ブログを書いたり、日々の生活を発信したりすることはできますし、SNSで共通の趣味を持つ人とつながることもできます。「今日は何を書こうか」と考えたり、キーボードやスマートホンで指を動かすだけで、脳はしっかり動いています。

 これまでやりたくても、できなかったことがたくさんあるはずです。料理は奥さん任せだった男性ならば、ネットの料理動画を見て、つまみを作ることから始めたらどうでしょうか。自治体などが行っている歴史や文化などの「市民講座」も楽しいですし、新しい知り合いもできます。
 会いたい旧友や知人がいるのなら、連絡をしてみましょう。70代になって「そのうちに」「機会があれば」などと思っていると、結局、どちらかの体の具合が悪くなったりして、会えずに終わることが多いです。計画的に会いたい人に会っておくことを励行しましょう。
 「めんどくさい…」「三日坊主になりそう…」と不安な人は、「自分がいかないといけない」「友人・知人に迷惑をかける…」という約束を作りましょう。それは、週に一度、月に一度でもかまいません。そうすると、無理にでも出かけなければなりません。
 スケジュールや責任、目標や楽しみがあれば、続きます。そうしないと、「できないこと」「終わること」ばかりになっていきます。一歩踏み出すことで、世界がひろがります。

 家の中で、一人でできるスケジュールもあります。
 朝、決まった時間に起床して、ラジオ体操をして、顔を洗って、歯を磨いて、血圧と体重を測って、アプリに記録する。朝はそんなにお腹が空かないので、野菜と果物、乳製品などを使ってスムージーを作る。毎日調合を変えたものを作り、それを写真にとって、家族のSNSにアップをする。決まった曜日には、ビジネス街や学生街の喫茶店を訪ね、昔を思い出しながら、働いたり学んだりすう若い人たちを観察する。その感想をブログに書いてもいい。
 意欲と目的をもって新しい生活リズムをつくること。
 それが、介護予防の第一歩です。

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