【親が75歳を超えたら、子供の側から距離感を見直そう🔗】という話をしました。
その最大の目的は、親の生活リズムや生活環境の変化を見逃さないことです。
生活リズム・生活環境の変化が「要介護」のきっかけに
最近は、「終活」という言葉が流行っていますが、高齢期になると、自分が意図する、しないに関わらず。様々な生活リズム・生活環境の変化があります。
ひとつは生活リズムの変化です。
最近は、65歳を超えて、定年退職後も継続雇用になったり、「年金の足しに…」「身体を動かすために…」と、軽作業の仕事をする高齢者が増えています。65歳~69歳では二人に一人が、70歳~74歳でも、二人に一人が働いています。ただ、75歳を超えると、働いている高齢者の割合は10人に一人とぐっと少なくなります。
これは、「趣味」も同じです。若いころからお茶の先生をしていた、お花の先生をしていたという人も、「なかなか、思い通りに身体が動かないから…」と、必ずどこかでリタイアをすることになります。毎日、毎週、定期的に電車や車に乗って、家族以外の人と会って、話をしたり、教えたり、教えられたり、問題を解決したりという生活リズムがなくなり、自宅での生活が中心となります。
二つ目は、生活環境の変化です。
最近は、高齢者の悲惨な自動車事故のニュースが増えており、「自主返納」をする人が増えています。75歳以上では、約三割の人が免許を返納しています。この生活環境の変化は、「引っ越しをした」という大きなもの以外にも、「家の中をバリアフリーに改装した」「ガスコンロからIHコンロに変えた」といったものも含まれます。
そして、もう一つが精神的なショックです。
15年以上、長く飼っていた犬が、老衰で亡くなったり、親しくしていた友人や親族が病気で亡くなったり、という悲しい別れも、高齢期には増えていきます。その他、「自動車の運転中に事故を起こしてしまった」「ガスコンロを付けたままにして、危うく火事になりかけた」というミスも増えていきます。

この生活リズムや生活環境の変化、精神的なショックは、通常、私たちにも起こりうることですが、高齢期には、それが身体機能の低下や認知症の発症などの要介護のきっかけになることが少なくありません。
例えば、仕事を辞めると、外出の機会が減り、不規則な生活になりがちで、意欲や食欲の減退、お酒の量の増加、家族以外に話をする人がいなくなり、疎外感や孤独感、イライラやストレス、感情の落ち込みなど身体的・精神的に様々な影響を及ぼすことがわかっています。
生活環境の変化、精神的なショックも同じです。生きる目的や自信を失ったりして、精神的・身体的に様々な影響を及ぼします。些細な生活リズム・生活環境の変化は、本人が気づかないうちに、要介護の引き金になっていくのです。
生活リズム・生活環境の変化に家族ができること
では、この生活リズム・生活環境の変化を、「要介護」に繋げないために、離れて暮らす家族ができることは何か。どんな点に気を付ければよいのか、どのようなアドバイスをすればよいのか。
ポイントは四つあります。
① 規則正しい生活を心がけること ・・・ 決まったスケジュール
② 自宅内の閉じこもりを防ぐこと ・・・ 外出機会を伴う予定
③ 家族以外と話をすること ・・・ スケジュールに外の人との会話
④ 社会に対する興味を持ち続けること ・・・ 生きがい・目的づくり
例えば、一週間のうち、「月曜、水曜、金曜の昼間は配食サービスの人がくる」「火曜日と木曜日は、体力づくりのための介護予防のデイサービスに行く」などはどうでしょう。元気であれば、スマートホンやパソコン教室に参加するだけでも、新しい世界が広がります。そうすれば、スケジュールができますし、会話の機会も増えていきます。また、電話だけでなく、SNSで家族をグループを作って、親族から孫まで連携して、連絡を取り合うことができます。
元気であれば、新しい趣味や習い事を始めるのもいいでしょう。パソコンでブログを書いたり、小説を書くという人もいます。インターネットは外出機会の低下する高齢者にとって、外の世界とつながる有効な手段です。
車を手放した代わりに、シニアカーを購入する長期飼育になる猫や犬ではなく、ハムスターや小鳥などを買うのはどうでしょう。これを機会に、町内会活動や負担にならないボランティア活動を始めるという人もいます。

もちろん、定期的に家族が電話をして話を聞くというのも有効な手段です。
ポイントは、こちらか話をするのではなく、親の話を聞く…ということ。話をしたり、昔のことを思い出したり、笑ったりするのは健康にとても良いのです。『気が付いた時に…』ではなく、『日曜日の午後八時に…』と事前に時間や曜日を決めておけば、これも一つのスケジュールになります。
大きなカレンダーに、予定を書いてもらうというのもよい方法です。そうすれば、失見当識や認知症の予防にもつながりますし、異変、急変などの早期発見にもつながります。
もちろん無理強いすることは好ましくありません。でも、スケジュールがない、何もすることがない、平日も土日もないというのは、苦痛なものです。寄り添って、話をきいて、新しい挑戦や視点を変えることができるのは、家族だけなのです。
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