介護の話は、要介護になってからではできません。「そのうちに…」と思っている間に、認知症になって正常な判断ができなくなったり、突然、脳梗塞になって会話ができないこともあります。
介護の話は、「要介護になった時にどうしたいか…」だけではありません。「できるだけ世話にならないでおこうと思っている」と言う希望的観測ではなく、「将来のことをどう考えているか」「頼りたいこと・いま伝えておくべきこと」を、きちんと整理して話をする必要があります。
そのポイントは四つあります。
預貯金などの介護費用
一つはお金の話です。
親子や親しい親族であっても、お金の話をするのは難しいものです。
ただ、認知症になったり、突然、脳梗塞で寝たきりになったりすると、どこに何があるのかわからず、残された子供家族は困ってしまいます。医療保険に入っていたことも知らず、百万円単位の入院費用や死亡保険の請求ができなかったというケースもあります。
そのため、詳細ではなくても、どのような種類の保険に入っているのか、エンディングノートなど財産目録を記した書類はどこにあるのかなどについては、話をしておきましょう。
認知症になった場合の資産管理については、成年後見制度もありますが、後見人への費用支出が必要となるほか、後見人に勝手に使い込まれたり、本人や家族の意見が無視されたりと、その運用をめぐってトラブルが多発しています。そのため、子供がいない場合でも、信頼できる親族に資産を託せるよう、任意後見などの検討を進めておくと安心です。

認知症に関すること
認知症の話は、認知症になるとできません。
ただ、繰り返し述べているように、認知症を正しく理解をしていれば、何も怖いことはありません。
● 認知症は特別なものではなく、高齢期になれば誰でも自然に発症すること
● 認知症対策は、認知症にならないことではなく、早期発見が何よりも大切なこと
● 認知症が早期に発見できれば、何も恐れる必要はないこと
● 自分ではわからないので、「あれ?」と思うことがあれば、すぐに教えてほしいこと
この四つのことを話しておくだけで、認知症に対する不安は軽くなります。
そして、それを子供家族とも共有しておくことです。
● 「『変だな?』と思ったらすぐに言ってね」
● 「決まった時間に電話をするのが良いそうだから、金曜日の八時に電話するね」
併せて、早期発見の協力を家族に依頼しましょう。
介護予防、急変時に頼みたいこと
家族に依頼する事柄は、「要介護になってから」だけではありません。
「決められた時間、曜日に電話をする」「家族専用のSNSグループをつくる」「異変時の対応を決めておく」などの対策は、離れて暮らす子供にとっても、それほど手間のかかるものではありませんし、それによって要介護になるのを遅らせ、子供家族の介護負担を軽減することができます。
● 「センサーやアプリを使った簡単な安否確認サービスを利用しようと思っている」
● 「連絡先に指定しておくので、何かあったらお願いね」
介護予防対策や認知症・異変の早期発見など、離れて暮らしていても、家族が協力してくれることで、その効果は大きく広がります。

【要介護になった時に子供家族に依頼したいこと】
最後の一つが、「介護が必要になったら、どんな生活がしたいのか」「子供家族に何をお願いしたいのか」という要介護になった時の話です。家族の役割は、排泄介助、入浴介助などの直接介助をすることではなく、本人の意見を代弁したり、優良な介護サービス事業者、高齢者住宅を選んだりと、子供家族の介護がなくても生活できるように介護生活環境を整えることです。
「できるだけ長く自宅で生活をしたい」「自宅で生活できなくなれば老人ホームに入る」「一緒に暮らすことは考えていない」「延命目的だけの治療はしたくない」などの希望も伝えておきましょぅ。

子供家族に迷惑をかけたくない、負担をかけたくないと言う気持ちはよくわかります。
しかし、その気持ちが強すぎて、家族にしかできないことまで遠慮してしまうため、かえって大きな負担をかけることになるのです。
また、子供家族は、特に離れて暮らしている場合、「親が突然、要介護になったら…」「その前に聞いておくことはないか…」「そろそろ話をしたほうが…」と不安に思っていても、自分たちからは切り出しにくい話題です。元気なときに「何を頼るのか」「何を頼らないのか」を明確にすることで、子供家族も「親は何をしてほしいのか」「イザ、介護の時に何をすればよいのか」がわかります。そうすれば、子供家族も親の介護に漠然とした不安を感じずに済むのです。



























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