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ポーチ・エントランスの安全設計について徹底的に考える

玄関ポーチやエントランスは住宅・施設の内と外との境目。靴を脱ぎ履きしたり、泥を落としたり、車いすを拭いたり、その生活行動は事故の発生原因となるだけでなく、感染症ウイルスの流入や、犯罪者(窃盗犯)などの侵入を防ぐという重要な役割を持っている

高齢者住宅開設者向け 連載 『社会価値・市場価値の高い高齢者住宅をつくる』

リスクマネジメントの視点から見た建物設備の安全設計
その二回目は、ポーチ・エントランスの安全設計です。
玄関やエントランスは、高齢者住宅や介護保険施設の内と外との境目です。靴を脱ぎ履きしたり、泥を落としたり、車いすを拭いたりと様々な生活行動、介護が必要となります。
それは事故の発生原因となるだけでなく、コロナ禍で課題となっている感染症ウイルスを食い止めることや、犯罪者(窃盗犯)などの侵入を防ぐという重要な役割を持っています。

【事故 ・リスク例】
◇  風除室で自動ドアの開閉に挟まれ、車いすが転倒・骨折
◇ エントランスポーチの玄関マットに躓いて、転倒・骨折
◇ 外出用の靴に履き替える順番を待っていて、ふらつき転倒
◇ 手洗い・消毒・検温の不徹底による、外部からの感染症ウイルスの持ち込み
◇ 関係者以外の不審者の侵入による窃盗被害の発生

防犯や感染症対策に対してエントランスの持つ役割や、エントランスでの生活行動、実際にどのような事故が発生しているのか、その原因は何かを十分に検討しながら、設計を行う必要があります。

エントランス設計 事故の発生予防対策

まず一つは、エントランスのポーチです。ここは玄関ドアの外側になります。
車から降りたり、傘を畳んだりする場所ですし、自動ドアの開閉や中から出てくる人に気を取られたりして、転倒のリスクが高い場所でもあります。照度や段差、表面の滑り止めなど、細かな配慮が必要です。

【エントランスポーチ(外側) 検討一例】
◇ ポーチからエントランス内部にかけて段差を設けないこと。
◇ 夜間でも足元が暗がりにならないよう、照度が確保されていること。
◇ ポーチの床表面は滑りにくい仕上げとなっていること
◇ 排水溝のスリットやグレーチングなど車いす車輪や杖が落ち込まない仕様にすること
◇ 福祉車両が入れる車寄せを設置し、屋根または雨よけ用の庇を確保すること
◇  車いすが回転できるスペースを確保すること
<風除室を設ける場合>
◇ 風除室ドアとエントランスドアの間隔を2000mm以上とすること
◇ 車いすが中に入った場合でも、風除室・エントランス両ドアが開かない構造にすること

もう一つは、エントランス、玄関ドアの内側です。
ここでは、靴を屋内履きから、屋外履きに替えたり、車いすを外出用に乗り換えるという生活行動を行います。それが事故なく、潤滑に行うことができるような設計上の配慮が必要となります。

【エントランス(内側) 検討一例】
<玄関部分>
◇ エントランスドアは有効幅員を1200mm以上の横開きの自動ドアにすること
◇ 車いす利用者のための開放時間や感知域に配慮すること
◇ 夜間でも足元が暗がりにならないよう、照度が確保されていること。
◇ 玄関の床表面は滑りにくい仕上げとすること(クッション性のある床材が望ましい)
◇ 玄関マットは仕上り面が平坦となる埋め込み式とし、毛足の長いものにしないこと
◇ 外出者用の車いす保管場所を設置すること(または車輪清掃用具)
◇ 来訪者の靴などが散乱しないよう、必要数の下駄箱を設置すること
<上がり框部分>
◇ 玄関から上がり框にかけて、段差がないこと
◇ 玄関と上がり框は、床材や色を変えるなど認識しやすいものであること
◇ 安全に靴(内履き・外履き)を着脱できるベンチ・手すりを準備すること
◇ 安全に車いす乗り換えができるよう、立ち上がり補助バーなどを設置すること

エントランス設計 感染症の予防対策

エントランスの二つ目の役割は、感染予防対策です。
コロナ禍でパンデミックが発生したように、高齢者住宅や介護保険施設は、家族や業者など多くの人が出入りすることなどからウイルスが入り込みやすく、ウイルスが入り込むと一気に広がり、重症化するリスクが極めて高くなります。そのため、出入り口での感染対策に万全を期す必要があります。

【エントランス 感染症対策】
◇ 入居者・家族などが普段出入するエントランスは一か所とすること。
◇ マスクのない人への声掛けなど、事務室・スタッフルームからの見通しを確保すること
◇ 外来者・家族・入居者(帰ってきた時)に手洗い・手指消毒できる手洗い台を設置すること
◇ 消毒ポンプ・手洗カランの汚染を防ぐため、自動水栓・センサー式・足踏み式にすること

エントランス設計 の防犯対策

エントランスの三つ目の役割は、防犯対策です。
高齢者は特殊詐欺などの犯罪に巻き込まれるリスクが高いのが特徴です。
また、高齢者住宅や介護保険施設は、家族や業者など多くの人が出入りするため、家族を装って不審者が
入り込むなどの事件も発生しています。エントランスからの見通しを良くするとともに、監視カメラや夜間の自動照明などの防犯設備の検討を行います。

【エントランス 防犯対策】
◇ 入居者・家族などが普段出入するエントランスは一か所とすること。
◇ 来訪者への声掛けなど、事務室・スタッフルームからの見通しを確保する。
◇ 受付窓口や人が通るとは感知するチャイムなどの設置を検討する
◇ ポーチやエントランスに、監視カメラや夜間の自動照明などの防犯設備を導入する




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