SOCIAL

できるだけ長く、働き続けることの効果



 介護予防に大きく関わってくるのが、できるだけ長く働き続けることの効果です。
 この働き方やお金の問題は、一人一人事情が違うため、「こうすべき…」というものではありません。
 ただ、理由はなんであれ、身体が動く限り、働き続けることはあなたにとっても、家族にとっても、社会にとっても、有益な効果を生み出します。

働くことの3つの効果

① お金を稼ぐ
 一つ目は、お金の問題です。
 高齢期の生活にお金はとても大切です。
 第一章第二節において、「老後資金2000万円問題」を取り上げましたが、あの議論の最大の問題は、「2000万円ない人はどうすれば良いか…」ではなく、「うちは2000万円以上あるので、働かなくてもなんとかやっていけそうだ」と、多くの人に誤解させてしまったことです。
 しかし、示された2000万円には、高齢期の最大の支出項目である介護費用は含まれていませんし、これから固定資産税や市民税、医療介護保険料、医療介護の自己負担も上がります。
 とはいえ、七〇代からお金をたくさん貯めようとしたり、リスクの高い無理な投資をしたりというのはあまりお勧めできません。その程度で老後資金が大きく変わるわけではありませんし、高齢期から始める投資は、金融業者にとっては「いいカモ」であり、失敗すると取返しがつかなくなります。
 また、述べたように「お金がなければ、最低限の医療や介護を受けられない」というものでもありません。「働かなければ、年金だけでは食べていけない」と言う人以外は、「いまの資産が大きく減らないようにする」「これ以上の借金はしない」と言う程度で十分だと思います。

② 介護予防
 二つ目は、介護予防です。
 生活リズムの変化、生活環境の変化を「要介護のリスク」にしないためには、「規則正しい生活を心がけること」「自宅内での閉じこもりを防ぐこと」「家族以外と話をする機会を作ること」「新しい生きがいや目的をつくること」「歩くこと」の五つのポイントが必要だと述べましたが、これらはすべて働くことで、解決できます。
 毎日歩いて、エスカレーターを避けて階段を使うだけで、無理な筋トレなどする必要はありません。お化粧をして、ネクタイを選んで、人に見られることを意識して、社会的な役割、責任を持ち続けること、それが要介護になるリスクを減らし、要介護になる年齢を先送りして、介護費用が掛からないという好循環につながります。

③ 認知症や急変の早期発見
 もう一つ、重要なポイントは、認知症や急変の早期発見です。
 認知機能が低下してくると、自分でも考えられなかったようなミスが増えます。飲食業で、お客さんからのオーダーを受けたことを完全に忘れてしまったり、電話を切った瞬間に、誰からの電話だったのか頭の中から消えてしまったりします。
 また、日付や曜日の感覚から失われていくため、突然の欠勤や遅刻も増えます。高齢期には誰しも認知症になると言うことを理解していれば、「あっ、認知症の初期症状だな」と気づくはずです。
 それは急変の早期発見にもつながります。頭が割れそうに痛い(脳出血の恐れあり)、玄関で転倒・骨折して動けないと言う場合、一人暮らしで誰にも気づいてもらえなければ、そのまま孤独死となります。
 でも、働いていれば、「〇〇さん、来ていないな」「連絡もないし、何かあったのだろうか」と、気付いて電話をしてくれるでしょう。それで発見されて命が助かったという人もいます。


老後の働き方の注意点とポイント

 このように、高齢者ができるだけ長く働き続けることは、お金の問題というより、生きがいづくりや介護予防、異変の早期発見のために、有益なことなのです。
 この働くことによる三つの効果を得るには、いくつかのポイントがあります。

 一つは、「規則正しい生活をする」「家族以外と話をする」という効果を意識するということです。顔を洗い、髪を整え、外出用の服に着替えて、駅まで歩いて、電車やバスに乗って、職場に行って同僚やお客さんと話をする、という一連の行為が効果的な介護予防につながります。

 二つ目は、スポットワークでなく、継続的に同じところで働くということ。
 最近は、若い人の間にも、空いた時間を活用して、働きたい時間だけ働くという「スキマバイト」「単発バイト」が増えています。しかし、それでは休んでも誰も気づいてくれませんし、他にスタッフとの人間関係もコミュニケーションも取れません。週3日、週2日でもかまわないので、できるだけ長く、人間関係が安定した同じ場所で働くのが望ましいと言えます。

 そしてもう一つ、最も大切なことは楽しく働くということです。
 六五歳を超えると、年金収入という下駄がありますから、成績や実績に縛られたり、反りの合わない上司のもとで、胃が痛くなるようなストレスのかかる仕事をする必要はありません。「働く」ということは、どんな仕事でも社会を支えるものですが、損得や地位よりも、人に感謝され、自分も笑顔になるような仕事を選ぶのが良いでしょう。それがきっと、新しい生きがいにつながります。

 老後の働き方、その目的は、人それぞれです。
 これまでの生活で培ったノウハウ、能力を社会に還元するという方法もありますし、新しいことを始めるという人もいるでしょう。最近はファストフードのお店や図書館などの公共機関でも、若い人や外国の人と一緒に働いている高齢者が増えてきました。
 みなさん、とても親切で、若い人よりもお元気で力をいただきます。
 どんな仕事でも、働くということは、社会を支える側にいるというです。
 まずは、「75歳までは働く」ということを、一つの目標にしましょう。

【関連コラム】 要介護発生率が一気にあがる85歳 🔗 


七〇代から始める介護準備 (トップ)




関連記事

  1. スタッフルーム・洗濯室・汚物処理室・倉庫の安全設計について考える…
  2. 要介護高齢者住宅は「居室・食堂同一フロア」が鉄則
  3. なぜユニット型個室特養ホームを増やしてはいけないのか
  4. 要介護高齢者住宅の介護システム 構築から運用への視点
  5. 建物設備設計の工夫で事故は確実に減らすことができる
  6. 業務シミュレーションの一歩先へ Ⅱ ~厳格ユニットから緩やかなユ…
  7. 介護休業なんて取得しても意味がない?
  8. 蔓延する低価格サ高住・サ高住の囲い込み不正

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


TOPIX

NEWS & MEDIA

WARNING

FAMILY

RISK-MANAGE

PLANNING

PAGE TOP