介護事故の民事裁判において、予見可能性があっても安全配慮義務が満たされていたと判断されるには
① 事故予防の対策に過失がなかった。できうる限りの対策を取っていた
② 事業者が提案した事故対策に対して、被害者本人が拒否をしたために発生した
という二つのケースに限定されます。
このうち、①のケースが「介護能力の限界」と呼ばれるものです。
介護現場がどれだけ努力をしても、突発的に発生する介護事故をゼロにすることはできません。
ただ、どこまでやっておけば、事業者・スタッフの過失は認められないと判断されるのか、
そのハードルは極めて高いのです。
ここでは、認知症高齢者の転倒事故を例に「過失なし」と判断された事例を読み解きますが、
それは決して、「過失ゼロ」と判断されてよかった・・・という単純なものではありません。
認知症高齢者の事故の判例が事業者に求められるものは、現代の介護現場とは大きくかけ離れています。
このままでは、事故リスクの高い認知症高齢者を受け入れることはできなくなるのです。
「介護能力の限界」に対する判例と、その社会的課題について、考えます。
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