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【ケース10】月額費用の説明に対する誤解がホームへの不信感に・・・

パンフレットに書いてある月額費用と、実際の費用とが5万円以上違う。契約書には別途費用が書かれており、嘘をつかれたわけではないけれど、最初から丁寧に説明されていれば、気持ちよく感謝できたのだろうけれど・・・

高齢者・家族向け 連載 『高齢者住宅選びは、素人事業者を選ばないこと』 063


入居者・・・実母(70代後半)、車椅子利用、要介護2

実家で一人暮らしをしていた田舎の母が脳梗塞で入院し、要介護状態になりました。病院からも早期の退院を求められたため、有料老人ホームに入居しました。
母は、ある程度の貯蓄を残していたために、貯金で入居一時金(500万円)を支払ったのですが、まだ70代ということもあり、入居期間が長くなることを考えて、月額費用は、年金内で生活できる、できるだけ低価格(20万円未満)のホームを探しました。
特別養護老人ホームは一杯で入所できないと言われ、同居することも、自宅で生活することもできません。少し焦っていたこともあり、月額費用の詳細な内容まで検討することなく入居を決めたのですが、それが大きな間違いでした。

ホームの介護スタッフの方々は親切で、母もすぐに慣れたようで良いホームが見つかったと安心していたのですが、入居から一ヶ月後に送られてきた請求書を見て、びっくりしました。パンフレットには月額費用は18万円と書いてあったので、漠然と20万円あれば賄えると思っていたのですが、実際にはオムツなどの日用品費、追加治療食(母は糖尿病なので・・)、レクレーション費用、おやつ代などで、実際の請求額は23万円を超えていました。
慌てて、事前にもらった契約書や重要事項説明書を見ると、別途費用として必要なものとして、記載されており、間違いでも嘘をつかれたわけでもないことがわかりました。いまから思えば、暴利というものでもなく、それぞれに金額は妥当なものなのですが、感情的にだまされたような気がして、ホームに対する不信感は一杯になりました。

退居も考えたのですが、すでに一時金も支払っていますし、母は気に入って生活しています。同居することも自宅に戻ることもできません。ホームに苦情をいってもどうしようもないことはわかっており「入居前にきちんと確認しなかった自分が悪い」という後悔から、余計に腹立たしさが高まりました。
母や他の兄弟にも、最初は「18万円程度」だと伝えており、ある程度年金内で賄えると思っていたようですが、ホームに払える費用以外に医療費などもあり、実際は25万円を超えました。不足分は貯蓄の取り崩しや私が負担することとなり、それを気にしてか、衣服や下着なども買い控えたり、別途費用がかかるレクレーションや趣味のクラブなども希望しなかったように思います。

母は、その後、4年程度ホームで生活し、83歳で心筋梗塞で亡くなりました。
一度、肺炎になり一ヶ月程度入院をしたときは、入院費用とホームへの支払が二重に必要になりました。サービス内容に全く不満がないというわけではありませんが、特段のトラブルがあったわけでもありません。虐待や倒産など他のホームや高齢者住宅のトラブルを耳にすると、介護スタッフの方々も忙しい中でよくやっていただいたと感謝しています。

しかし、それでも、最期まで個人的にホームに対するわだかまりは消えませんでした。
もちろん、それは老人ホーム側の責任だけでなく、事前にきちんと確認しなかった自分自身にも問題があることはわかっています。また、それは法外なものでも、また支払えないような金額でもありませんし、他の介護付き有料老人ホームに入居しても、同程度の費用はかかるのだろうと思います。ただ、最初からきちんと聞いていれば、もっと気持ちよく、私も母もサービスを受けられたのに…と今でも残念で、母にも申し訳なく思っています。


【失敗の原因は何か・・どうすればよかったのか・・】

この高齢者住宅の費用については、誤解やトラブルが多いものの一つです。
まず、理解しておかなければならないことは、月額費用と月額生活費は全く違うということです。光熱水費や電話代、日用品、医療費などは毎月必要になりますし、要介護状態が重くなればオムツ代などの費用もかさみます。相談例のように「月額費用18万円なら、だいたい母の年金内でいけそうだな…」と安易に考えてしまうと、実際の一ヶ月の生活費は23万円というケースは少なくありません。
これは、一時的なものではなく月額5万円の差額は年間60万円、5年で300万円、10年入居すると600万円の差額になり、資金計画は大きく狂うことになります。

この高齢者住宅の費用に誤解やトラブルが多いのは、月額費用として示されているサービス内容が、高齢者住宅によって違うからです。介護付有料老人ホームの場合は、食事や介護看護サービスも一体的に提供されますから、月額費用の中にすべての費用を含んで表示されているのが一般的です。これに対して、住宅型有料老人ホームの介護サービスは有料老人ホームから受けるのではなく、外部の訪問介護、通所介護との契約ですから含まれません。更に、サ高住は食事も外部のレストランから提供されるとなれば、含まれていないこともあります。
ですから、「月額費用23万円」の介護付老人ホームよりも、「月額費用 20万円」の住宅型有料老人ホーム、「月額18万円」のサ高住のほうが安いというわけではないのです。

ただ、費用についての誤解やトラブルは、サービスに対する不満とは違い、事業者の努力で100%回避できるものです。事業者にとっても、入居後に「聞いた金額と違う」となれば、家族との信頼関係を築くことができませんから、詳しく説明してくれます。これまでの自宅での生活状況などを聞き取り、「オムツ費用」や「医療費」などを含めて、「月額生活費見積表」を作ってくれるところもあります。

言い換えれば「月額費用の表示・説明」は、「事業者の信頼度・ノウハウ」が表れるポイントだということです。
まず、「地域最安値…」「月額費用10万円…」などと、パンフレットやホームページで見た目の安さをアピールしていような高齢者住宅は、「誤解・誤魔化し」をアピールしているようなものですから、避けるべきです。また、「詳細は別紙に書かれている」「月額費用以外に必要なものもある」という程度で、価格の内容について丁寧に説明しないところも注意が必要です。

このような高齢者住宅は、月額費用に含まれない医療費や日用品などが高額となる可能性が高く、また介護スタッフの入れ替えも多くなります。価格表示やその説明には、その事業者のコンプライアンスやノウハウ、誠意など、すべてが見えると言っても過言ではありません。

【参照 費用のトラブルを起こす事業者は悪徳事業者 】


「こんなはずでは・・・」 高齢者住宅選びに失敗した家族の声を聴く

  ⇒ 【F053】 高齢者住宅選びに失敗している家族に共通するパターン 🔗
  ⇒ 【ケースⅠ】 病院から紹介された有料老人ホームに入居したが 🔗
  ⇒ 【ケースⅡ】 「介護が必要になっても安心・快適」はイメージと正反対  🔗
  ⇒ 【ケースⅢ】 生活保護受給者をクイモノにする悪徳高齢者住宅 🔗
  ⇒ 【ケースⅣ】 高額の入居一時金を支払ったのに ~要介護対応の不備~  🔗
  ⇒ 【ケースⅤ】 高額の入居一時金を支払ったのに ~トラブル退居~ 🔗
  ⇒ 【ケースⅥ】 「協力病院」の医師に無理やり寝たきりにされた父  🔗
  ⇒ 【ケースⅦ】 不正を訴えても「自己責任でしょ・・」と無関心の役所🔗
  ⇒ 【ケースⅧ】 家族が住む近くに高齢者住宅を探せばよかった  🔗
  ⇒ 【ケースⅨ】 意見や希望を上手く伝えられずにストレスに 🔗
  ⇒ 【ケースⅩ】 月額費用の説明に対する誤解がホームへの不信感に 🔗

高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

  ☞ ポイントとコツを知れば高齢者住宅選びは難しくない (6コラム)
  ☞ 「どっちを選ぶ?」 高齢者住宅選びの基礎知識 (10コラム)
  ☞ 「ほんとに安心・快適?」リスク管理に表れる事業者の質 (11コラム)
  ☞ 「自立対象」と「要介護対象」はまったく違う商品 (6コラム)
  ☞ 高齢者住宅選びの根幹 重要事項説明書を読み解く (9コラム)
  ☞ ここがポイント 高齢者住宅素人事業者の特徴 (10コラム)
  ☞ 「こんなはずでは…」 失敗家族に共通するパターン (更新中)



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