高齢者の住まいにかかる制度矛盾・混乱は、大きく分けると3つあります。
ひとつは、前々回お話した、老人福祉施設と高齢者住宅役割の混乱。
それは民間の高齢者住宅、要介護高齢者向け住宅の健全な発展を阻害しているだけでなく、セーフティネット・福祉施設なのに、富裕層優先・お金のない人入れないという本末転倒の事態になっています。
二つ目は、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の混乱です。
これは、前回お話をしました。
厚労省と国交省の利権争い、責任の押し付け合いの中で、劣悪な環境の高齢者住宅や違法な無届施設が激増しています。その多くは、サービス・経営共に脆弱で、この数年のうちに経営破綻すると考えられています。
そして、三つ目が、今回お話をする高齢者住宅に適用される「特定施設入居者生活介護」と「区分支給限度額方式」という介護報酬の混乱・矛盾です。
特定施設入居者生活介護の指定を受け、自ら介護サービス事業者となって介護サービスを提供する有料老人ホームを「介護付有料老人ホーム」、一方、高齢者住宅事業者は介護サービスを提供せず、個々の入居者が自宅で受ける介護と同じように訪問介護、通所介護などの外部の介護サービスと契約をして介護サービスを受けるタイプの有料老人ホームを「住宅型有料老人ホーム」と言います。
本来、この有料老人ホームと同じように、サービス付き高齢者向け住宅も、「介護付サ高住」「住宅型サ高住」に分かれるはずですが、ほぼすべてのサ高住は「区分支給限度額方式」を取っているため、あえて「住宅型サ高住」とは言わないのです。
この問題の根幹は、「特定施設入居者生活介護」と「区分支給限度額方式」の介護報酬に大きく差があるということです。同程度の介護サービスを提供しても、要介護3以上の重度要介護高齢者になると、受け取れる介護報酬の差は10万円以上になります。そのため「訪問介護併設」「通所介護併設」として、その差額を運用して利益を上げる「囲い込み」と呼ばれるビジネスモデルが横行しているのです。
まず、ここでは「囲い込みとは何か」について考えます。
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