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【新しい本が発売になります】 介護離職はしなくてもよい


後後期高齢社会で激増することが予測される介護離職。それは個人・家族のリスクというだけでなく、社会・経済に波及する巨大なリスクとして圧し掛かってくる。介護離職しない、させない社会をどのように作っていくのか、親の突然の介護に直面した時に、家族がしなければならないことは何か



親の介護は突然やってきます。
「脳梗塞で倒れ、緊急搬送された」との電話。
慌てて病院に駆けつけ、手術は成功したと聞きホッとしたのもつかの間、「後遺症で左半身に麻痺が残る可能性が高い」と聞かされ、不安で目の前が真っ暗になります。
離れて暮らしていると、認知症の発見が遅れます。週に一度は「大丈夫? 変わりない?」と電話をしていたのに、半年ぶりに帰省をすると、髪はぼさぼさ、家の中はゴミだらけ、冷蔵庫の中の食べ物も腐り、キャッシュカードは暗証番号のミスで使えなくなっているという、変わり果てた状況に愕然とします。

これから20年の間に、認知症発症率、要介護発生率が顕著に高くなる後後期高齢者が一気に二倍の1000万人になり、その4人に3人は独居、または高齢夫婦世帯となります。その中で激増すると考えられているのが、親の介護のために仕事を続けられなくなる「介護離職」です。
「車いす生活になり、一人暮らしを続けるのは難しい」
「特養ホームも一杯で、すぐに入所するのは難しい」 
「自分が仕事を辞めて、実家に帰るしかないか…」
「親の家と預貯金が少しはあるし、親の年金もあるし…」
「景気も悪いし、いまなら早期退職で割増退職金がでるし…」

と、介護離職に気持ちは向かっていきます。

厚労省の調査によると、介護を理由に仕事を辞める人は年間約10万人。これは、あくまでも氷山の一角であり、パートや派遣社員、「親の介護で仕事ができない」という人を加えると、その数倍に上ります。介護年数は5年、10年と長期に渡るため、その数は毎年積み重なっていきます。
現在、介護をしながら仕事をしている人は346万人と、五年前の調査から100万人増えています。現在、介護をしていない人でも、約四割の人が五年以内に介護が始まる可能性があると答え、その3人に1人は、「仕事を続けられなくなるだろう」と答えています。
現在、老老介護、認認介護などが社会問題化していますが、これからは二世代、三世代家族でも、家族の中に誰も働いている人がおらず、介護される人と介護する人しかいないという「総介護家族」は珍しい家族形態でなくなるでしょう。

この介護離職者の増加は、個人・家族の問題ではなく、日本社会のリスクです。
少子高齢社会のリスクの根幹は、支える人と支えられる人のバランスが崩れることです。年齢を問わず、働ける間は働いてもらう、社会を支える側にいてもらうというのが超高齢社会の基本です。
しかし、40代~50代という働き盛り世代の介護離職が増えると、その人が行っていた生産活動はゼロとなり、それは企業活動にも影響していきます。税収や社会保険料は減少、更に、社会保障システムは先細りとなり、増加するのは生活保護世帯だけという負のスパイラルに陥ることになるのです。

~介護離職しない、させない社会の実現へ~

私たちは、早急に「介護離職しない、介護離職させない社会」を構築していかなければなりません。
そのために不可欠となるのが、「介護休業の取得率のアップ」です。
多くの人が勘違いをしていますが、介護休業は育児休業とは違い「子供が親を介護するための休業期間」ではありません。介護は介護保険やプロの専門業者に任せればいのです。その方がよほど、質の高い、専門性の高い介護を受けることができます。
介護休業の目的は、「介護と仕事の両立」と言われていますが、それも少し違います。仕事をしながら、5年、10年と親の介護を行うことは、精神的にも肉体的にも、口でいうほど容易いことではありません。
介護休業の目的・役割は、「親の介護環境・生活環境を集中して整えることで、家族や子供はできる限り従前と同じ生活・仕事を行えるようにすること」です。

親の介護は、要介護状態、生活環境、生活希望など百人百様であり、あらゆるケースを想定して「事前に万全の準備をする」ということはできません。ただ、介護が必要になった時、慌てずに介護生活のプランニングをする一ヶ月、二ヶ月の時間を確保することができれば、「100%の希望を満たす」ということはできなくても、その要介護状態に合わせ、冷静に考え、制度を理解し、必要なサービスを選択し、必要な介護生活環境を整えることは可能です。
また、親の介護は「一ヶ月・二ヶ月」という短期決戦ではなく、五年、一〇年と続く、腰をしっかりと据えて取り組むべき長期的な課題です。介護休業は、親が骨折や脳梗塞、認知症などで突然の要介護になった時に、慌てず、冷静に気持ちの余裕をもって、「介護生活環境を整備するための期間」「介護プランニングのための期間」なのです。

この介護休業は、二回に分けて、取得するのが基本です。
それは、「軽度要介護の時の介護生活環境」と「重度要介護の時の介護生活環境」は変わるからです。
そして、要支援~軽度要介護の時に、積極的に取得することが重要です。できるだけ自宅で長く生活できるように、転倒や入浴中の事故などのリスクを削減し、定期的な見守りなどの機能を含め一人暮らしでも安全に、安心して快適に生活環境を整えることができれば、重度化の予防につながります。
それは、介護や医療費などの社会保障費の削減にもつながっていきます。

私たちが直面する後後期高齢社会は、団塊世代の高齢化ではなく、「85歳以上高齢者1000万人時代」が2070年代まで続く、分厚く巨大な壁です。介護休業推進は「要介護の家族を支えるための制度」「労働者の権利」といった一面的なものではなく、日本という国を維持していくために、国・自治体・企業・労働者・介護サービス事業者が一体となって取り組むべき喫緊の課題なのです。

本書では、介護休業制度とは何か、その間に家族は何をするのか、誰に相談するのか、自宅で生活を続ける場合の役割、高齢者住宅を選ぶ場合の注意点、さらには企業の取り組み、制度の取り組み、「突然の介護」になる前にできることは何かについて、整理しています。

 ◆ 親の介護に不安を抱える40代、50代の方へ・・・
 ◆ 介護離職を防ぐ企業・事業者の人事担当者の方へ・・・
 ◆ 地域包括ケアシステムを設計する自治体担当者の方へ・・・
 ◆ これからの社会ベクトルを知りたい介護サービス事業者の方へ・・・

ご興味のある方は、是非、お読みください。

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介護離職はしなくてもよい  ~目 次~

  序章  介護離職が激増する社会 ~後後期高齢社会の衝撃~
    1 激増する介護需要、絶対的に不足する人材・財源
    2 介護離職の増加は社会にとって大きなリスク

  第一章 突然の介護に慌てない ~介護休業制度の活用~
    1 介護休業制度は家族が介護するための休業ではない
    2 介護の生活環境整備は、二つの選択肢に分かれる

  第二章 介護休業制度を上手く活用しよう ~介護休業取得事例~
    1 母の骨折・入院から自宅復帰 (本人52歳 母親78歳)
    2 脳梗塞・自宅復帰から老人ホームへ (本人40代 父親85歳)
    3 老人性うつになった母への支援 (本人52歳 母親80歳)

  第三章 在宅生活を続ける場合の家族の役割・注意点
    1 介護生活する上で、基礎となるケアマネジメントの理解
    2 「自宅で介護生活」で家族が考えること、すべきこと

  第四章 老人ホーム・高齢者住宅を選択するときの注意点
    1 知っておきたい 「間違いだらけの高齢者住宅・老人ホーム」
    2 高齢者住宅選びの基本は「素人事業者を選ばない」こと

  第五章 介護と仕事の両立・介護と経済の両輪の時代に向けて
    1 介護離職ゼロに向けた「企業の取り組み強化」のポイント
    2 介護離職ゼロに向けた「法制度の取り組み強化」のポイント
    3 「突然の親の介護」に向けた心構え・想定をしておく










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