拙著、「高齢者介護はリスマネジメントの時代」に対して、いくつかのお問合せ・ご質問・ご意見をいただいています。「介護のプロほど介護の働きにくさを知っている」と言う論述の中で、疑義があるのが以下の部分です。
「介護福祉士の登録者数は200万人をこえているのに、実際に介護の仕事に従事している人は55%にすぎない」(序章 16ページ)
これについて、「介護福祉士のうち76%は介護の仕事をしている。データが間違っているのでは?」と言う複数のご指摘をいただきました。
ご意見をいただく方から、データとして示されるのが、社会福祉振興・試験センターから令和3年7月9日に出された、「社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士の就労状況調査について」です。
これはセンターが三福祉士の登録者に対して、アンケートを行ったもので、その結果によると、介護福祉士の有効回答者58.2万人のうち、76.3%(44.4万人)が、福祉・医療・介護の現場で働いていると回答しています。ここから他のホームページでも「潜在介護福祉士は25%程度」としているものがほとんどです。
では、どうして、本書の中で、「介護の仕事に従事している人は55%(つまり潜在介護福祉士は45%)」としたのか。
もちろん、そこには理由があります。
これまでも(他の書籍・データ)でも、介護福祉士の介護分野における就業割合は、厚労省の「介護サービス施設・事業所調査」の介護福祉士の従業者数と社会福祉振興・試験センターの「介護福祉士の登録者数」をもとに算出しています。
令和5年度の「介護サービス施設・事業所調査」によると、介護保険施設・訪問介護など高齢者介護の分野で働く介護福祉士は983,488人。母数となる同年の介護福祉士登録者数は194万人ですです。
その他、病院や障碍者施設などで働く人を加味して、55%と算出しています。
実際、介護現場で働く介護職・訪問介護員、186.7万人のうち、国家資格者である介護福祉士の割合は、五割程度です。事業所や業種によって違いはありますが、恐らく、実態や肌感覚としても、その程度ではないかと思います。
もし、介護福祉士の介護分野への就業率が76%なのであれば、介護福祉士200万人のうち、150万人が介護の現場で働いていることになり、介護人材不足にはならないはずです。
ちなみに、この計算で算出した、介護福祉士の介護分野の就業率は介護保険制度が始まった当初は六割を超えていたのですが、年々低下をし5割程度にまで落ち込んでいました。それが、「介護職員等処遇改善加算」の関係もあり、少しずつ上昇傾向にあります。それは好ましいことです。
ただ、本書で述べている通り、リスクマネジメントを土台として介護労働環境を抜本的に改善し、「事故・トラブル・クレーム」などに不安やストレスを抱えることなく働ける環境にしなければ、優秀な介護人材の「介護現場離れ」は止められないのではないかと考えています。
ご興味のある方は、「高齢者介護はリスクマネジメントの時代へ」をお読みください。

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