ビッグモーターの前社長が退任されてから一か月が経つ。
「組織ぐるみではない。社員の許しがたい不正行為だが社長としての責任を取って辞める」ということらしい。そうですか…という話だけれど、それを信じる人はいないだろう。
何故かと言えば、社長・副社長の下にいた専務がそのまま次期社長になったからだ。
仮定法で考えてみる。
ここまで社内で横行していた不正、違法行為に、本当に社長とその息子の副社長が知らなかったのだとすれば、それは誰かがどこかで止めていたということ。そうであれば、「どうして俺を裸の王様にしたのだ」と激怒することはあっても、その不正を知っていたけれど、報告を止めていたたちが、そのまま次期経営陣に居座ることはありえない。
もう一つの可能性は、社長だけでなく、他の取締役も経営陣も、本当に誰一人不正に気が付かなかったということ。会見の趣旨はそうだろうが、もし、そうであれば取締役・管理者全員が相当のポンコツだ。そんな人たちに会社の立て直しなどできるはずがないし、大株主の現社長がそんなポンコツの部下に次期社長など任せようと思わないだろう。
そう考えると、前提条件は崩れる。
間違いなく、不正は社員、管理職、取締役、社長まで全員が知っていたということ。
「なんでもいいから利益を上げろ」
「やり方は、すべて現場に任せる」
「俺たちは知らなかったことにしておく・・・」
これはまっとうな企業ではなく、「暴力団の上納金」のやり口、言い訳に近い。
それがビッグモーターでは、「常識」だったという。
ただ、この手の話は、ビッグモーター、中古車販売業だけに限らない。
高齢者住宅、介護施設でも同様の、「認定調査の不正」「ケアマネジメントの不正」「介護報酬の不正請求」が横行している。自宅で要介護一の人が高齢者住宅に入ると要介護四になり、アセスメントに基づかない利益誘導型のケアプランを作成し、行っていない介護サービスの請求をする。その詐欺の被害者は、利用者・家族にとどまらず、社会保険制度、全国民であり、その総額は数兆円規模に上る。表面化すれば、ビッグモーターどころの話ではなく、大騒ぎになるだろう。
それが、本当にいつまでも発覚しないと思っているのだろうか。
それとも、彼らと同様に「不正が行われているとは知らなかった…」「組織ぐるみではない。介護の現場にすべてを任せていた…」「ご利用者様のためにと懸命に頑張ってきたのに、不正をした一部のスタッフが許せない」と逃げの会見をする腹積もりなのだろうか。
今後、社会保障財政の悪化に伴って、医療介護保険の不正請求に対する社会的な視線は確実に厳しくなる。不正が発刊すればケアマネ資格だけでなく、その土台となる介護福祉士や社会福祉士、看護師などの資格もすべてはく奪になる。個人で数千万円の返還請求を負い、詐欺罪で立件されるケースも増えるだろう。もし、ケアマネジメントの不正の中で、転倒死亡、誤嚥窒息、溺水などで死亡事故が発生すれば、それが通常の介護では避けられない事故であったとしても、業務上過失致死、重過失で実刑にもなりうる。
そんな経営者のもとで安い給与で働かされ、すべての責任を負わされ、詐欺を命じた会社・経営者からも告発される介護スタッフ、ケアマネジャーはあまりに哀れだ。
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