『75歳になれば、親子の距離感を見直そう』という話をしました。それは、親のためだけではありません。子供家族の介護負担の経験にとても重要だからです。
それは、介護予防や認知症の早期発見に直結しています。
【参 照】
75歳になれば、親子の距離感を見直そう 🔗
高齢期の生活リズム・生活環境の変化を見逃さない🔗
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『そろそろ、親の介護のこと、これからの生活のこと考えないといけないな』
『週に一度、電話をしようか、今度、実家に戻った時に話をしてみようか』
そんな風に、考えておられる方は多いと思います。

いま、何か困っていることはないか。将来の生活のこと、介護のことをどう考えているのか。また、どのくらい年金があるのか、借金はないのかなど、お金の話も大切です。でも、なかなか、上手く話しかができるか…、どんな風に切り出せばいいか…、と悩んでいる人も多いのではないかと思います。
ここでは、多くの人がやりがちな失敗、注意点についてお話します。
注意点① 感情的になったり、イライラしたりしない
まず一つ目は、最初の一つは、感情的にならない、イライラしないということです。
介護や老後の話は、小さなボタンの掛け違い、ちょっとした言葉のやりとりで、感情的になりがちです。
『認知症になんかならない、お前らに迷惑はかけない』『ボケて、早く死ねというのか…』と言われて、『じゃあ、勝手にしろ、呆けてもしらないからな。孤独死でもしろ』と、感情的にこじれてしまうと、介護や将来の話はできなくなってしまいます。

これは、笑い話ではなく、結構ありがちです。
頑固なお父さん、勝気なお母さん、なかなか冷静に話ができません。
それは、子供側もそうです。仲の良い、いつも温和な地域包括支援センターの社会福祉士のベテラン相談員でも、『自分の親と介護の話をするときは、イライラすることがある』と笑っていました。学校の先生でも、「自分の子供の宿題を見ている時は腹が立つことがある…」と言います。親子関係というのは、そんなもんです。
だから、最初は「心配しているよ」ということが伝わるだけでも十分です。最初から、介護の話とか、お金の話なんてしなくていいのです。プロの相談員、第三者になったつもりで、聞き役に徹しましょう。
ポイント② 子供の意見を押し付けない
二つ目は、自分の意見を押し付けないということです。
これも、真面目な家族ほどやってしまいがちなミスです。
テレビや新聞でも、老後生活のヒントのような情報が増えてきました。そうすると、「テレビでやっていた」「大学の先生が言ってたから」「こっちのほうが安全だから」と、押し付けてしまいがちです。
でも、親の人生、親の生活です。例えば、自分達がお金を出すからとIH.コンロに変えたとしても、これまで作っていた得意料理の微妙な火加減ができなくなって自信を喪失、料理をしなくなり、そのストレスによって、認知症の引き金になるというケースもあります。「お金はこっちで払うから…」と、子供が良かれと思っていったことでも、親の生活にプラスになるとは限りません。

「最近、高齢者の自動車事故が増えていて不安だ…」
「あの石油ストーブ古いから、大丈夫かなぁ…」
考え始めると、あれもこれもと、たくさんあるはずです。ただ、「実際に軽い事故を何度も起こしている」「小火になりかけたことがある」といったレベルでなければ、押しつけではなく、お願いベースで話をしましょう。
もう一度言います。
親の介護に向き合うのは、親のためではなく自分のため、子供家族の生活のため、イザ介護のときに慌てないようにするためです。イライラしそうなときには、深呼吸をして、できるだけ穏やかに、急がず、ゆっくりと話をしましょう。
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