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認知症の初期症状は『家族』にしか気づけない



 認知症というのは、病名ではなく症状です。
 アルツハイマーや脳血管障害など、脳に関わる病気が原因で発症します。
 その原因は様々ですが、総じて言えることは、認知症の発症率は、年齢が上がるにつれて高くなっていくということ。その多くは進行性のものであるということ。そして、そのまま放置しておくと、どんどん進行し、現代医学では、元の状態に戻すということができないということです。


 ただ、認知症全体の85%を占めるアルツハイマー病や脳血管障害は、治すことはできなくても、その進行を抑制できるようになっています。そのため認知症は早期発見・早期診断・早期治療が何よりも重要なのです。

 高齢になると、というか40代、50代くらいから、昨日、一昨日何を食べたか、思い出せなかったり、人の名前が出てこなかったり…ということはままあります。「ほらほら、あの女優さん…名前なんだっけ…」「朝ドラのほら、この間、ほら…」とか、私にもあります。「この人会ったことあるなぁ…、お名前聞くの申し訳ないなぁ…」とか日常茶飯事です。

 高齢期になると、それはより激しくなります。
 健忘といわれますが、この加齢による物忘れと認知症による物忘れは何が違うのか。加齢による物忘れは、昨日なにしたのか、何を食べたのかという体験の一部を忘れたり、思い出せないという自覚があると言われています。
 一方の認知症による物忘れは、昨日、人に会ったという行為、食事をしたという行為そのものを忘れてしまいます。また、思い出せないという自覚そのものがありません。


 この二つは、従来は全く違うものだと考えられていましたが、最近では、この二つの間に、軽度認知障害という状態があることがわかってきました。この段階であれば、治療することが可能だと言われています。
「でも、専門家ではないから、その微妙な違いなんてわからない」
「一緒に暮らしていないから、その違いは判断できない…」
 そう思うかもしれません。
 確かに、認知症の土台となるアルツハイマー病などの疾病の確定には、MRIなどの検査や医師の診断が必要です。しかし、認知症の初期症状を発見するのは、医者ではなく家族にしかできないのです。


 医師や専門家であっても、相当にその症状が進まない限り認知症かどうかは、専門的な検査をしないとわかりません。でも、家族だからこそ、一緒に生活していないからこそ、初期症状に気付くポイントがあるのです。
 それは、「これまでの本人の生活や性格と変わった…」と感じた時です。

 例えば、「キッチンに洗い物が溜まったまま放置されている」というケース。普段からズボラな人もいますから、これだけで認知症の初期症状だとは言えません。でも、「あれ? お母さん、きれい好きで、これまでこんなこと一度もなかったのになぁ~」「ちょっと変だなぁ~」と、家族はその異変を気づくことができます。
 「新聞が読まれた形跡のないまま、放置されている」も同じです。「お父さん、いつも新聞、隅から隅まで読むのが日課だったのに、どうしたのかな~」と、これまでとは違うと気づけるのは家族だけです。


「洗濯ものが畳まずに放置されている」
「日めくり、カレンダーが一ヶ月、全く変わっていない」
「あれだけ、プロ野球好きだったのに、全く興味を示さない」
「乾電池や醤油など、すぐには使わないものがたくさん買ってある」
「大切にしていた自動車に凹みや傷がついたまま、放置されている」
「冷蔵庫の中に賞味期限切れの食品がたくさんある」

 こんなことも「認知症の初期症状の可能性がある」と言われていますが、本人の性格、生活状況にもよりますから、一つ一つは、特段、認知症の症状というわけではありません。でも、特別なことではなくても、『あれ、お父さん、お母さん、いままでこんなことなかったのにな…』と、家族だからこそ目に付くことはあるはずです。
 それが認知症の初期症状です。
 その変化を見つけることは、家族にしかできないのです。

 認知症の中核症状といわれる見当識障害の進行の段階はある程度分かっています。

【第一段階】 時間感覚の認識の低下です。時刻や日付、曜日がわからない
【第二段階】 方向や場所の認識の低下。家の場所や方向がわからなくなる
【第三段階】 人間関係の認識の低下です。家族の名前や関係性がわからなくなる

 そのため、認知症対策は、最初の時間感覚の認識の低下でストップできるかどうかです。
 その一番良い方法は電話です。それは子供家族から電話するのではなく、決められた時間・曜日に親から電話してもらうことです。これが間違いなくできている場合は、時間感覚の認識は低下していないということです。


 かかってこなかった時の対応もチェックポイントです。
 「あぁ、ゴメンゴメン、友達から電話がかかってきて、気になってたんだけど…」
 「昨日やったなぁ、なんやうとうとと寝てしもうてて・・・」
と言うのであれば心配ありません。
 一方で、「電話をしたはずだ」「お前の勘違いだ」と言い張ったり、「そんな約束はしていない」ということになれば、認知症の初期症状の可能性が高くなります。
 「あれ? ちょっと変だぞ?」と認知症の尻尾を掴めるのは、家族だけなのです。




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