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怪しげな介護コンサルタントが跋扈する理由


「経営コンサルタント、主に介護系のコンサルタントをしています」というと、すごいですねぇと親し気に声をかけてくれる人もいれば、「コンサルティングって何をするんですか?」と興味を持っていただける方、中には、「あぁ~」と胡散臭そうに応答される方もいます。

無理もありません。
そもそも、経営コンサルタントというのは、極めて曖昧な仕事、職種です。
大手のコンサルティング会社もありますが、大半は中小企業で、私のような自営業というより、自由業のような個人経営のコンサルタントもいます。不動産、建築、教育、金融、保険、IT、AI、ロボット、医療、介護など他業種にわたり、学者のように市場調査や市場分析を行う人もいれば、「コンサルタント」という役職の営業マンや、何をしているのかわからないブローカーまで、その内容も様々です。必要とされる資格や経験はなく、どこでも、だれでも、明日からでもコンサルタントになれます。

コンサルティングを隠れ蓑にした脱税や贈収賄、補助金の不正指南は数知れず、コロナ禍でも多数暗躍しており、「自称コンサルタント」は経済犯罪の代名詞でもあり、俗に経済ヤクザと呼ばれる、多くの反社会的組織の方々も「コンサルタント」を名乗っています。「経営の専門家・アドバイザー」と「口先だけの無責任や虚業」という二つのイメージが相半する奇妙な仕事です。

これは、介護業界でも同じです。
きちんとしたコンサルティングを行う会社もありますが、一方で、大手であっても「介護に一度も携わったことのない人がコンサルタントか…」とか、提案内容も「それ不正・違法なのにな…」というところもあります。「ケアマネジメントってケアプランのことですよね?」と聞いてくるご家族さんのような方もいます。

前回の「介護コンサルタントに騙されたという経営者の特徴」という、コラムを書きましたが、そのコンサルタントが作ったという資料、事業計画を見せてもらうことがあります。我田引水にまみれた「介護需要が増える」「高齢者住宅が足りない」という一本鎗のデータばかりで、エクセルのコピペで作った事業計画は、足し算引き算もできておらず、高額な設計料・建築費なのになぜだか利益率、パーセンテージが驚くほど高いという共通する特徴があります。
残念ながら、介護業界、特に介護コンサルタントは、その人が善良か、悪徳か、クライアントをだます意図があるのか、一生懸命やっているけれど結果が伴わないのか別にして、能力が絶対的に不足している怪しげなコンサルタントが圧倒的に多いのです。

そこには、二つの理由があります。
一つは、超高齢社会、介護需要の高まりに対する期待値が大きいということ。
「高齢者、要介護高齢者が増加するので、介護需要は高まる」
「核家族化、家族の遠距離化で、家族介護機能は低下、介護の需要は高まる」
「独居高齢者、高齢夫婦の増加によって、高齢者住宅の需要は高まる」
これはすべて事実です。「需要がたかまるから、数が足りていないから、もっと作るべきだ、事業性があるはずだ、儲かるはずだ…」と思うのは当然のことです。実際、賃貸マンションなどを手掛ける大手デベロッパーの複数の営業マンからも、「遊休土地の資産活用で、一般の賃貸マンションには見向きもしない人でも、サ高住、高齢者住宅と言えば話を聞いてくれる」という話を聞きます。

もう一つは、介護は公的な介護保険に基づくビジネスであり、サ高住や介護保険施設には補助金も出るということです。「コロナ関連」だけでなく、補助金ビジネスには、「どうしたら補助金がもらえるか」という、怪しいコンサルタントが群れを成します。「皆さんお馴染み、参議院議員の〇〇先生とはツーカーの仲です」などと、安い政治家とのつながりをアピールする人も星の数ほどいます。
例えば、サ高住の新規開設には数千万円の補助金がでますし、税制優遇もあります。これは「それだけ自己資金が安くなる」ということではなく、国がその事業の成功を後押し、担保しているかのように説明するコンサルタントもいます。それをそのまま受け取って、「サ高住は国のお墨付きの事業だ」「成功間違いなし」と誤解して参入する人も少なくないのです。

高齢者住宅は、数億円規模の資金投入が必要となる不動産ビジネスです。
普段なら、「借金をしてビジネス」なんて考えないような人でも、「介護・高齢者住宅の需要は確実に高まる」「補助金がでる」という餌につられて、「土地の有効利用」「相続税対策としても有効」「成功を全力でバックアップします」と、怪しげな介護コンサルタント、高齢者住宅コンサルタントに言われて気持ちが揺らいでしまうのです。

ただ、介護経営はそう簡単な話ではありません。
介護の需要が高まることは事実ですが、「需要が高まる=事業性が高い=成功率が高い」という等式は成り立ちません。需要が高まる一方で、介護人材の確保は難しくなっていますし、財政状況を考えると、介護報酬の改定は事業者にとって厳しくなる一方だからです。対象は身体機能、認知機能の低下した高齢者、要介護高齢者ですから、事故やトラブル、家族からのクレームも多く、サービス管理や人材育成など、高いノウハウがなければ事業安定しません。

「補助金や税制優遇で国が事業の成功を後押ししている」というのは全くの間違いです。補助金をもらってしまえば、途中で他の事業に転換することも、廃業することもできません。
また、そもそも「高齢者住宅の事業性が高い」というのであれば、わずか数千万円の補助金がなくても、税制優遇をしなくても、不動産事業者はこぞって参入するはずです。しかし、実際は、いまでもほとんどの賃貸マンション、賃貸アパートは高齢者お断りです。それは認知症トラブル、孤独死などの問題が大きく、「高齢者住宅の経営は難しい」ということがわかっているからです。
実際、民間の大手不動産事業者は、いくら補助金、税制優遇という餌をぶら下げられても、どこもサ高住に参入していません。そこからも「補助金=国が支援=事業性が高い」というのは、まったくの幻想だということがわかるはずです。

つまり、世に溢れている「高齢者が増える、介護需要が増える、高齢者住宅が足りない」「今なら補助金がでます。国も高齢者住宅や介護保険施設を支援しています」と、高齢者住宅への参入を促している、セールスしているコンサルタントやデベロッパーは、悪気があるなしにかかわらず、「介護のかの字もしらない」、悪質な商品・ビジネスを高額で売りつける営業マンなのです。
「コンサルは何でもよく知っている」「コンサルに任せれば大丈夫」という考え方は、非常にリスクが高いのです。






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