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地域包括ケア時代に起こること ~責任は国から自治体へ~


地域包括ケアシステム構築の目標は2025年。今後、それに向けて介護や医療政策に関する権限が国から自治体に移譲される。合わせて、将来的には市町村や都道府県の負担割合の増加、調整交付金を含めたインセンティブの高い財源移譲方法が検討されることになる。

【特 集】 地域包括ケアは超高齢社会を救う「魔法の呪文」ではない (全8回)


「地域包括ケアは、高齢者政策の事業計画の立案・推進方法の変化だ」と説明してきましたが、「いざ、来年度からスタート」というタイプのものではありません。
これまでも、形式上は、各市町村の介護保険の事業計画は各市町村で策定していましたし、現在のところ、地域包括ケアシステムの推進も、国から「地域包括支援センターを作りましょう」「地域ケア会議を実施しましょう」という指示、指導を受けて、進めているにすぎません。
「地域包括ケアシステム」への移行を行うためには、二つのステップが必要です。

一つは、自治体の意識の変革
地域包括ケアが進まない理由(🔗)で述べたように、これまでの「国の指示に従っていればいい」というトップダウンの意識をすて、それぞれの地域の超高齢化に対する危機意識、責任感を持って、マネジメントの意識・ノウハウを高めること。
そして、もう一つが、制度体形の変更
それぞれの自治体が、それぞれ独自の「地域包括ケアシステム」が構築できるように、国の行っている業務や権限、財源を移譲することです。

そう考えると、今はまだ「ファーストステップ」の前段階だといって良いでしょう。
自治体によって「責任感・危機感」「マネジメントの意識」に大きな差が生まれてきています。
ただ、どんどん高齢化の波は押し寄せていますから、すべての市町村のマネジメントの意識、ノウハウが十分に高まるまで、待っているわけにもいきません。地域包括ケアシステムは、2025年をめどにその体制を構築することになっています。そのため、この4~5年の間に、「地域包括ケアシステム」の構築に向けて、制度改定が一気に進められるでしょう。

「地域包括ケアシステム」の範囲は「住まい・医療・介護・予防・生活支援」と非常に広いものです。
また「それぞれのサービスをどの地域に配置するか」「市町村全体でどれだけ増やすか」といった、単純な「介護や医療のサービス量の整備計画」ではありません。高齢者の生活を支えるための「ネットワークの構築」、介護・医療サービス事業者に対する「指導監査方針」、更には低所得者に対する「補助・減額施策」など多岐にわたります。

今の時点で、「制度のどこが、どのように変わる」と断言できるわけではありませんが、特に「高齢者の住まい」に関しては、自治体ごとに、大きく体制や利用方法が変わると考えています。
ここでは、高住経ネットの視点で、これからの地域包括ケアシステムによる、「高齢者の住まい政策」の変化について、その方向性を予想します。

『施設・住宅』から『高齢者の住まい』への変化

「地域包括ケアシステム」の対策の一つとして明記されているのが「高齢者の住まい」という言葉です。
現在、高齢者の住宅施策は、国交省と厚労省に分かれ、「あっちは施設、こっちは住宅だ」と大混乱しています。民間の高齢者住宅が、有料老人ホームとサ高住に分かれている理由については誰も説明できませんし、「介護付」「住宅型」といった、介護保険適用の違いも同様です。更には老人福祉施設・介護保険施設である「特養ホーム」と民間の「介護付有料老人ホーム」とのターゲットの違い、役割の違いも明確ではありません。

この政策の失敗を覆い隠すように、厚労省は数年前から、「サ高住も有料老人ホームも、そして特養ホームも『高齢者の住まい』だ」と言い始めています。それが地域包括ケアシステムの中で、施設でも住宅でもない「住まい」という言葉に集約されているのです。そこには「グループホーム」「養護老人ホーム」「ケアハウス」「軽費老人ホーム」なども含まれます。
つまり、「施設か住宅か」ではなく、それぞれの地域で激増する重度要介護高齢者、認知症高齢者に対応するために、特養ホーム、サ高住、有料老人ホームなど、どの制度を活用して「高齢者の住まい」を確保するのか、それぞれの自治体で自由に考えてください・・という方向に変わるのです。

介護・医療の整備計画・補助制度の変化

現在、「特養ホーム」「有料老人ホーム」「サ高住」は制度的に明確に分離されています。
特養ホームは認可、有料老人ホームは届け出、サ高住は登録制度です。
特養ホームは認可がなければできませんし、社会福祉法人から立ち上げるとなると相当困難です。有料老人ホームは「標準設置運営指導指針」に基づいて事前協議が必要ですし、「介護付(特定施設入居者生活介護)」の指定を受けるのであれば、その指定枠が必要です。
一方のサ高住は「登録制」です。登録用紙を一枚出せば、誰でもすぐにでも開設できます。

しかし、このように行政のコントロールが利かない、矛盾だらけの制度では、計画的に「地域包括ケアシステム」の中で、「高齢者の住まい」を構築することはできません。そのため、「有料老人ホーム」「サ高住」は統合され、それぞれの市町村の「高齢者の住まい整備計画」にもとづき、「設置エリア、定員規模、対象、介護類型、おおよその価格帯、おおよそのサービス内容」が示され、それに基づいて整備されることになるでしょう。合わせて、高齢者住宅に関する建物設備基準や運営基準は、自治体が自由に設定できるように大きく緩和されます。
特養ホームやサ高住など、現在の国からの補助金は廃止となります。
補助が必要な事業については、それぞれの市町村・都道府県の「単費=自主財源」によって行うことになります。

対象者の明確化・指導監査体制の変化

3点目は、対象者の明確化・指導監査体制の変化です。
現在、特養ホームなどの老人福祉施設の対象者については国で規定されていますが、「高齢者の住まい」という枠の中で整備が進みますから、それぞれの対象についても、弾力的にそれぞれの自治体で決めるということになります。

指導や監査についても、自治体で独自の指針、内容を定めることになります。
サ高住で行われている入居者の「囲い込み」、その存在自体が不正な「無届施設」など、多くの自治体で高齢者住宅の「不良債権」を抱えています。認定調査やケアマネジメントの不正が横行し、不必要な介護、医療費の押し売りによる財政悪化に拍車がかかっています。財政的な問題だけではなく、「身体拘束」「身体拘束」「介護スタッフによる虐待」など、様々な問題が噴出しています。

高齢者住宅は、入居者が生活している以上、「不適切だから」「現行法に一致しないから」と言って、すぐにつぶすことはできませんが、そのままにしておくということもできません。
地域包括ケアは、地域介護医療ネットワークであり、劣悪な事業者を自治体が容認すれば、地域包括ケアシステムそのものが崩壊してしまうからです。
それぞれの自治体で、「囲い込みの基準」「認定調査・ケアマネジメントの厳格化」「届け出の徹底・従わない事業者への罰則」などの独自の基準を設けて、公平な競争環境を整えなければなりません。

低所得者対策・減額制度の変化

最後の一つは、低所得者対策・減額制度の変化です。
現在、特養ホームの費用負担は、第一段階(生活保護)~第四段階(155万円以上の収入)の4つの段階に分かれていますが、基準負担額は二倍程度になり、合わせて負担基準も10段階~20段階程度に細かく設定されることになります。財源が限られている以上、「特養ホームだから低価格」というのではなく、他の高齢者住宅との入居者の負担とのバランスも勘案し、支払い能力の高い人には負担をしてもらうというのが、これからの考え方です。
一方の、有料老人ホームやサ高住などの民間の高齢者住宅に対して、低所得の高齢者でも入居できるように、家賃補助や食事補助が行われることになります。それぞれの自治体で基準を設け、自主財源で行うことになるでしょう。




以上、ポイントを四つ挙げましたが、これは「高齢者の住まい」だけではありません。
「地域包括ケアシステム」は、「介護医療の整備計画」「ネットワークの構築」「指導監査体制の強化」「低所得者対策」などを含んだ概念です。これらを一体的に行うことによって、それぞれの地域ニーズ、地域特性に合わせた「効率的・効果的」「公平で長期安定的」な「地域包括ケアシステム」の構築ができるのです。
また、今後は、権限だけでなく、意識の改善を促すために、一部財源の移譲や市町村、都道府県の負担割合の増加、更には、「地域包括ケアシステムの進捗状況」に合わせ、調整交付金などを含めたインセンティブの高い財政政策がとられるでしょう。


「これだけは知っておきたい」 地域包括ケアシステムの基本 (8コラム)

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【TOPIX】 キーワードを切り取る、超高齢社会を読み解く

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