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介護コンサルタントを利用するメリット・デメリット



「経営改善のために介護コンサルタントを使うべきか否か・・・」。
そんなことを聞かれることがありますが、「もちろんYES」と答えたいところですが、実際はYesともNoとも言えないところがあります。優秀な経営コンサルタントを入れたから、必ず経営が上向くというものではないからです。

【介護コンサルタントを使うメリット】

介護サービス事業、特に介護保険施設や高齢者住宅事業は、経営者、介護スタッフ、利用者、入居者が限定されるため、自分達のやっていることが正しいのか、間違っているのかがわかりません。更に、新規参入事業者が多い新しい事業ことから、本人にそのつもりがなくても創業者の意向が強くなりがちで、残るのはイエスマンばかりになり、閉鎖性に拍車をかける原因になっています。

実際、経営者や管理者と話をしていて「これはとてもいい方法ですね」「素晴らしい取り組みですね」というと、「えっ?」と驚かれることもあります。もちろん、反対に自画自賛されても、コンサルタント的には「なんで、こんな意味のない無駄なことをしているのか」「これは見つかれば一発アウトだぞ」ということも多いのですが、それが自分達ではわからないのです。

これは中小事業所だけでなく、大手事業所にも言えることです。
経営者・経営陣が介護の現場をよく知らない、介護をしたことがないという介護企業も多く、目先の数字しか見えていないため、離職率の増加やスタッフ確保ができない、事故やトラブルが増えてきた、入居率が落ちているなどの経営悪化の指標が見えてきても、その原因がわからないため、必要な対策をとれません。認定調査の改竄や囲い込みなどのケアマネジメントの不正が横行している事業者も同じことが言えます。不正はどこでもやっているものではありませんし、「不正が見つかった時点」で事業の継続は困難になります。後戻りができない、崩壊確実な橋を仲間である介護スタッフに渡らせるようなもので、経営者としては最悪の選択です。

経営コンサルタントを使う最大のメリットは、「事業・経営の可視化」です。
介護コンサルタントは、経営や事業運営のポイントを知っているというだけでなく、それを蓄積するために、たくさんの事業者、たくさんの事例を知っています。「自分達の経営力・サービス力はどの程度のものなのか」「このまま介護経営を続けることができるのか」を客観的に知るためには、外部の介護コンサルタントの導入はとてもメリットのあることだと考えます。

【介護コンサルタントを使うデメリット】

残念ながら、メリットだけではありません。
上手くアジャストできなければ、「デメリット」も見えてきます。
① 経営陣が事業経営・運営に対する意欲を失ってしまう
② 経営コンサルタントに対する依存心が高まってしまう
③ コンサルタント導入に反発して、退職してしまう中間管理者がいる
 
一つは、経営陣が事業経営・運営に対する意欲や責任感を失ってしまうことです。経営者・管理者は「なにか経営上、サービス上の課題はないか」をみずから発見し、積極的にその対策をとらなければならないのですが、「経営上のアドバイスを受ける」ということが常態化してしまうと、経営者・管理者に最も重要なアンテナ・感度のような鈍ってしまいます。「より質の高いサービスを提供したい」「より質の高い経営をしたい」とコンサルティングを導入したはずなのに、結果として、介護経営に対する意欲、責任感を失わせているのではないかと感じることがあります。

これは二つ目の「コンサルタントに対する依存心」につながっています。
コンサルタントをしていると、「コンサルティングではなく経営陣の一員に加わってもらえないか」という相談、依頼があります。これは全てお断りをしています(というか最初にお話ししています)。それは、コンサルティングはあくまでもアドバイザーであり、経営代行サービスではないからです。
「コンサルタントに任せれば大丈夫」と依存心がたかくなると、みずから経営課題やサービス課題を発見、改善しようという意識がなくなり、「コンサルタントに言われたことしかしない・できない」という本末転倒の事態に陥ります。何の責任もない、責任をとることもできないコンサルタントが経営を仕切り、その人がいないと経営できなくなるというのはガバナンスとしては最悪です。

そして三つ目が、コンサルタントに対する反発です。
大手の介護サービス事業所から経営者向けセミナーを依頼されることがありますが、社長個人はコンサルタント導入に乗り気でも、その他の経営陣は後ろ向きということは多々あります。「胡散臭い奴がやってきた」「こんなやつの言うことなんで聞くもんか」という態度をあからさまに取る人もいます。そうでなくとも、歓迎されているのか、そうでないのかはなんとなくわかるものです。
信用されないコンサルタント側にも問題があるのですが、他の経営陣からみれば、自分の存在を否定されるような、能力不足を指摘されているような気分になるのかもしれません。
「コンサルタントに、あれこれ経営・サービスに口出しされるのは不愉快だ」
「自分達がこれまでやってきた経営・サービスを否定されたくない」
このような感情的に意思疎通が難しい事業所では、コンサルタントを入れても混乱するだけで、逆効果で、意味があるとは思えませんし、一緒に協力して事業を推進することは難しくなります。実際、一部の経営陣や中間管理者が反発して退職してしまうということも起こっています。退職にまで至らなくても、感情的な反発が起きると、コンサルティングによる改善が進みませんし、結果としてコンサルタントも手を引き、経営の分断だけが残るという悲しい結末になってしまいます。

これらのデメリットは、コンサルタントの責任というよりも、関係性の理解です。
「コンサルタントとは何か」「その知見をどのように活用するのか」という理解が進んでいないからです。トップである経営者が、それを理解し、他の経営陣にその活用方法を伝えることができなければ、コンサルタントを導入しても失敗に終わるケースは多いのです。





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