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認知症を怖い病気にしているのはあなた自身


 要介護の中でも、多くの高齢者、家族が恐れているのが「認知症」です。
 認知症は、アルツハイマー病や脳血管障害など、脳に関わる様々な病気が原因で発症します。高齢者だけでなく、交通事故による頭部外傷(高度機能障害)や脳腫瘍などのガン、プリオン病などの難病、髄膜炎、脳炎、薬物中毒などによっても、認知症の症状が現れることがあります。
 
 原因となる疾患によって、その症状の現れ方にに違いはありますが、いずれも、記憶障害(物忘れ)、見当識障害(時間・場所・人物がわからなくなる)、理解力・判断力の低下(家電の使い方、会話の辻褄が合わない)、実行機能障害(料理の手順がわからなくなる、仕事や家事の段取りができなくなる)、失語・失認・失行(言葉がでない、今までできていた動作ができない)などの中核症状が現れ、それが進行すると、妄想や抑うつ、幻覚妄想などの心理的症状、興奮や徘徊、攻撃性や不潔行為(弄便)などのBPSD(精神症状、行動障害)に広がっていきます。



 「認知症は高齢者の病気」だと思われているのは、全体の95%を占めるアルツハイマー型や脳血管障害、レビー小体型やそれらの混合型による発症率は、高齢期に年齢が上がるごとに高くなっていくからです。つまり、高齢期の認知症というのは、プリオン病や脳炎などの若年層のそれは違い、骨密度が低下したり、筋力が低下したり、血管が固くなっていくのと同じ、脳の老化現象なのです。
 だから、「認知症にはならない」と頑張ってみても、「認知症になったらどうしよう」と心配してもしなくても、僕もあなたも、ほぼ確実に認知症になるのです。そして、若返りの薬がないのと同じで、現代の医学では元に戻すことはできないのです。


 しかし、一昔前と違い、「認知症にならないように祈るしかない」と言う時代ではありません。
 認知症に対する治療は日進月歩で進んでおり、85%を占めるアルツハイマー型や脳血管障害による認知症は、治癒することはできなくても、その進行を抑制できるようになっています。つまり、早い段階で発見し、早期診断、早期治療ができれば、認知症は怖い病気ではないのです。

 しかし、やっかいなことに、その早期発見が難しいのが認知症の特徴です。
 それは医学的に難しいのではありません。
 これまで「痴呆・ボケ症状」と言われており、認知症という言葉に置き換わったのはまだここ20年程度のことです。また、脳血管障害による認知症は、「まだら認知症」と呼ばれ、しっかりしていたり変なことをいったり、朝と夜とで症状の出方にムラがあることが知られています。
 「〇〇さんの奥さん、認知症で徘徊して警察に保護されたんやって…」
 「あそこの、旦那さん、痴呆で家の中で暴れて大変やったんやって…」

 そんな、ひそひそ話もたくさん耳にしています。 

 そのため、「時間を間違え夜中に電話してきた」「昨日と起きたことと同じ話を繰り返している」など、「ちょっと変だな?」「認知症かも?」と思っても、家族や周囲はもう少し様子を見よう…と目を逸らせてしまいます。
 本人も同様に、「わしはボケてはおらん、バカにするな」「ちょっと勘違いしただけ…、わたしは認知症にはならない」と、感情的に否定してしまいます。認知症になると感情のコントロールができなくなりますから、温和な性格だった人が、別人になったように激高したりもします。
 

 
 この早期発見が何より重要だというのは、悪性新生物(ガン)とよく似ています。
 ただ、ガンの場合、周囲は気づかなくても、下痢が続く、ひどい腹痛がするなど、どこかの段階で自覚症状が現れます。
 しかし、逆に認知症は、周囲が「認知症だ」だとわかっていても、進行すればするほど、自覚できないのです。本人がそれを認めない限り、家族であっても引きずって診察や検査を受けさせることはできません。そうこうしている間に、どんどん進行してしまうのです。
 つまり、医学の進化によって、すでに認知症は怖い病気ではないのに、認知症に対する正しい理解ができていないこと、『認知症にはならない』と頑なに診察・診断を拒むことが、その症状をどんどん進行させ、家族を巻き込んで、取返しのつかない怖い病気にしてしまうのです。




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