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【BOOK】 介護の仕事に未来がないと考える人へ (書籍紹介)

大きく変わる働き方・労働の価値・強化基準

これからの仕事、これからの働き方、これからの介護業界


「介護の仕事って、オムツを換えたり、ご飯を食べさせたりすることだよね」
「家族でもできるんだから、やる気があれば誰でもできるよね」
そう思っている人がいるかもしれません。
しかし、「プロの介護」と「家族の介護」は基本的に違うものです。

~高齢者介護は専門性の高いプロの仕事~

高齢者住宅に入居する高齢者の「排泄介助」を例に挙げてみましょう。
まずは、どのような介助を行っているのか、オムツを使用しているのかなど、現在の排泄方法を確認します。合わせて身体機能や尿意、便意の有無を把握し、転倒などのリスクを考えながら、最適な排泄の方法を探っていきます。
「尿意や便意はあるので、コールを押してもらい、トイレでの自力排泄を支援しよう」「排泄の間隔を把握し、事前に声掛けをしよう」「間に合わない時があるので、リハビリパンツを履いてもらおう」などの目標、計画を立て、家族や本人、関連するスタッフで、介助方法や注意点を検討、共有します。

「最適な排泄方法」は、一人ひとり違います。
また排泄は人間の尊厳にかかわる行為です。それが適切なものでなければ、転落や転倒などの事故につながりますし、うつ病や認知症の発症の原因にもなります。
右麻痺、左麻痺など身体状況によっても、ベッドの位置や向き、トイレまでの生活動線、必要な手すりの高さ・位置は変わってきますし、時には作業療法士などのリハビリの専門職種、福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーターとの連携も必要になります。

排泄時には「尿量」「尿の色」「排便の量」「排便の状態・色」などから日々の健康状態もチェックします。「排便が数日間ない」「尿の色が悪い」といった場合、看護師や医師と相談しながら対応を検討します。身体に発疹がないか、オムツかぶれや床ずれなどの予兆はないかといった点も確認します。
日々の変化だけでなく、加齢によって要介護状態も変化していきますから、その変化のサインを見逃さないことも需要です。

このように、質の高い排泄介助を行うためには、介助技術だけでなく、高齢者の身体機能や認知症などの知識、声掛けなどのコミュニケーション技術、更には食事や栄養、感染症や食中毒、福祉機器や生活環境、事故リスクなど、広い範囲の高い専門性が必です。
それは「入浴介助」「食事介助」「移動介助」「見守り介助」なども同じです。
現代の高齢者介護は、「オムツ交換」「食事を食べさせること」ではなく、高齢者一人ひとりの要介護状態、希望に合わせて生活を支援することです。「家族の介護よりも、プロの介護の方が良い」という単純なものではありませんが、現代の高齢者介護は、科学的な根拠に基づく、プロの仕事なのです。

介護業界は、介護報酬のアップを求めていますが、それは、「排便の処理が大変だから」「夜勤が忙しくて大変だから」といった、素人発想の話をしているのではありません。
真面目に医療に取り組む医師の生活が安定しなければ、質の高い医療は受けられませんし、医療の知識も技術も発展しません。同様に、介護報酬は、述べたような専門的なプロの介護を望むのか、「時間通りオムツ変えました。あとは知りません」といった、質の低い素人介護でよいのかを決めるものです。
認知症や要介護状態になった時にも、最後まで自分らしく快適な生活をしたいのであれば、社会としてその手当てをしなければならない、と言っているにすぎません。
介護労働を語るとき、「人に優しい仕事」「排泄など大変な仕事」などと、表面的で感情的な議論になるのは、この「介護の専門性」という視点がすっぽり欠けているからです。

~イメージ悪化の原因は素人事業者の台頭~

ただ、現在の介護スタッフ不足の原因は、介護報酬の低さだけではありません。最大の問題は、この「介護の専門性」というものを軽視し、毀損しているのが、当の介護サービス事業者や介護労働者なのです。

介護業界は、介護保険制度以降に事業者が激増したため、介護サービスの現場や基礎を知らない素人経営者が多いのが特徴です。コンプライアンスの意識も低く、「介護需要は高まる」「介護は儲かりそうだ」と安易に参入してきた事業者も少なくありません。
彼らは、目先の利益だけで、介護の質やその専門性には興味がありません。
高齢者の生活リズムを考えながら行う質の高い介護ではなく、「一時間に10人は排泄介助できる」といった機械的な介護を求めます。中には、利益誘導を目的としたケアプランの改竄や押し付け介護、介護報酬の不正請求を指示し、「高収益のビジネスモデル」だと勘違いしている人もいます。
それは社会福祉法人でも同じです。理事長や理事が地方議員で、その親族や天下り公務員が施設長、息子が事務長など福祉施策を私物化し、その収益を個人のお財布代わりに使っているような法人もあります。「介護の給与は低い」と言われる一方で、彼らの年収は一千万円を超え全国でその総額は数百億円に上ると言われています。
介護の専門性を理解しない素人経営者ほど「ご利用者は家族の一員として」「高齢者の笑顔が私たちへの報酬」などと聞いているのが恥ずかしいほどの美辞麗句を並べます。
介護は専門性の高い難しい仕事であることは事実ですが、「介護の仕事は大変すぎる」と離職した人と話をすると、その介護サービス事業所に問題があることがわかります。介護の仕事が大変なのではなく、素人経営者のブラック介護事業所で働くから大変なのです。

これは、一部の介護労働者も同じです。「要介護認定を重度化させるように調査票を偽造しろ」「区分支給限度額の上限までサービスを入れろ」「30分介護したことにして印鑑を押せ」という経営者の不正指示や不正請求に、唯々諾々と従っているケアマネジャーやホームヘルパーも少なくありません。
家族から意見やサービスに対する苦情を言われて、「文句があるなら連れて帰って、家族が介護すればいいじゃないか」などと、陰口をたたく人もいますが、それは、家族が無償で行っているレベル以下の介護しかできていないと、自ら認めているようなものです。
このような素人経営、素人介護で「専門性を評価しろ」「給与が低い、将来性がない」と嘆いているのは、あまりにも滑稽だと言わざるを得ません。

~二極化する介護サービス事業者~

もちろん、そのような素人事業者、素人介護ばかりではありません。
介護業界は玉石混淆だと言われますが、それはサービスの質だけに当てはまる言葉ではありません。
介護労働者の労働環境も同じです。
介護という仕事は、「ホスピタリティ」を基礎とした対人サービスです。「介護をしている人はいい人」という決めつけは好きではありませんが、人の気持ちの痛みがわかる、気持ちの優しい人の多い業界です。介護という仕事に熱意や誇り、やりがいをもって、働いている人がたくさんいます。
同様に、安全な労働環境を整備するために介護事故やトラブルなどのリスクマネジメントに取り組む事業者は増えていますし、積極的に介護スタッフのキャリアアップや資格取得を支援している事業者もたくさんあります。

「介護業界は仕事が大変なので、すぐに辞めてしまう人が多い」と言われますが、介護業界の離職率は、他の産業と比較しても、特段に高いわけではありません。離職率が低い事業者と高い事業者に、二極化しているのが特徴です。介護の離職率の平均は、16%程度と全産業と大きく変わりませんが、離職率が10%未満という事業者が全体の4割に上り、離職者が一年間ゼロというところも、少なくありません。

マスコミが「介護労働者の給与は低い」「介護報酬を上げるべき」と支援してくれるのはありがたいのですが、一部の素人事業者の劣悪な労働環境を取り上げ、「オムツ介助が大変」といった素人のコメントをとり、それが介護現場の全体の声であるかのように報道するのは、明らかに間違っています。

~大きく変わる労働の価値・評価~

本書は、「介護の仕事に未来がないと考えている人へ」というタイトルですが、「超高齢社会だから介護の仕事には未来がある」という趣旨で、書いたものではありません。
それは、「営業の仕事には未来があるか」「ITの仕事には将来性があるか」という問いと同じで、「本人次第」としか答えようがありません。
ただ、一つだけ確実に言えることがあります。それは介護だけでなく、どの仕事を選ぶにしろ、労働の価値やその評価基準は、新しいステージに変化しているということです。
現在、多くの企業で、労働者の賃金体系、評価基準は「年功序列」から「成果主義」に移行しています。業績や営業成績によって、給与や昇進、待遇は変わっていきます。
ただ、成果主義も、その会社が安定的に存続、成長しているということが前提です。
会社が倒産してしまえば、部長も専務もありません。再就職活動をしても、多くの人はそれまでの給与と同程度、それ以上の待遇を求めることは不可能です。これまでの積み重ねの中で、組織内で与えられていた評価と、個人の労働者、職業人として与えられる評価は違うからです。
また、ITやAI、ロボットによる産業構造の変化は、企業だけでなく、国家資格の価値さえも大きく変えています。高学歴で弁護士や税理士、歯科医などの難関資格を取得しても、年収が300万円、400万円程度という人もたくさんいます。10年後には、現在の仕事の約半分がロボットやAIに変わるだろうと予想する学者もいます。
一流大学を卒業したから、有名な大企業に入社したから、難しい国家資格をとったから、成長産業だから、というだけで一生安泰という時代ではないのです。

~市場価値の高い介護のプロになる~

現在、「働き方改革」が叫ばれていますが、それは、これまで「良い仕事」「安定した仕事」と言われていた社会通念が、ガラガラと音を立てて崩壊しているからです。
これからは、企業や会社という組織、概念そのものが大きく変わっていきます。
それに合わせて、仕事や働き方、その評価基準も大きく変化していきます。

労働の評価基準は企業内の「成果主義」を超え、「市場評価」の時代にはいっていきます。
それは、安定した給与、好待遇を求めるのであれば、労働者、職業人は、自らの労働の価値を企業内、組織内に求めるのではなく、これからの社会、業界における市場価値の向上を目指して働く必要があるということです。実際、多くの企業で、ヘッドハンティングが盛んに行われていますし、優秀な人材は、より高い給与、待遇で引き抜かれています。
特に、高齢者介護は、専門性の高いプロの仕事です。まだまだ需要が高まり続ける産業で、事業・サービスの中核となる人材も絶対的に不足しています。今でも優秀な管理者やケアマネジャー、介護看護スタッフには、他の事業者から高い給与で引き抜きの声がかかっています。それは、その人の仕事・能力が、個別企業に求められているのではなく、これからの社会に必要とされているからです。
今後、高いサービス管理や運営管理のノウハウを持った、優秀な介護スタッフやケアマネジャーは、さらに企業間で取り合いになるでしょう。
それは、戦国時代の武士の働き方に似ていると言えます。企業と、能力の高い労働者は、同じ立場にあります。気に入らない上司の元で、嫌々仕事をするのではなく、「この場所で働きたい」「この人と一緒に素晴らしい介護をしたい」と選択することができるのです。

ただ、そのためには、社会に必要とされる「介護のプロ」になる必要があるのです。
本書は、これから介護の仕事をやりたいと真剣に考えている人、介護の仕事の未来が見えないと悩んでいる人に書いたものです。
「介護のプロフェッショナルとは何か」
「どのような視点で、働く介護サービス事業所を選ぶのか」
「市場価値の高い介護のプロが身に着けるべき知識・技術は何か」

介護労働の未来について、一緒に考えてみましょう。

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