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【新書発売】高齢者介護はリスクマネジメントの時代へ 

介護のプロほど、いまの介護現場の働きにくさを知っている。
人材不足という介護業界最大の課題を前に、経営者、管理者ができることは何か
労働環境を守り、超高齢社会に対応した介護サービス事業者に進化するための
“戦略的リスクマネジメント”の在り方を、事業計画から現場レベルまで徹底解説



近年、ようやく介護業界にもリスクマネジメントという言葉が浸透してきました。介護報酬の中でも介護保険施設に対して「安全対策体制加算」として、事故防止に関する指針整備や安全対策の担当者、委員会の設置を推進しています。
私も各企業、各種団体等でセミナーや講演を行っていますが、この加算基準を含め、いまの介護リスクマネジメントにはいくつかの根本的な誤解があると感じます。


一つは、リスクマネジメントの対策強化は、介護現場だけの仕事ではないということ。
リスクマネジメントはその名の通り、介護サービス事業上発生する事故や、家族からの苦情・クレーム、感染症、災害などのリスクを適切に管理・マネジメントすることです。「わたしたちは介護事故ゼロを目指しています」という事業所がありますが、「介助ミス、連携ミスによる事故を減らす」ことはできても、生活上の転倒事故をゼロにはできません。
介護現場のことを知らないまま、「事故が増えているから、ゼロを目標にしているとアピールしよう」と思い付きで目標を立てるから、何もミスをしていないのに、たまたまその日に夜勤だった介護スタッフの責任かのような雰囲気になってしまうのです。
詳細は本論で述べますが、リスクマネジメントの実務は、入所・利用前の契約までの対策が八割を占めます。また、「通常の介護看護業務」+「リスクマネジメント対策業務」があるわけでありません。そのリスクマネジメントの全体像や関係性を理解していないから、「報告書や会議が増えるだけ」「忙しくてリスクマネジメントなんて無理」と介護現場が疲弊しているのです。

もう一つは、その主たる目的は介護労働環境の整備・改善だということ。
介護リスクマネジメントの目的は三つに分かれます。

恐らく、介護業界、特に介護看護スタッフの多くは、リスクマネジメントを①の入所者や利用者を守ることだと考えているでしょう。それは間違いではありません。逆に、介護以外の一般企業で行われているリスクマネジメントの主眼は、③の会社、事業を守る対策です。もちろん、それも重要です。

現在の介護のリスクマネジメントで、介護現場にも介護経営者にも決定的に欠けているのが、②の「介護看護スタッフ、職員を守る」「自分を守る・仲間を守る」という視点です。それは介護看護を含むすべてのスタッフが、業務上発生する事故やクレームを過度に恐れることなく、安全に、安心して働くことのできる労働環境、サービス環境を整えるということです。
それがわかっていないから、「介護事故報告書」「安全介護マニュアル」「リスクマネジメント委員会」などの対策が形骸化し、「あれもリスク、これもリスク……」と余計に介護現場を混乱させ、ストレスを増やしているのです。その結果、介護のプロが逃げ出し、残るのは事故やトラブルに鈍感なスタッフばかりとなり、更に事故やトラブルが増えるという負のスパイラルに陥っているのです。
介護看護スタッフが安全に安心して働ける環境でなければ、質の高い介護サービスは提供できません。同時に介護スタッフが安全に働けないような労働環境の企業・事業所に未来はありません。逆を言えば、現場にいる介護スタッフが安全に安心して働ける環境が整備できれば、後の二つの目的はおのずとついてくるのです。

これから高齢者介護の業界は、このリスクマネジメント対策によって二極化していきます。
介護リスクマネジメントとは何か、どのような視点が必要なのか、その実務的な知識・技術・ノウハウについて考えていきましょう。

是非、お読みください。




【コンテンツ】

序 章 介護の働きにくさの原因は「リスクマネジメントの遅れ」
1 介護人材不足が加速すると、社会・経済が破綻する 
2 介護人材不足や経営悪化は、介護報酬の低さが原因ではない 
3 介護報酬を上げても、介護のプロは戻ってこない 
4 大きく変わった介護の契約形態と権利意識 
5  リスクマネジメントの遅れが介護人材が逃げだす要因に 
6 リスクマネジメントの基本は、介護スタッフの労働環境の整備 

第1章 介護リスクマネジメントの全体像を理解する
1 介護の世界にリスクマネジメントが必要となる時代 
2 介護リスクマネジメントとは何か 
3 形だけの「リスクマネジメント」は無意味どころか逆効果 
4 どうして「些細な事故」でも隠蔽してはいけないのか 
5 「普段の介護業務」+「リスクマネジメントの業務」ではない 
6 全ての業務を「リスクマネジメントの視点」でつなぐ 
7 「災害弱者の集合住宅」なのに防火・防災対策が遅れている 
8 リスクマネジメントを推進しなければならない理由・学ぶ理由 

第2章 介護事故にかかる法的責任とその課題と矛盾
1 介護事故にかかる法的責任は三種類 
2 法的な「安全配慮義務」を意識して、日々の業務を行う 
3 介護裁判の判例を読む 
4 介護裁判の判例の問題点はどこにあるのか 
5 裁判への対応力を強化する 
6 緊急ショートは地域包括ケアでルール作りを 

第3章  リスクマネジメントのできない事業者のもとで働いてはいけない
1 介護リスクマネジメントが大きく遅れる高齢者住宅業界 
2 スタッフ個人が背負う法的責任は同じ 
3 キャパシティ(介護容量)の管理ができていない事業者の怖さ 
4 不正が横行する囲い込み高齢者住宅で働く怖さ 
5 介護保険の不正に慣れた介護スタッフの末路 
6 リスクマネジメントができていない事業者の特徴 

第4章 リスクマネジメントの実務とポイント
1 リスクマネジメントの対策は大きく分けて二つ 
2 契約前の相談・説明方法を見直す 
3 ケアマネジメントを見直す 
4 入所入居判定委員会を見直す 
5 発生予防対策は事故を正しく理解することからスタート 
6 介護事故対策はハードの見直しから 
7 安全介護マニュアルの目的は「介護の画一化」ではない 
8 事故・急変時の初期対応マニュアルの整備
9 介護事故報告書はなぜ上手く書けないのか 
10 介護事故報告書は「事故の検証」なしに作成できない 
11 介護事故の解決・収束までの手順を見直す 

おわりに ~介護人材不足の未来~

















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