高齢期には、介護だけでなく、医療のニーズも高くなります。
ただ、注意しなければならないことは、医療といっても、私達、若年層が受ける一般の医療と、高齢期に必要となる医療の考え方は別のものだということです。
『若者の医療』と『高齢期の医療』の違い
私たちが病院に行くというのはどういうときでしょう。
慢性的な疾患を持っていない限り、一般的な医療というのはインフルエンザや骨折、ガンなど個別の病気や怪我に対する一時的な治療を目的とするものです。
「しばらく前から下痢が続いている」「目の奥の痛みが取れない」「腕が赤くなり、痒みが広がっている」「転倒して腕を骨折した」という場合、その症状に合わせて内科、眼科、皮膚科、整形外科など、それぞれの病気の専門外来に行きます。病気が治ればそれで終了です。
「ここ数年、病院に行っていないなぁ」という人も少なくないはずです。

これに対して、高齢期の医療は、食習慣や喫煙、飲酒や高血圧・糖尿病などの『生活習慣病』や、加齢による関節疾患、認知症の発症率が高くなります。心疾患や脳血管障害など重大な病気が起きていなくても、血圧や血糖値のコントロールなど、継続的な観察・治療が必要となるものがほとんどです。その多くは慢性的な疾患であり、完全に治癒できるものではありません。
そのため、一時的な個別の病気の治療ではなく、身体や体調を管理してくれるかかりつけ医が必要となるのです。かかりつけ医は、老化や生活習慣による身体機能の低下と付き合っていく上で、不可欠な存在なのです。
高齢期の医療に『かかりつけ医が必要な理由』
かかりつけ医は普段の健康状態・生活習慣病などを正確に把握・理解してくれているため、体調の変化に気付きやすく、病気の予防や早期発見、早期診断、早期治療が可能となります。
「それぞれ、その専門の医師に診てもらった方が良い」という人がいますが、かかりつけ医が見て、専門的な治療や検査が必要な状態だと判断すれば、信頼できる病院・専門医を紹介してくれます。医師の間で、普段の病歴、病状、検査結果などもきちんと伝えてくれるので、そちらの方が安心です。

また、専門的な治療が必要となり専門病院に入院・退院したあとも、スムーズです。その専門医からかかりつけ医に連絡がありますから、毎回遠くの専門医・専門病院に通う必要はありません。
医学的な見地から認知症の早期発見もできますし、介護が必要になった時も、医学的なアドバイスをもらえたり、総合的な見地から『かかりつけ医意見書』を書いてもらえます。
かかりつけ医を見つけるポイントとして、五つあげます。
【高齢期 かかりつけ医の条件】
◆ 自分の持っている基礎疾患、例えば高血圧や糖尿病などに詳しいこと。
◆ 認知症など高齢者医療に詳しいこと
◆ 自宅の近くで通いやすいこと。
◆ なんでも相談できる、自分の話しやすい医師であること。
◆ ケアマネジャーなど地域の介護関係者と連携していること
高齢者の中には、糖尿病、高血圧、腰痛と、それぞれの専門医をはしごしている人がいますが、これは、逆に健康を害する行為です。全体の体調を管理してくれる医師がいないので、過剰な検査・クスリの飲みすぎ・副作用などにより、救急搬送や入院になる人の割合が高くなることが、研究でわかっています。

『親のかかりつけ医』がどこなのかは、きちんと確認しておきましょう。
そして、お医者さんに、家族の連絡先も伝えておくのがポイントです。「認知症の可能性があるので検査をしようと思うのですが…」とか「ちょっと血圧が高いので、塩分控えめに…」「そろそろ要介護認定を検討されては…」と家族に連絡してくれるところもあります。
かかり付け医は、高齢者だけでなく、家族にとっても強い味方なのです。
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