「高齢者は郊外の一軒家よりも、駅近の便利な場所にあるマンションの方が住みやすい」
昔から、そう言われていた。
「今の家は車がないと不便だが、いつまで運転できるかわからない」
「トクリュウによる強盗犯罪も増えているため夫婦のみの生活が不安」
などの世情を考えると、郊外の自宅を売ってセキュリティの高い都市部のマンションに住み替えたいという高齢者は多いだろう。そのニーズに対応する商品として考えられているのが高齢者向け分譲マンション(またはシニア向け分譲マンション)だ。
「有料老人ホームの曖昧な利用権と違って、所有権として法的に確立された権利」
「有料老人ホームの曖昧な利用権と違って、マンションが不動産資産として残る」
「通常の分譲マンションと違い、レストラン・介護サービス・医療機関併設、提携で安心・快適」
「通常のマンションと違い、共用部全面バリアフリー、居室内車いす対応」
「コンシェルジュなど専門の相談員を配置」
これらセールスポイントは、一定の金融資産を持つ高齢者夫婦には刺さるものとなっている。
事業者サイドも、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への規制(特に、囲い込みへの規制)が強まってきたことから、三匹目のどじょうを狙って、富裕層を取り込める制度規制外の「分譲型マンション」へと目移りしており、一部のマンションデベロッパーも検討を始めていると聞く。
上記のようなセールトークを聞けば、「高齢者向け分譲マンション」には、高いニーズ・事業性があるように見えるかもしれない。しかし、購入者は、数年後「こんなはずではなかった…」「高齢者向け分譲マンションを選ばなければよかった…」と後悔をすることになるだろうと危惧している。
わたしは、社会福祉士、ケアマネジャーなどの介護関連資格だけでなく、ファイナンシャルプランナーなどの資産管理の資格の他「宅地建物取引士」「マンション管理士」などの不動産に関わる国家資格を複数所持している。分譲マンションは、「区分所有法」という特殊な所有権の法律に基づく不動産商品だ。そのビジネスモデルから見た、「高齢者向け分譲マンション」のリスクについて、三回に渡って述べる。
「分譲マンション」の管理責任は誰にある ?
分譲マンションは購入しても、マンションの管理・維持のために『管理費』 『大規模修繕費』 が必要となることはご存じだろう。わたしも、京都碁盤の目の中にある分譲マンションに30年暮らしているが、管理費と大規模修繕費を合わせて、毎月三万円、棟内の駐車場代を含めると四万円強を負担している。このほかにも、年に一度、固定資産税も必要になってくる。
これは高齢者向け分譲マンションも同じ。
部屋の広さや間取り、戸数などにも関わってくるが、「高齢者向け分譲マンション」の場合、上記のよう全面バリアフリー仕様で共用部が大きく、「レストラン・介護サービス・医療機関併設」「専門の相談員配置」となると、管理費と大規模修繕費を合わせて七万円~八万円程度にはなるだろう。
一般の分譲マンションでも、「管理費や修繕積立金を払っているのだから、あとは管理会社が責任をもって、必要なマンション管理や修繕をしてくれるはずだ」「自宅より楽だ」と、のんきと考えている居住者(区分所有者)は多いのだが、それはまったくの大間違いだ。賃貸マンションとは違い、分譲マンションの維持・管理の責任は、居住者全員(区分所有者)によって構成される「管理組合」にある。これは区分所有法という法律に明確に規定されている。
管理会社は、あくまで管理組合がその業務の一部を委託しているにすぎない。つまり、デベロッパーは売れば終わり、管理会社もその管理・維持に責任は持たない(また、もてない)ということだ。
いま分譲マンションで多発している管理トラブル
一般の分譲マンションでも、新築後10年、20年経過すると様々なトラブルが目立つようになる。
例えば、未収金の管理。未収金が発生した場合、6ヶ月は、管理会社が電話連絡や書面での督促は行ってくれるが、それ以降の徴収責任は管理組合に移る。支払いのない場合、内容証明付きの督促状や少額訴訟などの法的な対応が必要となるし、その対応を怠れば、時効により債権が消滅してしまう。また、滞納していた区分所有者が亡くなり、相続人が不明で探し出すとなれば、相当の労力と費用がかかる。百万円の管理費・修繕積立金を徴収するために、百万円以上かかるというケースもあると聞く。
よく聞く、騒音などの近隣トラブルは、管理会社、管理組合の対応の範疇ではない。
「禁止されているペットを室内で飼っている」「暴力団事務所として使われている」といった明確な規約違反があれば、管理会社でも対応してくれるが、上下・横隣の騒音については、「騒音・深夜の音については、みなさん、もう少し配慮してください」という張り紙を作ってくれるくらいで、それぞれの居住者同士、話し合いで解決しなければならないというのが原則だ。それでも収まらない場合、個人で弁護士を雇って損害賠償を起こすか、我慢するしか、自分から出ていくしかない。
そしてもう一つ、いま分譲マンション管理の最大の課題と言われているのが、「管理会社は管理組合の味方ではない」「管理会社は適正な管理を行っていない」という現実だ。
マンションの管理組合は、全区分所有者が組合員となるが、実際の通常の運営は「理事会」にゆだねられている。私の住むマンションでも、二ヶ月に一度、理事会が行われ、年に一度、通常総会において、その報告や予算決議が行われる。ただ、多くの人はマンション管理に対して関心が薄く、「理事なんてやりたくない」と、積極的に立候補する人はいないため、持ち回りによる抽選が多い。
また理事になっても、ほとんどの人はマンション管理に精通しておらず、また積極的に関わる意志がないため、「管理会社のアドバイスに従って…」となる。総会で「このやりかたはおかしい」と意見を言う人がいても、出席者は少なく、事前の議決権行使書で「理事会一任・多数決で賛成」となるため、管理会社の思惑通り、議案は通過してしまう。
特に、大きな問題となっているのが修繕関係だ。
マンションの規模にもよるが、エレベーターや駐車場などの日々の修繕やメンテナンスだけでも年間数百万円、15年~20年に一度行われる大規模修繕では、数千万円から一億円以上の費用がかかる。競争入札など透明性をもった受注が求められるが、管理会社のほとんどは提携する設計会社、修繕工事会社を持っており、そのバックマージンを収益の柱としているところもある。
素人理事の管理組合を誘導して、自分たちの利益になるよう我田引水に設計・修繕行わせるという手法が蔓延し、あれこれ理由をつけて市価の1.3倍、1.5倍の費用で受注させられているのが現実だ。結果、修繕積立金が枯渇し、「管理費・修繕費を大幅に値上げをせざるを得ない」「修繕費用不足で、最低限の修繕さえできなくなっている」というマンションがたくさんあるのだ。
>>> 高齢者向け分譲マンションの危うさ Ⅱ ~高齢者向け分譲マンションで起きること~ へ続く




























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