「自分たちの老後、介護はどうなるのか」
それを考えるには、二つの視点が必要です。
一つは、自分が要介護になったときに、どのような社会・制度になっているのか。
もう一つは、老後資金、介護資金は足りているのかという、個人の視点です。
この二つの命題は、密接に関係しています。
この章では、いま70歳の人が85歳になった、2040年には、どのような社会になっているのかを考えることからスタートします。
かなり厳しい話になりますが、目や耳をふさがずにお付き合いいただければと思います。
要介護発生率・認知症発生率は加齢によって変化する
なぜ、70代から介護準備をしなければならないのか。
それは、要介護になるリスク・可能性は、加齢によって変化するからです。
年齢別に、高齢者の要介護・重度要介護の発生率を示したものが図1です。

高齢者は、WHO(世界保健機構)で65歳以上と定義されています。それは、世界標準で見ると、「働いて家族・社会を支える側」から「引退をして支えられる側」に移行する目安の年齢だからです。
ただ、その基準に当てはめると、日本では、65歳はまだ高齢者ではありません。
令和7年度の高齢社会白書によれば、65歳~69歳で働いている人は、全体の54.9%と半数を超え、70歳~74歳でも35.6%の人が仕事をしています。
10年前の平成26年と比較すると、それぞれ13.5ポイント、11.1ポイントと大きく増えており、全労働力に占める65歳以上の割合は、13.6%と過去最高を更新しています。
この65歳~74歳までの人を「前期高齢者」と言いますが、生活上何らかの支援や介護が必要になる人は4.25%。寝たきりになって、排せつ・食事など生活全般に常時介護が必要となる重度要介護高齢者は1.33%とわずかです。
現代の日本で、高齢者、お年寄りのイメージは、75歳の後期高齢者からです。
加齢によって、身体・認知機能が低下していくことは避けられません。判断力の低下による交通事故、筋力や骨密度、嚥下能力の低下による転倒骨折、誤嚥窒息などの生活上の事故も増えていきます。
ただ、同じ後期高齢者でも、75~84歳までの「前後期高齢者」(私の造語です)の要介護発生率は2割程度、重度要介護は5.6%と寝たきりや重い認知症になる人は20人に一人です。
これが85歳以上の「後後期高齢者」(同造語)になると、要介護発生率は全体の6割、特に重度要介護発生率も23.5%(四人の一人)と一気に上がります。
なぜ、前後期高齢者と後後期高齢者で、これほど要介護発生率・特に重度発生率に大きな違いがでるのか。それは、要介護になる原因が違うからです。
「前後期高齢者」が要介護になるのは、大腿骨骨折や心筋梗塞・脳梗塞などの病気が原因です。
前期高齢者とは違い、75歳を超えるとリハビリの効果が低く、安静が続くと、筋力の低下や関節の拘縮などの廃用性症候群によって要介護になる確率が上がります。
これが「後後期高齢者」になると、骨折や脳梗塞で入院しなくても、加齢による身体機能・認知機能の低下によって要介護・重度要介護になるため、その発生率が一気に高くなるのです。
これは認知症も同じです。認知症は、アルツハイマー病、脳血管障害などの疾患によって発生する症状の総称ですが、加齢によってその発症率は上がります。75歳から79歳では10人に一人ですが、80歳から84歳では4人に一人、85歳以上では2人に一人が認知症です。
もちろん、これらは平均値であり、いつ、何が原因で、どのような要介護状態になるのかは一人ひとり違います。年齢だけではなく、心臓病、糖尿病、高血圧、関節疾患などの基礎疾患、喫煙や飲酒などの生活習慣も、要介護発生率と深い関係があることが知られています。
ただ、この問題が重要なのは、「いくつの時まで元気でいられるか」「何歳の時に要介護になるのか」は、老後の生活設計、特に老後の資金計画が大きく変わってくるからです。同時に「介護準備」の方法や考え方も、75歳までと75歳~84歳、85歳以降では変化します。
そのため、まずは75歳になるまでは、その勤務形態に関わらず何らかの仕事を続けることです。そして、75歳から84歳までは転倒・骨折したり、大きな病気をしたりしないよう運動や体調管理に気を付けて、85歳以降の要介護に余裕をもって備えるのです。
これが年齢と介護準備の基本的な考え方、一つの目安、目標です。

























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