二つ目は、検査でMCI(軽度認知障害)や初期の認知症だとわかったケースです。
繰り返し述べているように、認知症になることは避けられませんが、MCI(軽度認知障害)・初期認知症の段階で早期に発見、治療できれば、それまでと変わらない生活を続けることは十分に可能です。
その対応の流れは、前回のコラム 『介護生活環境の整備 Ⅰ ~緩やかな身体機能の低下~』と、同じですが、初期認知症の介護生活環境整備のポイント、注意点をいくつか挙げておきます。
初期認知症の介護生活環境整備のポイント
「認知症ではないか」「生活上、支障がでている」と感じる場合は、「地域包括支援センター」に相談します。認知症の確定診断ができていない場合は、一日も早く精神科、精神内科、老年化などの専門的な病院で、「アルツハイマー病」「脳血管診断」などの確定診断を受けましょう。認知症と言っても、その原因となる疾病によって治療方法、対応方法は変わるからです。
かかりつけ医から、専門医を紹介してもらうこともできますし、かかりつけ医がおらず専門医がわからない場合、地域包括支援センターで信頼できる病院・診療所を紹介してくれます。その上で地域包括支援センターの相談員にアドバイスを受けながら、介護生活環境を整えていきます。
【環境整備のポイント】
① 要介護認定と認知症の確定診断を受ける (要支援~要介護一程度の認定になる)
② 時間・曜日など週間スケジュールを基礎とした見守り・安否確認
③ 失火・詐欺等を予防するための安全対策の見直し
④ 認知症の悪化を防ぐための服薬管理の徹底
⑤ 異変やトラブル発生時の対応策の検討
この段階で、生活場所や生活環境を大きく変えてはいけません。
「一人暮らしは不安だから」と高齢者住宅に入ったり、子供家族と同居すると、混乱して認知症が一気に進みます。身体機能が低下していない場合、大規模な住宅改修や模様替えなども控えた方がよいでしょう。
最近、「精神科医と提携で安心・快適」「二四時間スタッフ常駐で認知症でも安心・快適」などというサ高住や住宅型有料老人ホームがありますが、住宅型やサ高住では認知症ケアはできません。その素人事業者の美辞麗句に乗せられて入居すると、適切なサービスを受けられないだけでなく、混乱して周辺症状が現れ、「危険だから」とあっという間に強い薬で寝たきりにさせられます。
初期認知症の場合の生活環境整備のポイントを、詳しく見ていきましょう。
① 生活スケジュールをもとにした見守り
一つは、生活スケジュールをもとにした見守りの強化です。
排泄や入浴などの身体的な介助がまだ必要ない場合、生活リズムの安定や見守りが中心になります。「火曜日は外出・運動を兼ねたデイサービスの日」「第二週目の木曜日の午前中は診察(訪問介護)」「月曜日・水曜日は配食サービスが来る」など、曜日や時間を意識して、人に会うという見守り・安否確認方法が有効です。合わせてセンサーやカメラなどの見守り機器、スマートホンのアプリ、駆け付けサービスなどを併用すると、その効果や安心度が高まります。
② 火災・災害・犯罪への対策強化
二つ目は、失火や詐欺からの予防対策です。
認知症になると、初期であっても物忘れが多くなります。
判断力も低下するため、ガスコンロの消し忘れによる失火や、特殊詐欺の被害のリスクが高まります。そのため、ガスコンロや温熱機器は安全装置が装備されている新しいものに買い替える、未登録や非通知の電話は着信を拒否をする「詐欺防止機能付き電話」を購入する、海外からの電話を止めるなどの対策が必要となります。
③ 服薬管理の徹底
三つめは、服薬管理です。
認知症の進行を止める薬が開発されていますが、せっかく早期発見、早期治療ができても、適切な服薬管理ができなければ認知症進行の大きな原因となります。認知症になると、「お薬飲んだかな…」「飲んだはず…」と言う物忘れが多くなるため、飲み忘れや過剰摂取で認知症が進行するという悪循環となるのです。介護保険で訪問看護や訪問薬剤師を付けることもできますし、服薬カレンダーのほか、「自動薬箱」という設定した時間になると、光や音で服薬を促す機器も発売されています。複数の方法を組み合わせて、服薬管理を徹底しましょう。
その後は、身体機能低下の時と同じです。
地域包括支援センターの相談員、ケアマネジャーに支援を受けながら、要介護状態の変化に合わせて、できるだけ長く、住みなれた自宅で生活できるように生活環境を見直していきます。
介護休業期間中は、モニタリングをする
働いている子供がいる場合、この介護生活環境整備のために介護休業の取得を依頼します。
述べたように、要介護認定が出ていなくても、取得することは可能です。
「緩やかに身体機能が低下」よりも少し長めの一ヶ月半程度とします。

この「MCI(軽度認知障害)・初期認知症」における、介護生活環境整備における、介護休業期間中の最も重要な目的は、「モニタリング」です。身体機能の低下と違い、「なにも困っていない…」と思う人が多いのですが、子供家族が一定期間、一緒に生活をすると、「期限切れの食材が多いな…」「ストーブは心配だな…」など、生活上の課題が見つかります。
「温熱機器は安全機能の高い輻射熱のものに替えた方がいいな…」
「見守り機能の高いカメラ付きの多機能電話を導入しようか…」
と相談しながら、リスクの種を消していきます。
ただ、それだけでは、「新しいガスコンロが使えない」「迷惑防止付き電話の掛け方がわからない」と混乱する可能性もあります。だから、一緒に使いながら、新しい介護生活環境に慣れていくという時間が必要なのです。
ここで大切なのが、家族には「できるだけ手を出さずに見守ってもらう」ということです。
介護休業取得時によくある失敗が、買い物や食事の準備、お風呂の掃除など子供がなんでもやってしまうということです。「ありがたい、うれしい」と思うかもしれませんが、介護休業が終わって子供がいなくなると、途端に生活が行き詰まるり、介護休業を取得した意味がなくなります。自分だけの生活に戻った時に、問題なく生活できるのかを確認し、必要な修正してもらうのが、その目的です。
合わせて、緊急時の対応方法も検討しておきます。特に、子供が遠くに暮らしている場合、安否が確認できないなどのトラブルが起きても、すぐに駆け付けることができません。
「近くのおじさん、いとこにSOSを求める(その依頼をしておく)」
「異変時には、同じ町内に暮らす親しい知人に知らせてもらうよう依頼する」
「マンションに暮らしている場合、管理会社・管理組合に家族の連絡先を伝えておく」
異変やトラブルが発生したときの緊急対応の方法を、話し合って決めておきましょう。
そして、認知症が進んだり、身体機能の低下で「そろそろ、自宅で生活することは難しい」と判断したときに、残りの一ヶ月半程度の二回目の介護休業を取得して、特養ホームへの申し込みや介護機能の整った高齢者住宅への入所を検討します。
認知症高齢者専門の高齢者住宅として、グループホームが整備されていますし、特養ホームは「認知症高齢者優先」という方針が示され、認知症ケアに力を入れているところも増えています。
「認知症になったらどうしよう」と恐れる人は多いのですが、初期の認知症であれば、きちんと介護環境整備をすれば、住みなれた自宅でそのまま生活することは十分に可能です。
認知症の専門医とケアマネジャーは連携してくれますから、バタバタする必要も、悲観する必要も、まったくありません。


























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