民間の高齢者住宅では、介護付・住宅型有料老人ホーム、サ高住に関わらず、そのほとんどで「介護が必要になっても安心・快適」「要介護対応・認知症対応」を標ぼうしています。
しかし、「重度要介護・認知症になっても生活できるか否か」は、スタッフが頑張る頑張らないという話ではなく、商品性の問題です。
学校・教育機関といっても、小学校と大学の建物設備・カリキュラムは全く違うでしょう。それと同じで、「小学校で、そのままの机、カリキュラムで大学まで勉強できます」とはならないのです。
同様に、「高齢者住宅」と言っても、自立度の高い要支援~軽度高齢者に適した高齢者住宅(軽度向け住宅)と中度~重度要介護高齢者に適した高齢者住宅(重度向け住宅)は、介護サービスや建物設備などの商品性が根本的に違うものです。
その違いは三つあります。
① 建物設備設計の違い
② 生活支援サービスの契約形態の違い
③ 介護システム(介護類型)の違い
このうち、①と②については、前回、「自立要支援向け住宅」と「要介護向け住宅」の違いⅠ🔗で述べたので、今回は、③の介護システムについてお話ししたいと思います。
住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅では、重度要介護・認知症対応不可
高齢者介護は、オムツ交換などの排泄介助や食事介助、入浴介助などをイメージしますが、重度要介護、認知症高齢者が安全に生活するために必要な介助項目はそれ以外にもたくさんあります。

決められた時間にオムツ交換を行っても、「お腹の調子が悪い」など体調変化で頻回に排泄介助が必要となること(臨時のケア)がありますし、「喉が渇いた」「背中が痒い」「部屋に戻りたい」「テレビを点けて…」など、生活全般に短時間のケア(隙間のケア)の連続となります。
また、認知症高齢者の場合、「状態把握」「見守り・声掛け」「安否確認・定期巡回」などの二四時間の間接介助が必須です。また、軽度・重度に関わらず、「頭が痛い」「悪寒がする」という場合の緊急対応や、転倒時のコール対応なども不可欠な介助項目です。
しかし、介護保険の算定の対象は、介護付と住宅型・サ高住とで変わります。
図表の通り、介護付有料老人ホームに適用される特定施設入居者生活介護はすべての介護・介助が対象になります。しかし、住宅型有料老人ホームやサ高住などに適用される区分支給限度額方式の訪問介護で対象となるのは、直接介助の定期介助だけです。

それは、介護報酬の算定方法や考え方が基本的に違うからです。
特定施設入居者生活介護は「一日△△単位」と入所日数で計算される日額包括算定方式です。
「Aさんの隣に座りスプーンで口に食事を運びながら、Bさんが誤嚥しないかを見守り、Cさんに「ゆっくり食べてくださいね」と声を掛け、Dさんが噎せたのでそのケアを行い、食事が終わったEさんの片付け、Fさんの服薬介助、Gさんを居室へ移動…といったように、一人の介護スタッフが多数の高齢者に連続的に対応しています。「Hさんは、今日は熱があるので、食堂ではなく部屋で食べてもらおう…」という臨機応変なサービス変更も可能です。
これに対して、区分支給限度額方式は、Aさん個人の限度額(チケット)を使って、Aさんが個別に訪問介護サービス事業者と時間単位で契約(事前予約)し、「12時~12時半までの食事介助」「13時半~14時はBさんの排泄介助」が提供されるマンツーマン方式です。
「15分でAさんの食事介助が終わったから、あとの15分はCさんの移動介助を」
「Aさんの食事介助をしながら、Dさんの見守り、Eさんの服薬介助をする」
など、他人への介助はできません。病院で他人の健康保険証を使ってはいけないのと同じで、「Aさん本人が納得すればよい」というものでもありません。「Aさんは、今日は熱があり食欲がないので、あとから部屋で食べてもらおう」という場合、必要な訪問介護員を確保するだけでなく、ケアマネジャーに連絡して、訪問時間を変更してもらう必要があります。
それは当然です。訪問介護は、自宅で暮らす高齢者に提供される介護サービスだからです。
自宅では、「臨時のケア」や「隙間のケア」「間接介助」は訪問介護では受けられません。
それと同じで、区分支給限度額方式の高齢者住宅では、重度要介護高齢者や認知症高齢者に必要な介護は受けられないのです。
区分支給限度額方式の高齢者住宅で、介護保険制度適用外となる「隙間のケア」「臨時のケア」「間接介助」「緊急対応」を行うには、それに応ずる介護スタッフを全額自己負担で確保しなければならないため、40万円~50万円の非常に高額な価格設定となります。
「手が空いたスタッフが、手が空いたときに対応する」というのは、介護スタッフの手が空かなければ、便がでて気持ち悪い中でも何時間も待っていなければならない、転倒しても、手が空いていなければ誰も助けてくれないという、非常にあやふやなものなのです。
「住宅型有料老人ホーム・サ高住」では、重度化対応、認知症対応不可
ここまで、要介護向け住宅の条件として、「建物設備設計」「契約形態」「介護システム」の三つポイントを上げました。「自立要支援向け住宅」と「要介護向け住宅」は、商品・サービスが基本的に違うと言う意味がお分かりいただけるでしょう。述べたように、民間の高齢者住宅は、特養ホームとは違いサービスは自由設計であるため、それぞれに建物設備・サービス内容・価格設定は違います。ただ、介護付、住宅型、サ高住などの制度基準によって、それぞれに特徴があります。

介護付有料老人ホームは、その多くが要介護高齢者の生活に適した「居室・食堂同一フロア型」です。また食事、相談援助、サービス管理などの生活支援サービスも提供されており、介護看護、ケアマネジメント、安否確認、相談援助なども特定施設入居者生活介護の指定をうけて、すべて一体的に提供されています。
これに対し、住宅型有料老人ホームは、その多くが一階に食堂、二階以上が居室階という「居室・食堂フロア分離型」が中心です。また、食事、相談援助、サービス管理などは一体的に提供されていますが、区分支給限度額方式であるため、介護看護、ケアマネジメント、安否確認については、別契約となっています。
一方のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、設計上の規制からほぼすべてが「居室・食堂フロア分離型」ですし、食事、相談援助、介護看護、ケアマネジメントなどほぼすべての生活支援サービスは、 サ高住ではなく、それぞれの事業者との別契約です。
ほとんどの高齢者住宅でも、「重度要介護・認知症高齢者受け入れ可」とセールスしていますが、このようにその商品・サービス内容を見れば、住宅型有料老人ホームやサ高住のほとんどは、「要介護向け住宅」には適さないのです。
「早めの住み替え」「住みなれた環境で要介護になった方が安心」といった自立~重度要介護、認知症まで対応できるセールスをしている高齢者住宅は、悪徳事業者もしくは素人事業者です。
高齢者住宅や高齢者施設は、「重度要介護」になって、自宅で生活できなくなってから、介護機能能の整った介護付有料老人ホーム、特養ホームに入居・入所するというのが原則なのです。



























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