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「自立要支援向け住宅」と「要介護向け住宅」の違い Ⅰ


 多くの人が「高齢者施設、高齢者住宅」への入居を希望するのは、「介護の不安」です。
 そのため、民間の高齢者住宅では、介護付・住宅型有料老人ホーム、サ高住に関わらず、「介護が必要になっても安心・快適」「要介護対応・認知症対応」とセールスしています。
 しかし、プロの目から見て、実際に重度要介護や認知症なったときに、介護生活環境が整っている「要介護高齢者に適した高齢者住宅」と言えるのは、その半分もありません。
 それは、「高齢者住宅」と言っても、自立度の高い要支援~軽度高齢者に適した高齢者住宅(軽度向け住宅)と中度~重度要介護高齢者に適した高齢者住宅(重度向け住宅)は、介護サービスや建物設備などの商品性が根本的に違うからです。
 そのため、述べたように、高齢者施設や高齢者住宅に入居するのは、「重度要介護高齢者になって、自宅で生活できなくなってから…」と言うのが原則です。
 ここでは、二回に分けて「要介護向け住宅」の見分け方についてお話しします。

要介護向け住宅は、建物設備設計が基本的に違う

 一つは、建物設備設計の違いです。
 高齢者住宅は、生活動線・介護動線はとても重要です。車いす利用や不安定な杖歩行の高齢者が多いため、長く、複雑になると転倒やぶつかり事故の原因になるからです。
 「要介護向け住宅」の建物設備設計は、下の図のように各住戸フロアと食堂フロアが同一フロアに位置しているのが原則です。


 重度要介護になると、排泄、入浴だけでなく、食堂までの移動・配膳・食事・片付けなどすべてに介助が必要となります。居室と食堂のフロアが分離している場合、認知症高齢者、車いす高齢者は階段移動ができないため、エレベーター移動が必要となりますが、一度に二人~四人しか乗れないために、上下階の移動介助だけに多くの時間がかかります。
 実際、居室フロアと食堂フロアが分離した建物では、車いす利用者は毎朝三時半に起こされ、一階の食堂に下ろされて朝食まで放置。朝食後も部屋に戻るとすぐに昼食に降りなければならないため、介護の手間を省くため、部屋に戻されず、昼間でそのまま放置と言う劣悪な介護が横行しています。
 見学に行くと、車いす高齢者が食堂でぐったりしているのは、そのためです。食堂と居室フロアが分離していると「要介護高齢者が生活できない」というよりも、「介護できない」のです。放置されたまま排泄、食堂とに排泄物の匂いが蔓延しているというところもあります。

 一方、食堂と居室が同一フロアにあれば、車いす利用者でも自分で操作できる場合、一人で好きな時間に食堂まで移動することもできますし、移乗や移動に介助が必要であっても、手間や時間はさほどかかりません。移動距離が同一フロアのため、部屋に戻って排泄介助することも簡単です。
 つまり、建物を見れば「要介護向け住宅じゃないな…」と言うことが一目でわかるということです。

生活支援サービスは、「サービス一体型」の包括契約が原則

 二つ目は、生活支援サービスの契約形態の違いです。
 高齢者住宅は、単なるバリアフリー住宅ではなく、介護看護・食事・生活相談・安否確認などの様々な生活支援サービスが合わさった複合型の商品です。この契約形態は、すべてのサービスが高齢者住宅から直接、もしくはその責任で提供される「サービス一体型」と、別事業者と入居者との個別契約となる「サービス分離型」に分かれています。

 「高齢者住宅は、施設ではないから、生活支援サービスの契約分離が原則だ」
 「生活支援サービスは、個別契約の高齢者住宅を選ぶのが望ましい」

 テレビの情報番組で、そう言っていた識者がいますが、それは自分でサービスの選択・調整・変更が自分でできる自立・要支援高齢者に限ります。重度要介護、認知症高齢者は、「体調不良でデイサービスを休むので昼食の準備をしてほしい」「お腹の調子が悪いので、オムツ交換してほしい」など、日々のサービスの選択・調整・変更ができません。


 それは、サービスの選択はすべて事業者の言いなりにならざるを得ないということです。
 結果、「あれも必要、これも必要」と事業者の利益優先の不要なサービスを購入せざるを得ず、事故やトラブル時のサービス提供責任が曖昧になるだけで何のメリットもありません。高齢者住宅への支払は「月額費用18万円」であっても、関連サービス事業者から、生活相談、介護、医療その他自費などを含めて適切なサービスを受けるには「月額生活費30万円」となります。
 そのため、「要介護向け住宅」は、事故やトラブル対応などのサービス提供責任が明確で、日々の体調変化に合わせて臨機応変にサービスの調整・変更が行われる「サービス一体型」の高齢者住宅が適しています。最初から、必要なサービスがオールインワンで提供されている高齢者住宅を選べば良いだけの話です。



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